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武器屋に行こう

-1-

 さて鎧が決まったから次は武器屋だ、と隣の武器屋の扉を開ける。

「あいらっしゃい」

 ここでもカウンターの奥からドワーフと思しき親方が声をかけてきた。防具屋よりも若干愛想がいい。

「えーと、お宅がゼワンゴ親方かな?石巨人亭の亭主の紹介で来たんだが」

 そういって紹介状を渡す。

「ああ、ワシがゼワンゴじゃ。どれ……」

 ゼワンゴ親方は紹介状を片手で受け取ると読み始めた。

「ふむ……お前さん冒険者になるのか」

「前からやってみたいと思ってたんだ」

「戦いの経験は?」

「槌鉾と野良着で1~2年ほど山暮らしを。その後はセルリ村で1年くらい農作業の傍ら猟師の真似事を少々」

「となると経験はあるわけだな。どんなのと戦ってきた?」

「一番大物は卑竜(ワイバーン)赤大鬼(オーガ)かな」

「使ってる槌鉾は持っとるか?」

「ああ、一応持ってきた」

 そういって無限袋から愛用の槌鉾を取り出してゼワンゴ親方に渡す。

「ほう……こりゃ数打ちの量産品なのに随分使い込んでおるな。軍の関係者か?」

「いや、それは拾いもんだ。戦場跡を通ったんで使えそうなのを見繕って拾ってきた。今まで使ってきたが、どーも俺には軽すぎてな」

「じゃろうな。よくこれで卑竜やら赤大鬼を倒せたもんじゃ」

「運が良かったし魔法も使ったからな」

「なんじゃ、おぬし魔法使いか」

「我流だけどね」

「なら卑竜や赤大鬼と倒せたというのも納得じゃな。こんな武器でまともにやりあったら、武器のほうが壊れるわい」

 ゼワンゴ親方が頷いて武器を返してきた。

「ここに来たんなら打撃武器が目当てと見るが、何か希望はあるか?」

「その前にちょっと店の中を見させてくれ。どういう武器があるのか知りたい」

「そうじゃな。好きに見るといい。手にとっても構わんが、振り回すときは一言言ってくれ」

「あいよ」

 頷いて壁の端により、武器をざっと見て回る。

 片手遣いの軽槌鉾(ライトメイス)やら両手遣いの重槌鉾(ヘビーメイス)やら大金鎚やら、トゲのついた鉄棍やらが壁に飾ってある。

 上にあるものほど値段が高いようだ。

 さすがにヌンチャクはないが、連接棍(フレイル)鎖鉄球(モーニングスター)なんてのも置いてあった。

 とりあえず自分の馬鹿力を考慮して、柄が木製なのを除外すると結構数が絞られる。

 まずは手になじんだ槌鉾から、片手でも両手でも使えそうなサイズのものを選んで手に取ってみる。

「ちょっと振ってみても?」

「軽くなら邪魔にならんところでな。本格的に振りたいなら中庭じゃ」

「軽くでいいや」

 そういってゆっくりと槌鉾を振り回してみる。ふむ、やはり使い慣れてただけあってしっくりくる。

 次はシンプルな鉄棍を手に取る。手持ちは細く、先に行くにつれ太くなりトゲも付く。

 なんか角ばった鬼の金棒みたいやね。

 総鉄製なのでずしりと重く、片手で保持するのはちとキツイ。でもこれだとシンプルすぎて面白みがないな。

 連接棍や鎖鉄球は使いこなせる自信がないのでパス。

 次は大金鎚だが……うん、これは槌鉾以上に威力がありそうだ。ただバランスがいまいちよろしくない。

 構造上仕方ないのかもしれんが、これはデメリットだな。

 そして最後に手に取ったのがT字型の戦槌(ウォーハンマー)

 うむ、程よい重さでバランスも悪くない。

「これ、ちょっと本気で振り回しても構わんかな?」

「戦槌か。またマイナーどころを選んだの」

「そうなのか。槌頭と烏口(からすぐち)で一振りで2度おいしいと思ったんだがな」

「まぁええわい。ほれ、こっちが中庭じゃ」

 カウンターの脇の扉の一つを空けると、短い通路があって中庭に出た。

「ここなら思う存分振り回してええぞ」

「じゃ、遠慮なく」

 そう断って、力いっぱいぶん回してみる。

 うん、なかなかいい感じだ。と思ってゼワンゴ親方を見ると、なんかため息をつかれた。

「おぬし、ホントに素人なんじゃな」

ぐさっ

 い、いや、それは分かってたけどそう面と向かって言われると傷つくな。

「力も早さも申し分ないが、腕の力だけに頼りすぎじゃ。駆け出しのうちなら構わんが、上を目指すなら何処かきちんとしたところで修業した方がいいぞ」

「ハイ。ソウシマス」

「で、獲物はそれ(戦槌)でいいんじゃな?」

「そうだな、ちょっと注文があるけど、いいかい?」

「ほう、聞こうか」

「まずこれ、片手遣いだと思うんだけど、柄をもうちっと伸ばして両手でも使えるようにしてほしいんだ。それと、この先っぽの所に10セメトほどの切っ先というか穂先をつけてほしい」

「ふむ、柄を伸ばして穂先をつける。十字型にするつもりか?」

「うん。あともうちょっと重い方がいい」

「そこまでの注文だと一から作ることになるな。どれ、重さの見本を持ってきてやる」

 ゼワンゴ親方はそういって店の中に戻ると、3本ほどの鉄の棒を持って戻ってきた。

「片手と両手両方で使うとなると、柄の長さは90セメトくらいでいいじゃろう。今の槌頭がこんくらいの重さじゃから、これを少し大きくして穂先をつけるとなると……このくらいの重さじゃな」

 ゼワンゴ親方がそういって、鉄の棒の先に重しをつけていく。

 それを持ち上げて振り回し、動きを見てもらって再調整する。そんな作業を3回ほど繰り返し、ちょうどいい重さが来まった。

「ふむ、まぁこんなもんじゃろ」

 ゼワンゴ親方は納得したのか、鉄棒と重しを片付けにかかる。

「注文は承った。4日後にはできとると思うから、それ以降に取りにこい」

「わかった。ちなみにお代は?」

「まぁ注文分も含めて、きっかり金貨1枚にしておくわい」

「そりゃ助かる。この場で払っていいか?」

「構わんぞ」

「じゃあこれ、金貨1枚な」

「確かに」

 ゼワンゴか受け取った金貨をポケットに入れるのを見て、ふと気になったことを聞いてみた。

「そういやここは魔法の武器とかってのは扱ってないのかい?」

「あるぞ。じゃがおぬしにはまだ早い」

「いや、それは分かってる。まだ駆け出しにもなってねぇしな。ただ何となく聞いてみただけだ。ちなみに相場はいくらくらいなんだ?」

「簡易版の精霊鋼の武器ならワシらでも作れるが、それでも大白金貨数十数枚は貰っとる。古代文明期の魔法銀(ミスリル)ともなると天井知らずじゃ」

「そんなにすんのか」

 大白金貨数十枚ってことは、円にして数千万だぜ?普通の武器が10万そこそこだってのに。

 こりゃ魔法の武器は当分先……というか、手に入るんかな?

「ところでその精霊鋼ってのはなにもんだ?」

「地水火風闇光無の精霊力を強く宿した鋼でな、それぞれの精霊力が強い地域で作られる鋼なんじゃよ。宿した精霊力によって効果が異なる魔力のこもった武器になるんじゃ」

 そう前置きしたゼワンゴ親方の話によると、精霊鋼には以下の効果があるらしかった。


地精鋼……武器の重さをある程度変えられる

風精鋼……所有者の敏捷性を少し上げる

火精鋼……武器の威力を上げる

水精鋼……ある程度の清水を生み出す

闇精鋼……相手の精神に作用する、らしい。数が少なく噂話の領域

光精鋼……微弱な癒しの力を持ち、亡者に対して特に効果が高い

無精鋼……あらゆる属性を無効化する、らしい。これも数が少なく噂話の領域


 ちなみにレア度は

 地<水<<風=火<<<光<<闇<<<<無

 という感じになっており、地水火風あたりは鋼の在庫が少量ながらあるものの、光、闇、無に関しては材料持ち込みの受注生産になるらしかった。

 なお、在庫がある中では火精鋼で作った武器が人気らしいが、砂漠や荒野を旅する人間には水精鋼の武器も人気だとか。


「ほーん、色々あるんだな」

「あと、魔法の武器ではないが、銀を混ぜた武器ならまだ現実的に手に入れられるじゃろうな」

「銀を混ぜると何か違うのか?」

「鉄製の武器では効かん、亡者や一部の魔物にも攻撃が効くようになる。光精鋼と違って威力は上乗せされんが相場は鉄製の武器の10倍程度じゃし、銀を混ぜた武器を持っとる冒険者はそこそこ多いぞ」

「それでも10倍か……」

「まぁそれまでは、亡者……特に吸血鬼や幽霊の相手はせんことじゃな。と言ってもおぬしには魔法があるか」

「土と木の魔法が亡者にどこまで効くのか疑問だけど」

「それもそうじゃな。ま、目標の一つとして銀混じりの武器を狙ってみるのもいいじゃろう」

「武器防具を揃えたからってそれで終わりじゃないのね」

「強くなるためには金を惜しまんのが生き残るコツじゃ。心得ておけ」

「しゃーないな、頑張って依頼をこなすか」

「そうすることじゃな」

「あとここって、素材持ち込みで加工もしてもらえるのか?」

「できんことはないの。おぬしの場合、戦槌じゃから烏口に合う牙とかあれば変えてやるぞ。何か持っとるのか?」

「いや、今は持ってないが将来的に、な」

「竜の牙なんぞがあれば最高の烏口になるんじゃが、あれは魔法の触媒にもなるからのう。ま、面白いものが手に入ったらワシんとこへ持ってくれば何か考えてやるぞ」

「その時は頼もうか」

「そういや最後にもいっこ質問があるんだが」

「なんじゃ」

「予備の武器として刃物……具体的には鉈を買いたいんだが、どこの店がいい?こっちは出来合いで構わねーんだが」

「それなら6軒先の大型店がいいじゃろ。あそこは品ぞろえが豊富じゃからの。刃物なら大体あそこで手に入るぞ」

「わかった。行ってみる。いろいろとありがとう、勉強になったよ」

「なに、このくらいはお安い御用じゃ。言ったと思うが戦槌が出来上がるのは4日後じゃ。忘れるなよ」

「あいよ。じゃ、また」

 ゼワンゴ親方に手をひらひらとふって店を出た。


 その後、ゼワンゴ親方に教えてもらった店で、予備の武器の鉈を買った。

 鉈と言っても四角いものではなく、切っ先のついてるナイフみたいな剣鉈だ。

 これはあくまで予備&雑作業用なので、ドワンゴ・ゼワンゴ親方たちの店でやったような微調整はせず、店先に置いてある出来合いの物を買った。これが銀貨5枚。

 槍も扱ってるようなので、ついでに森の迷宮で拾った短槍と穂先も下取りに出せないかと尋ねてみたら下取りもやってるというので銀貨1枚と半銀貨6枚(総額¥1600相当)で引き取ってもらえた。

 なんの効果もない鉄の槍だから、この値段は仕方ないそうだ。

 むぅ、金貨が古代文明期のものと知って槍の方もちみっと期待してたのだが、そこまで世の中甘くはなかったらしい。


 うむ、これで武器防具は一通り注文し終えたな。

 時間もいい頃合いだし、そろそろ屋敷に帰るか。

 しかし物を買いに来て所持金が増えるとは思わなかった。

 ……家具類の支払いを前倒し……いや、その前に露出の多いユニの服を新調だな。

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