猫のはく製
わたしの猫のキキが死んだ。キキは22才だった。わたしが生まれる前から居たわたしより年上の猫。
わたしは泣いた。大泣きはしなかったが頬に涙が伝った。
わたしはキキを土に埋めたくなかった。私の近くには魔女が住んでいた。もしかしたら魔女がなんとか、この猫をなんかしてくれるのではないかとふと考えが浮かんだ。いつもだったらこの近くに住む魔女を気味悪がって心の中では罵っていたわたし。でもわたしは猫がもしもまだ近くに居てくれるならと藁にも縋る様な思いで魔女に頼むために魔女の家に出かけた。
「もしもし魔女さんいらっしゃいますか?」
わたしはドアを叩いた。
「はーい」
しばらく待っていると目つきが鋭い怪しげな魔女が出てきた。
「おや、どうしたのかね?」
「あ、あの、こんにちは魔女さん、実は猫が死んでしまって・・・。あの魔女さんなら猫をまた生き返らせることができるんじゃないかと、一応思って・・・。」
すると、魔女はため息を一回言って説教し始めた。
「私はそんな神みたいなことできないよ。だいたいこんなことができるんだったらこんな片田舎で暮らしていないよ。実際に生き返させれたら、もっとでかい街に行って死後も蘇りたい権力者に取り入って豪勢にやっているよ」
わたしはしょぼーんとして「では、わかりました。諦めます。生き返ってくれなくても動く姿が見たかった。少々お金に無理しても・・・」と答えた。
魔女は「生き返なくても動くだけでいいのかい?」
私は少し驚いて、「ええ・・、生き返なくて動いていれば、まだ心は満たされます」
「そうか、そうか、わたしも仕事を探していたんだ。死んだ猫を動かせるようにしてやるよ。お金は頂くけどね」
「では、このキキが動くようになるんですか?」
「お願いします。」
わたしは、月収3か月分くらいのお金を払い。願いをかなえてもらうことにした。
そして、魔女が死んだ猫を動かしてくれると約束した日にちに猫を引き取りに魔女の家へ訪れた。
魔女は「やぁ、来たね、出来たよ」
「できたんですか?」
「できたよ、こっちをみてごらん」
すると、死んだキキは魔女の布団で眠っているではないか.
「キキ!」
わたしが読んだらキキは目を開けた。
「キキ、生き返ったんですね?」
わたしは目を大きくしながら魔女に尋ねた。
すると、魔女は少し自慢げになって話し始めた。
「とりあえず、お前から頂いた3分の1の金を使わせてもらって剥製にした」
「じゃあ、今のキキは剥製なんですね。」
「そうだね」
「でもちゃんと、目を開けている?」
「そこは、私の魔力だよ、剥製の猫を動かす術の本があることを思い出して、この猫を一応猫らしい動作が動くように魔力を込めた」
「キキ!キキ!キキが動いた」
わたしはすこし涙を潤ませながら猫を抱いた。
魔女は言った。「まあ、動くようになったんだけどね、死んだ前の猫の全く一緒じゃない、これだけは心に刻んでおくんだね」
「わかりました。それではキキを連れて帰りますけど、よろしいですか?」
「おう、いいよ。その猫・・・剥製を大事にしな」
「はい、わかりました。ありがとうございました。」
わたしは魔女の家を離れキキを家に持って帰った。
家に連れて帰ったキキ。この剥製になって魔力で動いているキキは餌を食べるのかなと、餌を差し出した。
キキは、餌に顔を近づけるが食べようとしない。
じゃあ、鳴き声を出すのかなと観察してみた。一応、頭を長くなでていると鳴くようだが、ほぼ泣かなくなった。
2・3日はキキが剥製だろうと動いて帰ってきてくれるのがうれしかった。
でも、それから・・・(これはキキじゃない)わたしは違和感を感じていた。
(でも、キキが帰ってきてくれたんだ。動かなくなるまで面倒見るぞ)私は心に決めていた。
ある日、キキに日向ぼっこをさせるため外に出して、わたしはじばらく家事をしていた。
”ウゥウウウウウ!!ニャアアーーーアン!”そとから、キキと他の猫が喧嘩している音が聞こえた。
「キキ!キキ!」
わたしはキキを助けにドア開けた。
ひどい喧嘩でわたしは手出しができなかった。
そして、わたしが箒を家から持ってきて喧嘩を仕掛けてきた猫に箒を振り回したら、その猫は逃げて行った。
しかし、喧嘩が終わった後のキキは魔力で動いているためで抵抗できなかったのか、毛はたくさん抜け、皮も破けていた。
これを見たわたしはある決心をした。
そしてわたしは、魔女の家を訪ねた。
わたしは魔女の家のドアを叩いた。
「どうしたんだい」
「あの、このキキを埋葬いしたいと思うので動きを止めてくれませんか?」
「あんなに、思い入れの強い猫だったじゃないか?いいのかい?」
「わたしは猫が死んだことを受け入れられず、そのことはわがままじゃなかったのかなって、それにキキの思い出はわたしが死ぬまで絶対忘れませんから、これで結構です」
「そうかそうかわかったよ。では魔力を抜いてもう動かなくするよ」
わたしは、魔女に猫の魔力を抜いてもらい。動かなくなったキキを抱いて家まで帰った。
そして、わたしは穴を掘り、穴の中にキキを入れて埋めた。
「キキ、ありがとう。そしてゆっくり眠ってね。」
わたしは最後に手を合わせてキキの冥福を祈った。
この文章を書いている途中に、自分の飼っている猫が寝たきりになりました。一時期危なくなって、今までペットは家族ではないという自分の認識が変わっていきました。猫が居間にいなくなって、猫と触れ合うコミュニケーションだけでなく、居間に居る親などの家族のコミュニケーションのつなぎ役をしてくれていたんだなとしみじみ思います。自分の飼っている猫には感謝しかないです。