表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚弱少女戦士  作者: yucury
9/21

9話 試験

夏が終わり、秋に入った。

その日も、アリスの部屋でユウコは家庭教師として、アリスに指導をしていた。

授業の前半が終わって、休憩の時間となり、アリスはふぅーと息をつき、リラックスした表情になった。

ユウコはアリスが落ち着いたのを見て、先生から聞いた話をすることにした。


「アリスさん、今日先生から聞いたんですが、アリスさんの成績がクラスで一番だったと聞きました。」

「まぁね。」ふふんと、満足そうにアリスは言った。

「それって、もしかして私の授業のおかげですか?」

「ううん。関係ないかな。」悪戯っぽい表情をしてアリスは言う。

「えっ!関係ないんですか!?」

「さぁ、どうかしら。」

ユウコは、先生からはユウコのおかげでと聞いていたし、自身の指導に手応えを感じていたため、

アリスに関係ないと言われ、内心がっくりした。


「ところで、あんたも、最近実務訓練でいい感じらしいじゃん」

ユウコは顔を上げて、アリスを見ると、アリスは笑みを浮かべている。

「はい。最近なんとか上位に食い込めるようになってきました。」

「それって私との訓練のおかげ?」

「もちろんです。アリスさんには感謝しています。」

「ふふ。そうでしょ。」

アリスは満足そうな顔を浮かべる。

「ユウコはさ。えらいよ。」

そう言うとアリスはユウコの頭を撫でる。

ユウコはアリスに頭を撫でられ、照れ臭かったが、褒められ、心が浮き足立った。


「それに私は最近なんか元気です。寮の食事はおいしいし、自分で料理作って食べたり、実務訓練もできるようになって」

「ふふ。元気ならいいじゃん。」

アリスの顔をやさしく、ユウコは元気付けられた。

ユウコは前から決めていたことをアリスに伝えることを決めた。


そして、後半の授業が終った。

息をついているアリスに、ユウコは向き合う。


「アリスさん、突然ですみません。

今日先生と話したんですが、アリスさんに伝えないといけないことがあるんです。」

アリスは普段と違うユウコの雰囲気を察したようで、表情がこわばる。

「私は来年に戦士大学入学を目指しているんです。それで審査の準備を進めないといけないんです。」

「え?飛び級するの?」

「はい。元からそうしたいと思ってたんです。家のこともあって早く卒業して働きたかったんで。」


「何よ。私には相談しないで勝手に決めて。」

アリスの表情は曇って、声には苛立っていることが伝わった。

「私には何も言わないで。」

「アリスさん、違うんです。これはアリスさんに会う前から決めていたことなんです。」

「それならなおさら、話しなさい。」

「すみません。」

ユウコはアリスにきつく言われ、落ち込む。

「アリスさんには伝えるべきでした。」


「あんたにとって、私はただの生徒なの?」

「え?」

ユウコはアリスを見ると、泣きそうになっているようだった

「私のことたいしてなんとも思ってないから、教えてくれないの?」

「それは違います。アリスさんは私にとって、大切な人なんです。」

「何それ。」

ユウコの言葉に、アリスは素っ気なく返すがそれは照れ隠しのように見えた。


「それで試験があるってだけじゃないんでしょ?」

「あ、はい。試験に向けて準備しないといけないで、しばらく家庭教師は休ませてもらおうと思ってるんです。」

「……。わかったわ。」

アリスは少し悲しそうに言った。


ユウコは帰宅するために、アリスの部屋を出る。

「試験がんばりなさいよ。」

アリスはユウコに励ましの言葉をかける。


そして、ユウコは準備期間を経て、冬に入る前に飛び級審査を受けることになった。

先生や戦士大学の先生から推薦され、ユウコ自身も自信があった。

学力テストに関しては全問解答でき、苦手な実務テストに関しても、完璧でなかったが、ユウコは手応えを感じていた。


テストを終えると、ユウコはすぐにアリスの部屋に報告に向かった。

「学力テストは問題ないと思うんですが、実務側が心配なんです。」

「ふーん。あんたの実力が出せたなら、心配しなくていいわ」

アリスはユウコにそう言った。ユウコは元気付けられた。


試験の結果は一月経たずに公開された。

学力テストは満点、苦手としていた実務テストに関しても最優秀の点数で、問題なく合格していた。

ユウコは目標としていた戦士大学に入学が決まったのだった。


決まり次第、ユウコは急いでアリスの部屋に向かう。

アリスの部屋の前で息を落ち着けてから、ノックして部屋に入る。

「無事に合格しました!」

「あっそ」アリスは興味なさそうに素っ気なく返す。

「そっけないですよー。」

「不合格になるあんたが思い浮かばなかったから。」

「えっ!?それって褒めてくれるんですか?」

「うるさい。」

アリスは顔を少し赤くして言った。


ユウコは合格を報告して、ユウコに褒めてもらいたかったが、

褒めてもらえず、しょぼんとして、アリスの部屋を出た。

出てから、廊下を少し進むと背後で気配がし、次に背中に暖かな衝撃を感じた。

「合格おめでとうっ」アリスはユウコに抱きついたのだった。

「アリスさん?」ユウコはアリスに今日に抱きつかれ、驚く。心臓が飛び跳ねるようだった。

「あんたはやっぱりすごいよ。頭もいいし、体も強くなって。」

「……。ありがとうございます。」

「それと、恥ずかしいけど。いつもありがとう。これからも勉強教えてよね。」

「……。はい、もちろんです。」

ユウコは答えた。ユウコは振り返り、アリスを抱きしめたいという衝動に駆られていたが、体が動かなかった。

ドキドキが止まらないのだ。

「それだけ。じゃあまた明日ね。」アリスはそういうと自室に戻っていった。


ユウコは落ち着くまで、廊下にひとり立っていた。

「一体何が」

ユウコはアリスに抱きつかれ、褒められたときに、心臓の高鳴りと心が締め付けられるようだった。

この気持ちは何なんだ。ユウコは思った。

何なんだ一体、まるで、まるで。……。

ユウコは自身の気持ちに気づいた。ユウコはアリスのことを愛していたのだった。

だからこそ、アリスにいつも心動かされるのだった。


そして、ユウコはアリスといる時間が何より大切だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ