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第16話(最終話)

 × × ×



「廻、大丈夫?」



 私は、アンステークさんと入れ替わった。あの悪魔さんは、きっと私がいた脳裏に収まったのだと思う。というか、他にどこにもいけないし。願いを叶えてくれたのだから、ここにいる理由もないし。



 いっつも、やることなすこと他人事だったし。まぁ、それがカッコいいから皐月ちゃんを落とせたんだろうけど。



 私が目覚めて先ずやったことは、異常に短い前髪をギュッと押さえつけて、誰にも見えないように顔を隠すことだった。しかし、どうやらこれは一定の長さになると短くなってしまうようで、私は一生、この髪型と付き合っていかなければいけない事が直感で分かった。



 手や足に比べれば楽だと思うけど、それでもやっぱり私は自分の顔を誰かに見られる事が恥ずかしい。恥ずかしくて、その視線が腫れ物を扱うような生暖かいモノなんじゃないかって。どうしても考えてしまう。



 きっと、アンステークさんは流転した体にとって、命の次に大切なモノを対価として貰っているんだと思う。命よりも大切ならば、それを抱えたまま三途を渡れという意思表示なんだと思う。



 よく言うでしょ?死ぬほど大切とか、死んでも守りたいとか。それを、寄越せと言ってるの。



 だから、実際には体じゃなくてもお金だったり知識だったりした事もあったんだと思う。そうして手に入れたのが、あの女慣れした性格や、無敵の強さだったんだと思う。



 残っている記憶も、きっとそのせい。体の一部より大切な歴史を、アンステークさんは命の対価として受け取った。だから、誰よりも香苗さんを愛してしまった。いつまで経っても、忘れることができなかった。



 まぁ、全部私の考察だけど。それが、私があの悪魔を見てきて思った事だ。学べることが、あまりにも多くて本当にびっくりしたよ。



 ……それにしても、明るくて目が眩みそう。吐き気がする。声を掛けてくれているけど、皐月ちゃんは私のことを気持ち悪いと思っていないだろうか。彼女に嫌われたらと思うだけで、激しく足が震えてしまう。



 当たり前だ。私はきっと、まさしく新しい自分に転生したのだから。



 すぐに自分の新しい境遇を受け入れて、幸せに生きる為に前向きになれるワケがない。自殺してしまうほど傷付いていた私が、『やったぁ! ハッピー!』と開き直れるワケがない。いつまでも10歳のままの私が、彼女たちと対等になれるワケがないのだ。



 ……でも、全部分かっていたことだ。私が願って、私が生きたがった世界だ。感謝はすれど、アンステークさんを恨むだなんてあり得ない。



「大丈夫です、皐月ちゃん」


「あが……」



 幸い、言葉遣いと立ち振る舞いは教えてもらっている。そして、それこそが私のなりたい私だった事も自覚している。ならば、これはフェイクてはなく、アンステークさんになろうとする私の立派な努力なのだ。



「ど、どうした、んですか?」



 おっかなびっくり、声をかけると、皐月ちゃんはニヤニヤしながら顔を赤らめて笑った。やっぱり、ずっとあの頃のままだ。私が好きになった、愛おしい笑顔。



 毎日一緒にいて、笑ってくれると嬉しくて、辛いときに励ましてくれた皐月ちゃんの笑顔。いつまでも見ていたい。



 ズルをしたのは分かってる。でも、それでいい。誰になんと言われおうと、私はここから始める。そう、心に誓っているのだ。



「廻が、名前で呼んでくれたから」



 なんだろ、こういう最初から好感度マックスのお話、読んだことあるけど。



 なんか、うん。まぁ、嬉しいてす。はい。



「み、操ちゃん、実理ちゃん。帰りましょう。電車、なくなっちゃいますから」



 心臓が口から飛び出そうな緊張を必死で抑えて、皐月ちゃんを支えて、私は私になった悪魔の真似をした。二人は優しく微笑むと、溶けてしまった花菱さんの鞄を持ってくれた。



 友達が、暖かく笑ってくれた。それだけで、私は頑張れる気がしていた。



 ……帰り道。私は、倒れている猫を見つけた。きっと、車に轢かれてしまったのだろう。グッタリとして、血溜まりが出来ていて。もう、瞼を動かすことすら出来ないみたいだったけど。



 それでも、猫はまだ生きているみたいだった。

捻り過ぎ、解決までの迂遠を解消しすぎた。とういうか、もう少し続けた方が良かったと思ふ。言葉遊びはグッドなんじゃないだろうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れ様です。最後の種明かしは一気だったですね。 思ったよりもファンタジー的な方向のなぞ解きでした。みんな、悪魔の裏で意識が有ったから、記憶の断絶が起きていなかったのかな。 実は百合は…
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