表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラビリアン~異次元転移~  作者: ペンギン
13/13

始動>>1

学校から出るとタクシーに乗った。車内では安達さんによる質問攻めと、それに対する彼女の「またあとで。」の応酬で、オレが会話に参加する余地などどこにも無かった。


10分ほど行ったところで車が止まった。そこは高い塀に囲まれた見るからに豪邸と呼べる家だった。


「一応私の家です。入ってください。」


案内されるままお邪魔することになった。安達さんは言葉を失ったままキョロキョロしている。


しかし家が大きいからなのか、なんというか不気味な静けさだ。


「4人暮らしには広すぎる家なんですけどね。」


「何部屋くらいあるの?」


「一応部屋としては個室が6部屋とリビングダイニングだけですよ。」


この家に着いてから何かとあやふやに答えているだけに聞こえる。


「少しこちらの部屋でお待ちください。」


案内されたその部屋は豪邸に見合うだけの広さはあるものの、ソファが4つとテーブルがあるだけで他には棚1つすらなかった。そうだ、家の玄関からここまで普通の家なら家具や装飾があるようなところでも何も無かった。


「ねぇねぇおじさん、この家ってほんとに人住んでるのかな?」


安達さんもこの違和感に気付いたようだ。


「キレイだし手入れはされてるとは思うんだけどなぁ。」


2人で色々話していると彼女が戻ってきた。


「お待たせしました。」


一緒に初老の男性と若い男性2人がいる。彼らが彼女の家族なのだろうか。初老の男性が話し始めた。


「君がラビリアンだね。」


「はい。」


「名前は?」


「覚えてないんです。」


さきほど突きつけられたとはいえ名前を答えられないのはやはり堪える。


「取り戻したいかい?」


「それはもちろん!でも方法あるんですか?」


「あるとも。」


「ちょっと待って!おじさん、名前無かったの?」


安達さんが驚いている。それはそうだ、今までの数ヶ月疑問にすら思ってこなかったことなのだから。


「彼は選ばれたラビリアンですからね。」


隣にいた若い男性が口を挟んだ。だが選ばれたとはどういうことなのだろう。


「これこれ、話を飛ばし過ぎだ。御二人とも少し私の話を聞いてくれるかな?」


「ぜひ!聞きたいです!」


「私も!」


「ではまずは今日あったことを思い出して欲しい。」


今日あったこと。それはもちろん『教授』のことだろう。


「彼らがなぜあんなことをしたのか、なぜあんなことを出来たのか。」


そうだ。目的はともかく手段が分からない。


「ちょっと待ってよ!『教授』って何よ?」


「記憶にないかい?それなら君はこの世界の住人で間違いないのだろう。」


安達さんが首を傾げる。オレは何も言わずにそのやり取りを聞くことにした。


「ではまずお嬢さん、神とはなんだと思う?」


「えーっと、なんだろ。」


「難しいだろ?無宗教の人間でこの質問に即答できる人間などまずいない。それは当たり前の反応だ。」


「なんか試された気分。」


「はっはっはっ。ごめんよ。神とは簡単に言うと信仰の対象だね。では何を持って神と認められるのか。分かるかい?」


初老の男性は再び安達さんに尋ねた。安達さんは難しい顔をして悩んでいたがなかなか答えが出なかった。


「神はね、人を惹き付けるものなんだよ。もちろん他にも神と定義されるものはある。そして惹き付けると一言で言っても惹きつけ方は地域や宗教によって千差万別だ。ただ人智を超えた何かによって人を惹き付けるということは多分共通しているだろう。」


安達さんは頷きながら真剣に聞いていた。オレも聞き逃さないように集中した。


「では次だ。1つづつ説明するから分からなくなったら聞いてくれていい。」


オレたちはゆっくり頷く。


「進めよう。これはお嬢さんのほうなら答えられると思うが『原初の宇宙』を作った神の名前は分かるかい?」


これはオレには分からない。何せ『全知創世の書』が分からないのだから。


「名前?そんなのあったかな?無かったはずだけど。」


「そう、創造神に名前など無いんだ。様々な宗教や神話においては神は名前を有する。ではその神々の名前を決めたのは誰か。人間だ。例えばギリシャ神話のアポローン、エジプト神話のラー、北欧神話のソール、日本神話の天照大御神。他にも挙げればたくさんいるがみな太陽の神だ。太陽はひとつしかない。しかし太陽神は世界各地に存在する。それはなぜか。その土地土地の人間が名前を付けたからだ。もっとも神というのも人間の付けた名前なのだが。」


「ごめんなさい、先生は昔は神学のエキスパートだったから。先生、また脱線しちゃいますよ。」


隣から先程と違う男性が口を挟んだ。


「これはすまない。まぁラビリアンである君に名前が無いのはつまり君が神に近付いたということなのだ。」


「神に?オレが?」


「ただ、神になれる訳では無い。ただ君は名前とともにもうひとつ失ったものがある。」


クイズか何かをしている気持ちになる。『教授』といい、この人といい、頭のいい人はこういう話し方しか出来ないのだろうか。


「現存する人類すべてが持つとされるとあるミトコンドリアDNAが失われている。ある科学者はそれを人間からの逸脱、神への1歩だと言っていた。まぁすぐに淘汰されたのだが。」


「今まで我々はあなたを含め5人の名前を持たないラビリアンと接触してきました。そしてあなた以外の4人ともがそのDNAを持っていなかった。試しに一万人を超える人間のDNAを調べたが反対に持っていない人がいなかった。」


「かなり話が逸れてきたな。名前もそのDNA塩基も持たない人間、それこそが彼らの狙いなのだよ。」


「オレみたいな人間がですか?」


「そう。先程先走って言ってしまった、選ばれたラビリアンである君が彼らの計画には必要不可欠なのだ。」


そう言うと初老の男性は若い男性らに合図をし、彼らは合図を受け取るとすぐに部屋から出ていった。


「場所を変えよう。お嬢さんも。」


「私が案内します。お二人ともこちらへどうぞ。」


初老の男性が先に部屋を出たあと、案内されるままにオレたちは別の小さな部屋に通された。そして扉が閉まると同時に何かが動いたような気がした。


「色々と仕掛けがしてあるんです。ここから先は秘密基地みたいなものと考えてもらえれば。」


秘密基地と聞いて安達さんの表情が緩んだ。ずっと困惑した顔だったがここで少し切り替えられたみたいだった。


数秒して再び同じ扉を開けるとさっき通った廊下は無く別の部屋に通じていた。


「なんで?」


安達さんが驚いているのも見慣れてきた。


「またあとで。」


そう言って彼女は無邪気に笑って誤魔化す。


「さぁ見せたいものもあるし、入ってください。」


通されたその部屋は窓など無く、部屋の中央には台座に置かれた小さな石のようなものが置いてあった。ダイヤモンドとかそういった何か宝石の原石だろうかとも思ったがなぜか少し懐かしい気持ちを感じる。


「不思議な石でしょ?」


「これはなんなんですか?」


「26年後に価値の出る石じゃ。」


「25年後?なんで?」


オレが聞く前に安達さんが先に質問した。


「2031年、世界で同時多発的に地震が起こる。そしてその地震であらゆる場所に大きな穴があき、そこから地底深くの空洞が発見される。その空洞から発見されるものがこの石の本体なのだ。」


2031年といえばラビリアンの話の中にも出てきた年だ。


「さぁ、話を詰めていこうか。」


そう言って初老の男性は近くの椅子に腰を掛けた。


「分からない時は聞いてくれて構わない。」


男性の表情が引き締まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ