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ラビリアン~異次元転移~  作者: ペンギン
10/13

部会

夕方、ジャズ研とアニ研の合同部会が開かれることになった。11月終わりの学祭まであと1ヶ月しかないとはなかなかなスピード感だ。


「えーっと、今日の部会だけどとある事情でアニ研の人にも来てもらいました。」


安達さんが壇上から話し始めた。


「ジャズ研毎年恒例のカフェと演奏会だけど今年は人手が足りないのです。そこで急遽アニ研の人に手伝ってもらおうと声をかけさせてもらいました。」


「アニ研の部長の山口です。うちの部は学祭で特に何かをする訳でも無いのでまずは話だけでも聞いてみようとなり参加させてもらいました。」


とても紳士的で感じのいい人だ。


「じゃあうちの副部長から学祭で何をするのかと頼みたいことをアニ研さんに説明してもらいます。」


「ジャズ研副部長の広瀬です。アニ研のみなさん今回は話を聞いていただきありがとうございます。それでは簡単に説明させていただきます。」


うちの副部長の広瀬さんはとても真面目な人だ。楽器も上手い。人当たりもいい。安達さんが留年して2年連続で部長なんてイレギュラーが無ければ部長をしていたはずだ。


「うちでは毎年カフェをしながら部員が交代で演奏するんですけど、今年は部員の数が足りず、演奏している部員、演奏前、演奏後の部員、PAなどのスタッフで手一杯になります。つまりカフェを避ける人員が足りないため、アニ研さんにはカフェの部分を手伝って欲しいということになります。」


「アニ研の結城です。一応2回生なんで偉そうなことは言えないですけど、うちが手伝うことは基本的には賛成、というか異論は無いです。ただ、こちらからも頼みたいことがあるんですけどいいですか?」


結城とは何度か話したことがある。かしこまった言い方をしているが、どちらかと言えば安達さんタイプだ。


「頼みたいこととは?」


広瀬さんが答える。


「学祭とは関係なくアニ研でなんかアニメ作りたいなぁって言ってて、音楽含めて手伝って貰えたりしません?」


結城がニヤリとしたのをオレは見逃さなかった。そしてニヤリとしたのはもう1人。


「それ、面白そう!やりたい!」


もちろん安達さんだ。ここでは部長という立場であることを忘れているのだろうか、部会においての彼女の発言はいつも以上に絶対なのだ。


「うん、別に悪くないと思う。」


広瀬さんも続いた。安達さんと広瀬さんが同調するのは珍しく、ジャズ研メンバーは一様に驚いた。しかし、こうなればジャズ研はその方向に進む以外道はない。


「いつからやるの?」


安達さんの頭から学祭のことは消えているのでないか。


「部長、それはそれでまた今度で。」


広瀬さんが安達さんを制止した。実に巧妙なバランスだ。


そのあといくつかの班に分かれて大まかに学祭でのことが話し合われた。


「じゃあしばらくジャズ研とアニ研は合同で活動していくってことで。」


そうして部会は終わった。


そういえば前の世界ではこんなことはなかった。前は夏の時点ですでに4回生が手伝ってくれると決まっていて、アニ研と関わることはなかった。これが歴史からの逸脱ということなのだろう。


そこからの1ヶ月はアニ研と共同で学祭に向けて準備に忙しくなった。




ただ、この時のオレには知る由もなかった。これから来たる激動の時を。

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