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ラビリアン~異次元転移~  作者: ペンギン
1/13

『過去』は『過去』でも

7年もオタクでニートだったオレも32になり心機一転就職!気が付けば社会人4ヶ月も過ぎ毎日せかせか配達していた。


しかしこのままだと一生独身!?なんてなんてなんて心の隅っこでほ~~~んのちょっと思っていた。


思えば恋なんて大学の時に告白して振られてからはしてないなぁ。初恋からまったく何も起こってねぇ!


てことで物語START→→→



「ありがとうございます。」


照りつける太陽に吹き出る汗。8月が始まり暑さは7月よりもさらに加速していた。


オレは夏の暑さを感じながら


「暑いのに大変ね、今日もご苦労さま。」


町の人との会話(?)を楽しみつつ郵便配達の仕事に勤しんでいた。


配達歴4ヶ月。まだまだ新人の中の新人。だが楽しい。毎日の何気ない挨拶だけでも嬉しい気持ちになる。この仕事選んで良かったと心の底からそう思う。人と関わることは嫌いじゃないみたいだと確認した。


きっかけはたまたま投函されたチラシを見て応募して、そして無職バンザイだった人生からおさらばした。


それにしても今日は暑い。


(あ〜暑い~。日陰で休憩でもするかぁ。)


木陰にバイクを止めて、辺りを確認してからポケットに手を入れる。


おもむろに取り出したタバコに火をつけさらに辺りをキョロキョロと確認。


最近はタバコを吸うのも一苦労だ。


「昔はどこでも吸えたのになぁ。」


そうボヤキながら煙を吐く。その刹那。


《、、、も、、、い、、、》


何かが聞こえた。声のような、気持ち悪い、音のような。誰かいるのか、辺りを見回すが誰もいない。


《ザザザザザザザザ》


誰もいないはずなのにどこからか物音まで聞こえる。どこから聞こえたのか。


(おいおい、昼間からなんなんだよ。)


こんなに暑い真夏の昼間にお化けなんて、と思いながら誰かに見られているかもという確認を込めて誰もいない周辺に向けて呼びかけてみる。


「誰かいるんですかー?」


答えは返ってこない。当たり前だ。誰が来ても分かるところに隠れているのだから、誰か来たらすぐ分かる。


多分気のせいだ。そう思いながらも不気味だから配達に戻ろう、そう思って携帯灰皿で火を消した。


その瞬間、、、





暗黒が広がった。





『ここはココハココハ、、、』


『どこだドコダドコダ、、、』


『朦朧とするモウロウトモウロウ、、、』


『暗いクライクライ、、、』


『誰かダレカダレカ、、、』


『さっさとサッサトサッサト、、、』


『、、、、、、、、、』






何秒なのか?


何分なのか?


何時間なのか?








目が覚めた時、懐かしい景色の中にいた。大学時代に先輩によく連れてこられた河川敷。悪友と花火をして通報された河川敷。そして、、、初めて失恋を経験した河川敷。


分からない。さっきまで木陰でタバコ休憩していたはずなのに、なぜここにいるのか。


辺りを見回す。誰もいないはずの隣。その隣には、、、あの日生まれて初めて告白して振られた紗奈ちゃん!?


(なぜ!なぜなぜなぜ!?オレ、さっきまで配達してたよな?え、なんで隣にこの子いんの!?)


思考を巡らせるが理解が追いつかない。また周囲を見回す。夏の暑さの中でも爽やかな風、河川敷を歩く親子連れの楽しそうな声。隣にはやっぱり紗奈ちゃんがいて、下を向いたまま何か言っている。


何か?ではない。何を言っているのか、これから何を言われるのかオレは知っている。


「ねぇ、どうしたの?聞いてる?」


辺りをキョロキョロしたり不思議そうな顔を浮かべたりしているオレに気が付いた彼女が見かねたようにオレに尋ねた。


「えっと、、、ごめん、なんだっけ?」


とりあえず振られることだけは回避しよう。オレは聞いていないフリをした。


「はぁー、なんで聞いてないのかなぁ!そっちから告白してきたくせに答えを言うってなったら聞かないとかダメだよ。」


彼女は呆れたようにため息を吐く。


「あのさ、一応確認なんだけど、『紗菜ちゃん』だよね?」


オレは恐る恐る彼女に尋ねた。


「何言ってんの?どこからどう見てもあなたが告白してきた紗奈ですけど?それとも他の人が良かった!?」


やばい。紗奈ちゃんが怒っている。


「いや、ほら、もしかしたら答えるのが嫌で他の人が成りすましてるとかさ、ハハハッ。」


我ながらに下手過ぎる嘘だ。もっと上手い返しがあっただろう。


「そんなわけないでしょ!?変な映画でも見たの?あっ、もしかして馬鹿にしてる?告白してきたのも実は嘘でした、とかそんなオチとかじゃないよね?」


やばい、紗奈ちゃんの語気が強くなっている。


「いやいやいや!そんなわけないよ?ちょっと念には念を込めて確認しとかないとさ。」


オレはそう言いつつ立ち上がり伸びをした。この空間に居たくない、夢なら覚めて欲しい。いや、夢に違いない。なぜならさっきまで配達していたのだから。


(そうだ、きっとあの時木の枝でも落ちてきて気を失ってるだけなんだ。これは夢だ。)


オレはそう思って紗奈ちゃんのほうに視線を戻した。


「で、どうするの?私を怒らせたまま告白の返事聞く?それとも逃げる?」


やっぱり紗奈ちゃんは怒っている。気まずい。夢なのにリアル過ぎる。そして夢の中まで振られたくない。


(話を逸らそう。冷めるまで逃げる一択しかない!)


「そういやさぁ、夏なのにあんまり暑くないよね?」


「いや、暑いですけど?」


「お昼ご飯は何食べた?」


「さっきあなたと親子丼食べましたけど?」


(あ~~~そうだったぁぁぁ!)


「あのさぁ、、、」


「この後に及んでまだ何か?」


「今日ってさぁ、8月2日だよね?」


「いいえ、7月24日ですが?」


「何年の?」


「2005年ですけど?」


「実はさぁ、、、」


「いい加減にしてくれないと帰るよ?」


「これが最後!」


オレは彼女に向けて手を合わせた。仕方ないと言わんばかりに彼女はため息を吐く。さっきよりも深く大きく。


「これさぁ、俺の夢みたいなんだよね?」


いっその事、事実を突きつけてしまおう。そして夢の中では失恋を回避しよう。覚めてしまえばそれでいい。


「実はオレ未来人なんだよね。2018年8月2日から飛んできた、未来人。分かる?」


彼女の顔は狐につままれたように驚いたまま固まっている。まぁ無理もない。彼女にしてみれば目の前のオレは同級生のオレで、2005年のオレで、未来人なんて意味が分からないのだから。


「だからさ、このあとの展開も分かるんだよね。せっかく出来た趣味が同じ仲良しだからずっと友だちのままでいたい、って振るつもりでしょ!?しかも友だちの誰にも相談してないでしょ?分かるんだよねぇ、ほら、未来人だからさ。」


言ってやった。これであとは夢から覚めるのを待てばいい。過ぎ去りし過去を謳歌してみようか。謎の余裕が溢れてきた。


「あなた、もしかして、、、」


彼女の表情が一変した。さっきまでの怒りの表情ではない。


「ねぇちょっと来て!」


そういうと彼女はオレの腕を取り引っ張って行った。


「紗奈ちゃん!?」


「いいから着いてきて!」


「着いてくからさぁ、痛いよ。」


(痛い?夢の中だろ?)


また色々な思いが頭の中を交差する。夢だと思っていた。いや、夢であって欲しいと願っていた。しかし、この腕の痛みがそれを否定する。


彼女に連れられてオレが来たのはかつて通っていた大学だった。


「だ、大学?」


「覚えてるよね?あなたが4年間通った大学よ!」


「覚えてるのは覚えてるけど、未来人って信じたの?」


「いいから、こっち。」


そう言いながら彼女はオレを連れて北門をくぐってすぐ左、3階建ての図書室の入り口を抜けた。未来人の文献でも見るのだろうか、なんて呑気なことを考えていると彼女はそのままエレベーターにのりこんだ。


1、2、3、、、止まらない。


4。扉が開いた。


「よ、4階?ここ、3階建てだよね?」


「あなたの過去では。でしょ?いいから着いてきて。」


そういうと彼女は正面にある扉にノックをし、返事も待たずにドアを開けた。


「教授、聞いてください!見つけました!彼もラビリアンです!」


彼女は大きな声で中で本を読んでいた壮年の男性に報告していた。


手を離されて呆気に取られるオレを尻目に2人は会話を続けた。


ラビリアンが何なのか、今がどういう状況か、二人の会話から読み解こうとしてみた。しかし、分からなかった。


「君が宮瀬さんの前に現れたラビリアンの青年かぁ。」


突然、『教授』がオレの方を向き物珍しそうな視線をぶつけてきた。


「あの、さっきから、、、」


オレからする当然の質問。ラビリアンが何なのか。聞かれると分かっていたのだろう、『教授』はオレが言い始めると同時に言葉を重ねてきた。


「ラビリアン。一言で言うと迷い人ってとこかな?」


「迷い人?」


「そう、2018年の世界で言うなら異世界転生が1番近いかもね。」


驚いた。2018年と聞いただけで分かりやすく置き換えてくれた。異世界転生、死んで別の世界に行ってうんぬんかんてやつだ。つまりオレは死んだのだろうか。


「だが君は死んでなどいない。ゆえに転生ではない。」


心の声のはずなのに的確な返事が来る。まさか、


「僕はラビリアンではないよ。」


そう言って彼は優しく笑った。


「私がラビリアンなの。」


隣にいた紗奈ちゃんが笑顔でそう言う。言っていることの意味が分からない。


「全然理解出来ないって顔をしてるね。まぁ当然の反応だよ。宮瀬さんも似たような反応だったからね。」


全てを包み込むような優しい笑顔。


「聞いたら教えてくれますか?」


『教授』は黙って僕の問いに頷いた。


「ラビリアンってなんですか?」


ごくごく普通の質問。この状況になれば100人いたら全員同じことを聞くのではないかと思えるほどありふれた質問。


「ラビリアンを説明する前に聞いておきたいんだけど、君は宇宙についてどれくらい知っている?」


予想の斜め上から来た質問への質問返し。それも宇宙の知識。


「宇宙、ですか。」


「そう、宇宙。」


「めちゃくちゃでかくて、ビッグバンで誕生して、真っ暗で空気は無くて、いつかは無くなる、、、くらいですかね?」


ネットでチラ見した程度の知識だ。仕方ない。


「随分と漠然とした答えだ。」


『教授』はまた優しく微笑んだ。


「じゃあ宇宙が無くなったらどうなると思う?」


「無になる?」


「そういう考えもあるね。」


「答え、分かるんですか?」


少しイラッとした。本題から随分かけ離れている。今、宇宙の未来について語っても意味が無いはずだ。


「意味が無い。そう思ったかい?」


この人はまた人の心を見透かしたようにはなす。


「まぁ何人かのラビリアンと同じ話をしてるからね。寸分たがわず皆同じ反応だ。」


少し笑顔が変わった。核心が来る。そう思えるくらいに。


「宇宙っていうのはね、この世の中にいくつもあるんだよ。それこそ数個どころじゃない。無限大にね。今いる宇宙の外には別のまったく同じ宇宙が広がっている。さらにその外にも別の、でも同じ宇宙がある。外の、その外の、さらに外のそしてずっと外の宇宙のさらにその外には驚くことに今僕たちが存在している宇宙がある。不思議だろ?外に行けば行くほど内に繋がるんだ。そこには終わりも始まりもない。同じ宇宙が無限大にあるってことは分かるかい?宇宙と同じ数だけ地球ももちろん存在する。そこに住む生物も何もかも同じだ。つまりはね、ラビリアン、そう呼ばれる人たちのすべてはその宇宙を超えてしまった迷い人のことさ。」


『教授』はまくし立てるように話を続けた。オレは理解することを半ば諦め、大事なことだけ聞き逃さないようにしっかりと耳を立てた。


「もちろんすべての地球がまったく同じである、というのは事実ではない。現にこの図書室4階は君の世界とは異なっているだろ?じゃあどこで異なる地球が生まれるのか。君はどう思う?」


どう思うと尋ねられても答えられるわけがない。話の半分も理解出来ていないのだから。


「どうと言われても、、、。」


「イジワルな質問だったね。」


そう言ってまた優しく微笑んだ。


「ほぼ全ての地球はまったく同じ歴史を歩む。誰かがあくびをしたり泣いたり笑ったり。寸分たがわず皆同じだ。」


「だからさっきのオレの反応知ってたんですね。」


「いいや?さっきのは皆同じと言っただろ?君だけ同じという訳じゃない。それに僕はラビリアンではないと。」


「そうでした。話の腰を折ってすいません。」


「いや、理解出来ないことを言われているんだから混乱するのは当たり前だよ。話を戻すね。」


そう言った『教授』の顔はとても真剣なものに変わった。


「ほぼ全ての地球ということは、少なからずの地球は違う歴史を歩んでいるということなのは分かるね?じゃあその『少なからずの地球』が生まれるのはなぜか。それは歴史の分岐点においてその地球だけが異なる分岐をしたからなんだよ。」


「異なる分岐?分岐点?つまりどういうことですか?」


「全ての地球には必ず分岐点が存在し、その分岐点は必ず誰かの言葉を借りて世に広まる、という分岐点の特異性があってね。近いところで言うとノストラダムスの大予言とかマヤの予言とかそういうところ。つまりそれらの予言が予期するのは滅亡ではなく歴史からの逸脱。決められた未来が無くなるということなんだよ。」


驚いた。全てを理解出来ている訳では無い。だが聞いていてどこか納得の出来るものだった。


「ちなみに今、ここに君がいる地球はそのノストラダムスの予言の時に歴史から逸脱した地球だ。つまり君の知る地球とは全ての生き物は同じではあるが同じ歴史ではない。簡単に言うと君の記憶を頼りに競馬なんかしても勝つ馬は違うってことさ。まぁなぜか分からないが出ている馬はまったく同じということも証明されているんだが。」


「はぁ……」


やはりよく分からない。ここが地球ということはあっているんだからもうそれでいいとさえ思い始めた。しかしふとした疑問が脳裏をよぎった。


「なぜ、この地球はそれが分かるんですか?」


当然の疑問だ。今まで生きてきた地球においてそんな話など聞いたこともない。国の偉いさん方が隠しているだけかもしれないが、ならなぜこの地球では1教授がここまで説明できるのか。たった6年で解明されたなんてことも無いはずだ。


「私もさラビリアンって言ったよね?」


これまで静かに聞いていた彼女が口を開いた。


「最初はさ、全部がなんで?どういうこと?の連続だったよ?あなたはラビリアンです!なんてなんて言われてもよく分からないし。」


そりゃあそうである。理路整然としているだけで中味はちんぷんかんぷん。それが今のオレの感想だ。


「紗奈ちゃんはどこで受け入れられたの?」


「全知創世の書。」


「全知、、、創世?」


「そう、見開き1ページの白紙の書。それを開くだけで今さっき教授が言ったことの全てが自分の記憶として頭に残るの。」


やはり夢の中に違いない。それっぽいことを言っているがすべては絵空事だ。


「歴史の分岐点で違う歴史を歩み始めた地球の全ての生き物の前に現れたんだよ。人間だけじゃない。犬や猫、ひいては昆虫なんかの前にも。そして目を通すとそれは消えてしまった。いや、目を通す必要など無かった。書の近くにいるだけで無自覚に脳にインストールされたんだ。」


話がどんどん飛躍していく。オレの脳が限界を迎えてきていた。


「これ以上はやめておこう。きっと日を追う事に分からないことも増えてくるだろうしここで一気に説明するよりはその都度説明したほうがわかるだろう。」


そういうと『教授』はオレに背を向けて本を読み始めた。


「じゃあ今日のところは帰りましょ。」


紗奈ちゃんは『教授』に挨拶するとオレを連れて部屋を出た。


「紗奈ちゃんはさ、この地球に来て長いの?」


エレベーターに乗っている間なにか話さなければいけないと思って出た質問だ。


「半年くらいだよ?」


「理解出来た?」


「分からなかった。」


振り向きながらそう言って彼女は笑った。そんな彼女を見て、一つだけ疑問が生まれた。


「あのさ、オレは2018年から飛んできたけど紗奈ちゃんは?」


彼女の顔が少し曇る。聞いちゃいけなかったのだろうか。


「私はね、2021年だよ。だからホントは君より3つお姉さんなの。」


そう言って笑顔を浮かべた彼女は昔恋をした紗奈ちゃんの笑顔そのものだった。


「じゃあオレが32だから紗奈ちゃん、いや紗奈さんは35、、、」


言い終わる前にエレベーターは1階に着き、彼女は答えずに先に出ていった。





紗奈ちゃん改め紗奈さんと地球から地球への異次元転移した先で

『これから』→中の時間はどれくらい過ぎるのか

『どうなっていくのか』→恋愛なのか?

『モチベーション次第』→神のみぞ知る

本格的な小説は初めてなので是非生暖かい目で読んで欲しいです!

以上!ホントよろしくお願いします!

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