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緑小鬼討伐

-1-

 というわけで翌日、やってきました緑小鬼の巣穴。

 近いところで森に入って、イツキレーダーを駆使すれば緑小鬼ごとき簡単に見つかるわけで。

 街を出て昼前にはもう目的地についてたりする。


 ただ、巣穴の洞窟の前には見張りと思しき緑小鬼が2匹、粗末な槍をもって退屈そうに立っていたのはちょっと予想外だった。

 2匹も見張りしてるとはね。1匹だけだと思ってたよ。

 しかも距離が微妙に遠い。魔法の射程距離から幾分外れてやがる。

 所々に切り株があるのを見ると、どうやら緑小鬼が寄ってたかって木を切り倒し、視界を確保したのかもしれない。

 ……余計なことしやがって。

 さてどうしたもんか。と考え始めてすぐに止めた。

 緑小鬼程度に策を弄する意味があるのか、と。正面から行って全部叩き潰せば終わりだろ。

 そう結論付けて、隠れていた茂みの中から立ち上がった。

 んじゃ、殺るか。


 こちらの姿を認めた見張りの緑小鬼2匹は、すぐに叫び声を上げた。

 数が集まると面倒だ、ってんで見張りに駆け寄り1匹を戦槌で薙ぎ払う。

 勢いの乗った槌頭が槍をへし折り、肩口から首にかけての肉をごそっと削り取って命を刈り取る。

 返す勢いでもう1匹に烏口を叩き込むと、顔の真ん中に命中して頭が吹き飛んだ。

 これで2匹。

 あとは洞窟の脇に身を寄せて、残りが出てくるのを待つ。

 どたどたと足音がして新手の3匹が外に出てきた。

 暗い洞窟の中から、急に明るい外に出て目をしばたかせる隙に、イツキの魔法で小枝の矢が降り注ぎ3匹をハリネズミにする。

 ……なんか魔法の威力上がってませんかイツキさんや。

 ともあれ、これで5匹。

 その後、しばらく待ってみるも中から新手が出てくる様子はない。

 ならばと洞窟内に足を進める。

 洞窟の中だと樹魔法は使えなくなるが、まぁ仕方ない。

 洞窟内は結構狭い。戦槌を左右に振り回す余裕はなさそうだが、天井はそこそこ高いのが幸いだった。

 途中、物陰に隠れてこちらの隙を伺ってた1匹を、戦槌の先の穂先で串刺しにする。

 生憎この目は暗闇でも見えるんでね、隠れているのなんざバレバレなんだよ。

 これで6匹。

 洞窟の中をまっすぐ進むと、じきに分岐に突き当たった。

 右か左か……こころもち道の狭い右から行ってみる。

 が、こちらはハズレ。寝床らしい毛皮が数枚散らばっているだけだった。

 来た道を引き換えし、分岐点に戻る。今度は左に進んでみる。

 少し進むとちょっとした広間に行きあたるが、ここにも何もいない。

 しかし、その先にある道から、何匹もの足音や緑小鬼の叫び声が聞こえてきた。

 どうやらこの奥が最奥点らしい。

 どうやら松明を焚いているらしく、うっすらと明かりが漏れているのが分かる。

 ふむ、暗闇での乱戦を覚悟していたが明かりがあるのはありがたい。

 そう思って足を進めると、奥から小さい火の玉が飛んできた。

 とっさに腕で払うと、ちょっとした痛みと熱を感じた。

 少し驚いたが、大したことはない。だが、敵の中に魔法使いがいるのはちと厄介だ。

 魔法の発射先を探すと、奥の広間らしいところに何匹もの緑小鬼がうごめいていた。

 その一番奥に、フード付きの外套をまとった見慣れない緑小鬼がいた。

 あいつが親玉か。

 ざっと見たところ、親玉を除いた緑小鬼は4匹。1匹ずつ片づけるのはちと時間がかかる。

 というわけで、外套の緑小鬼を巻き込む形で尖石の杭の魔法を発動させる。

 一帯の地面がぶるりと震え、十数本のとがった杭が一斉に隆起する。

「ゲギャ!ギャ!」

 2匹が腹にまともに杭を受け、動かなくなる。さて親玉はと見れば、足に杭を受けたのか地面に転がってじたばたしている。

 駆け寄って思い切り腹を蹴飛ばすと、壁にたたきつけられて崩れ落ちた。

 さて残りは2匹だが……広間の入り口から逃げ出すのが見えたので、追いかけて背中からそれぞれ刺し、殴りして

止めを刺した。

 倒れた緑小鬼の頭から戦槌を引っこ抜いて血をぬぐう。一応これで全部……だと思うが、広間の奥をまだ調べていないので足を進めてみる。


 どうやらそこは緑小鬼の物置というか宝物庫?だったようで、雑多な品が乱雑に転がっていた。

 ただ、ここに居ついてまだ間がなかったようで、ほとんどすべてが動物や木の実の食べ残しだったり毛皮や骨ばかりだった。

 緑小鬼といえば人間の女性をさらって数を増やすというのが一般的だが、幸いまだ被害者は出ていないようだった。

 一通り洞窟内を探索し終わったので、証拠品の耳をそぎ取りながら洞窟を出た。

 親玉はいっちょ前に杖なんぞ持っていやがったので、これも回収しておいた。

 つーか耳だけだと見分けつかんのよね。

 洞窟の外で倒した緑小鬼5匹の耳も回収しおえると、残った洞窟は入り口を魔法で塞いでおくことにした。

 こうしないとまた何かが住み着くかもしれんしね。


-2-

 そして戻ってきました石巨人亭。

「おお、おかえり。どうだった?」

「11匹いたけど全部倒してきた。1匹だけ魔法を使うやつがいたな。これ、そいつが持ってた杖」

 証拠の耳が入った袋と、回収した杖、冒険者手帳をカウンターに置く。

「ふむふむ、魔法を使う個体がいた、と。緑小鬼の呪術師だな。たまにいるんだ。そういう緑小鬼が」

「まぁ魔法を食らったけど大したことなかったな。ちょっと手袋が焦げただけだ」

「緑小鬼の呪術師じゃそんなもんだ。それでも駆け出しだとやられるときもあるんだがな」

「俺にとっちゃピクニックみたいなもんだったよ」

「まぁそうだろうな。ほれ、これが報酬だ。緑小鬼の呪術師は2匹分に換算してやるから、銀貨で24枚だな。半金貨の方がいいか?」

「いや、銀貨でいいや」

 そういってじゃらじゃらと銀貨を受け取る。

「そういや、緑小鬼の住んでた洞窟は塞いできちまったけど、良かったんだよな?」

「ああ。どうせ魔物か野盗のねぐらになるのがオチだからな」

 亭主はそういうと、冒険者手帳にさらさらと書き込み、返してきた。

「ほれ、これで依頼完了だ」

「確かに」

「しかし今回はお宝はなしか。お前さんのツキにちょっと期待してたんだけどな」

「流れてきたばかりの緑小鬼の巣に宝物なんかあるかい。武装も石の斧とか木の槍だったし。そういや、杖はどうなんだ?」

「なんの効果もないただの木の杖だな。薪にしかならんよ」

「なんだ、それもハズレか」


「ところで、話は変わるが……お前さん、誰かと組む気はないか?」

「誘いでもあんのかい?聞いたことないけど」

「それとなく、だけどな。前衛が務まって魔法も使えるってのはかなり貴重だからな」

「ま、正直に言えばイツキと二人じゃ手が足りんな、と思うときはある。迷宮で見つけた宝箱なんかは、わざわざ土人形作って開けてるしな」

「なら……」

「でもなぁ、オヤジさんも知っての通り、こちとら兼業冒険者だぜ?依頼を受けるペースも早いとはいえねぇ」

「俺の方はこのペースでも年金やら報奨金でなんとか食っていけてるけどさ、専業冒険者がこのペースじゃまず食っていけんだろ」

「ああ……それはそうかもな」

「かといって内政官の方をやめるわけにもいかんしな」

「そりゃそうだ」

「俺ののんびりしたペースに付き合ってくれる相手がいるなら考えるさ」

「そっか」

「じゃ、今度は逆に俺が聞きたいんだが……」

 魔槍について調べているうちに、ふと思いついた疑問を口にしてみた。

「なんだ?」

「この辺りじゃ、銃の扱いってのはどうなってんだ?」

「じゅう?」

「火薬と火縄で鉛玉を飛ばす武器だよ」

「ああ、火筒のことか。アレに興味があるのか?」

「まぁね。森で暮らしてた頃は何度かあれに狙われたし。俺の感覚では、主に軍隊が装備していて冒険者には人気がないとみたが、どうよ?」

「まぁそうだな。おおむねその通りだ。威力も射程もそこそこあるんだが、なにせ手順が複雑すぎてとっさの時に使えないのと、雨に弱いのと、大きな音が出ることが人気のない原因かな」

「やっぱりそうか」

「だだっ広い平原ならともかく、屋内や迷宮の中じゃまず役に立たんしな」

「因みに射程距離はどのくらいだい?」

「狙って当てられるのは50トエムがいいとこだな。射程の面では弓に劣るよ。威力は弓より上だけどな」

「ふーん」

 ……50トエムとなると、ライフリングはされてないっぽいな。それに手順が複雑ってことは、先込め式と思って間違いないか。

「お前さんの故郷に火筒はあったのかい?」

「あったね。こっちと似たり寄ったりだが、もっと普及してた」

 嘘です。威力も命中率も段違いの上、連射も可能ともっと凶悪になってます。

 ただ、こっちの世界には銃をあまり広めたくはないんだよね。俺としては。

「ウチの領主も持ってるのかな」

「10本くらいは持ってるはずだな。大がかりな演習の時にそのくらい見た気がする」

「10本か……じゃあ実戦にはあまり役に立たんな」

「役に立たないか?」

「立たんね。まぁ精々、馬とか銃に慣れてない兵を驚かせるくらいが関の山か。あれは500とか1000とか揃えて一斉射撃か、組を分けて五月雨式に撃たんと意味がない」

 先込め式の単発銃だった時代は、そんな戦い方だったはずだ。方陣組んで行進して、敵の白目が見えたら撃てとかそういうレベルだったと思う。

「500や1000か……そりゃ金がかかるな」

「あれ?火筒って結構高級品?」

「当たり前だ。どれだけ細かい機構になってると思うんだ。それを鍛冶職人が1つ1つ手作りだぞ?値段だって跳ね上がるさ」

「そっか。じゃあ個人で持つのは諦めたほうがいいか」

「なんだ、持ちたかったのか?」

「いや、今回の依頼でちょっと射程が気になってね。片手で使える火筒があれば便利かなと思ったのさ」

「弓じゃダメなのか?」

「ありゃそれなりに稽古が必要だろ?弩は嵩張るし……ってそうか、普段は無限袋にぶち込んどきゃ良かったんだな」

「そうだ。お前さんは無限袋持ちなんだから、嵩張る荷物は得意だろ?無理に火筒に手を出すことはねぇよ」

「確かにそうだった。んじゃ、帰りに弩買って帰るわ」

「おう、矢も忘れずにな」


 なんか最後がgdgdだったが、まぁこの世界の銃のレベルが知れたので良しとするか。

 先込め式の火縄銃では、あまり脅威にはならなさそうだな。

 しかし弩はちょっと盲点だった。そういう武器があるのをすっかり忘れてたわ。

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