1・遭遇
雨上がりに山の中を散歩をしていた。
すると白い毬のような物が、地面に転がっていた。
大きさはハンドボールぐらいはあるだろうか。
筆者はそれを何気なく蹴った。左足の爪先で。
すると、その瞬間だった。
もふぉっ……。
そんな感触がした。
明らかにゴムや布製の毬などではない。
爪先から伝わる感触は正直、かなり気持ち悪かった。
更に不気味なのは、ゴルフボール大の同じ材質の球体が近くに落っこちていた事だ。
この大きな球体と小さな球体。いったい何なのだろうか。
初めは人工物かと思ったが、まるで親子のようなその二つの球体を見るに、自然物であるような気もしてくる。
しかし、筆者の脳内を検索しても、それらに該当とする名詞は出てこない。
何かの木の実……何かの卵か……粘菌の塊……何らかの体液や排泄物が何らかの現象で固まった何らか……。
様々な可能性が頭を巡る。
拾ってみる。
手触りは湿ったスポンジ。いや……なんか竹輪かはんぺんみたいな練り物に近い。
匂いは無臭。というか泥の匂いしかしない。
余談であるが筆者は大変に鼻がいい。これはあまり他人に自慢したことがなかったので親族すらしらない事なのだが。
どれだけ鼻がいいかというと、二階の部屋にいる時、扉をしめ切っているにも関わらず、キッチンで誰かがグレープフルーツを食べているのが匂いで解る程度に鼻がいい。
ちなみに水の呼吸も得意である(嘘である)
さて、話は戻るが、この物体X、スポンジほどの弾力もなく指を突き立てると簡単に穴が空く。
今度は穴に鼻を近づけてみる。すると、泥の匂いに混ざってほんの微かにキノコの香りがする。
キノコ!
しかし、にわかには信じがたい。
だって、もう一度言うがハンドボールぐらいある。
これがキノコならば、人生において実際に見たキノコの中で最大の大きさとなる。
筆者はさっそくお手元の端末で検索する。
ちなみに検索ワードは『白いボール キノコ でかい』
すると、あっさりとその正体が判明した。
それは……。
オニフスベ(鬼燻、鬼瘤、学名:Calvatia nipponica)はハラタケ科のキノコ。「フスベ(贅)」とはこぶ・いぼを意味する。別名:薮玉、他にヤブタマゴ、キツネノヘダマ、テングノヘダマ、ホコリダケなど。江戸時代は、他のホコリタケ類とあわせ馬勃とも呼ばれた。
(Wikipediaから引用)
鬼燻……。
なんかカッコいい。
それはさておき、このキノコ、一晩でいきなりバカでかくなるらしい。
物によっては本当にバレーボール大になるのだそうだ。
そして、後に皮がずるむけて中から胞子塊がむき出しになり、酷い臭いをはっするようになるらしい。
しかしまだ早いうちならば、はんぺんに似た食感で美味くも不味くもないのだという(どっちなんだ)
これは食べるしかない。
……という訳でオニフスベを食ってみた。
次回へ続く!