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6.ポートランド

 ヨツオが厚い鉄板を外した装甲車を、高速道路のガソリンスタンドにとめ、給油している。

 ヨツオたちは、テキサス州からオレゴン州への高速道路で休憩している。

 カールは、いつもの姿、つまり擦りきれたジーンズに、穴が開いたシャツを着ている。

 オレゴン州ポートランドは、ジャンキーと犯罪とリベラル(お人好し)と売人が渦巻く町だ。

 そこにあるジャンキーたちのテント村にカールは先入する予定だから、いつもの姿をしている。

 パルが心配そうに聞く。「大丈夫?」

 ジャンキーの中に潜入して麻薬に溺れないかパルは心配している。

 カールが言う。「ああ、大丈夫だ。」

 ポートランドでのホームレスのテント村の話を聞いた時、潜入捜査を言い出したのは、カールだ。

 パルが再び聞く。「本当に大丈夫?」

 その提案をカールが言い出した時、心配したパルは今でも心配している。

 カールが再び言う。「本当に大丈夫だ。」

 カールだって心配だが、ナットを取り戻す為にはやるしかないと思っている。

 パルが言う。「ナットが哀しむから殴るのはやめてね。」

 パルはナットが戻ってくる為の条件を言う。

 カールがパルを一瞬睨む。パルが酒瓶を握る。

 カールが慌てて言う。「分かった。」

 パルは、ウェンディから空の酒瓶を貰っている。

 もし、カールがジャンキーのままなら酒瓶で叩いてくれとパルはウェンディに頼まれている。

 カールがパルに聞く。「ナットは、俺が殴るから家には戻りたくなかったのか?」

 パルが言う。「誘拐された所では、殴られないと言っていたわ。」

 パルがナットから貰ったハンカチをカールに渡す。

 パルが言う。「それで頭を冷やしたら。」

 カールは、まだウェンディに殴られたあとが痛いと言っている。パルが装甲車に戻る。

 カールは、ハンカチを見る。



 ポートランドに着いたビルたちは、麻薬の注射器一式を無料で配布している教会の近くにカールを降ろした。

 そのまま、ポートランドで保守派のアンジェラ・ドナルドに会いに向かう。

 虎族のアンジェラ・ドナルドは、ポートランドを犯罪と詐欺師から守る守護者会(ガーディアンズ)の代表だ。

 ビルたちがアンジェラの家に着いた時、アンジェラは家の周囲に落ちている注射器を集めていた。

 アンジェラにパルが挨拶すると、アンジェラが集めた注射器の入った袋を見せて言う。「リベラルたちは、麻薬を合法化して、ポートランドを犯罪とホームレスのたまり場にした。」

 ポートランドでは、ジャンキーが安心して麻薬を射つことができるので、ジャンキーが集まる。彼らの中には、盗みをして麻薬を買う金を得る者がいる。

 その結果、車は売れるものを全部盗まれて廃棄物になる。

 ビルたちは、ここにくるまでタイヤを盗まれた自動車を何台も見ている。

 もちろん、万引きなどやりたい放題であり、捕まえてもすぐ釈放されている。公園などはホームレスの不法占拠により、一般人が入れない状態だ。もはや公共の場ではなく、貧民街(スラム)だ。

 ビルが言う。「注射器一式を配る予算はあるのに、ジャンキーのリハビリ予算は削減する。リベラルは麻薬の売人のサポーターだ。」

 アンジェラが感心して言う。「よく知っている。」

 ビルが言う。「あなたのユーチューブを見せて貰っている。」

 アンジェラが言う。「やはり、ユーチューブはやっていて善かった。」

 八重子が言う。「リベラル(お人好し)たちは、きっと気づいていないのですよ。」

 アンジェラが聞く。「何に気づいていないの?」

 八重子が言う。「破壊衝動。」

 アンジェラが聞く。「なぜ破壊衝動をリベラルが持っているの?」

 八重子が話そうとした時、外で激しい金属音がする。

 


 時間はアンジェラが質問する少し前になる。

 アンジェラの家の前にある装甲車の横に豚人族のヨツオがいる。装甲車の部品を盗られないように見張っている。

 ヨツオが短槍を構える。

 ヨツオの前に大柄の男が現れる。フードを被り、口元にはマスクをしているがマスクが飛び出している。全身が黒ずくめだ。

 黒ずくめの男が叫ぶ。「死ね!」

 ヨツオが言う。「テキサスの生き残りか?」

 テキサス州の警察署を銃撃していた黒ずくめの集団に、一人動きが速いやつがいた。ヨツオがショットガンで狙っても、その男は速く動いて当たらなかった。

 その男は、コートから青竜刀を現し、ヨツオに斬りつける。

 ヨツオが短槍で青竜刀を防ぐが、黒ずくめの男は足の先に刃物を出してヨツオを蹴った。

 ヨツオの腹は、蹴られたがバチバチと火花を発している。

 蹴った男のコートが火花で燃えて、ワニ族の男であることが分かる。

 ヨツオもワニ族の男も、共に軍用の戦闘装備(スリムパワー)を着けている。

 だから、強力な武器で相手を倒す必要がある。

 八重子とビルが現れ,二人共に戦闘装備(スリムパワー)を着けているのを見てワニ族の男は逃げる。

 八重子とビルがワニ男を捕まえようとするが、黒ずくめの男たちが現れ、発砲する。

 彼ら全てを倒した後、ワニ族の男の姿は消えていた。

 八重子がヨツオに聞く。「テキサスの生き残りか?」

 ヨツオが言う。「そうだ。しかもやつも軍用の戦闘装備(スリムパワー)だ。」

 八重子が聞く。「バッテリーがやられたな。」

 ヨツオが言う。「まあ、バッテリーに救われたよ。」

 どうやらバッテリーがワニ族の男の蹴りを受けたので、ヨツオ自身にはダメージはなかったようだ。

 八重子が近くにきたビルに言う。「やつらは、ただの売人じゃない。」

 アンジェラが聞く。「どういう意味?」

 八重子が言う。「やつらは、深き闇の使徒だ。」




 

 カールは、ジャンキーにまぎれ込みジャンキーのふりをして、ただ笑いながら座っている。目は八重子が渡した擬装剤で毛細血管が拡張して赤くなっている。

 カールがいる場所は、ジャンキーのたまり場である。周囲にはテントが幾つもあり、ジャンキーと売人たち以外はいない。

 そこへ黒ずくめで大柄の男が入ってくる。さっきヨツオを襲撃したワニ族のケネスだ。

 そしてやはり頭から黒ずくめの男、ワン・ロンが言う。「どうしたんだ?焦げくさいぞ。」

 ケネスが言う。「テキサスからコーギーたちが来た。」

 ワン・ユンの横には、ゴリラ族の男がいる。そしてゴリラ族の男はナットに付けられた首輪の鎖を握っている。

 ワンが言う。「それで、殺そうとした。」

 ケネスが言う。「ああ、豚野郎には散々撃たれたからな。」

 ゴリラ族の男が言う。「テキサスから追って来たのか?」

 ケネスが言う。「そうだ。豚野郎が一人だから殺れると思ったのさ。」

 ワンが言う。「その様子だと失敗したな。」

 ケネスは何も言わない。

 ゴリラ族の男は言う。「俺はこいつを、さっさとジョージアの代理人に渡しに行くぜ。」

 ワンが言う。「ここで渡す手筈だったのに、大変だな。」

 何か急ぎの仕事で動けなくなり、ゴリラ族の男がナットを連れて移動することになった。

 カールが、ナットを見て思わず駆け寄る。

 カールが言う。「俺の娘。」

 ゴリラ族の男が殴る。ナットはカールを見ても何も言わない。

 ナットは薄れる意識で、なぜナットがカールを見て何も言わないのか、考えていた。麻薬をやっていると勘違いされたのか?

 それとも、いつも殴ることしかしない男だと無視されたのか?

 カールは答えを出せずに意識を失う。

 ゴリラ族の男が言う。「これだからジャンキーはダメなんだ。」

 ケネスたちは、カールをジャンキーとして、そのまま去る。

 

 

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