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虚弱少女戦士  作者: yucury
8/21

8話 光

ユウコとアリスはともに戦士になるために実務訓練を始め、毎日のように続けていた。

訓練ではアリスがユウコを教えることが多かったが、訓練の後はユウコはアリスの家庭教師として座学の指導を続けていた。

特訓成果で、気づけばアリスは力をつけ、学年でトップクラスの実力を持つようになっていた。


アリスだけではなく、ユウコも万年最下位だった走り込みではクラスの真ん中くらい位置するようになり、格闘訓練にも取り組めるようになっていた。

そして、ユウコは体が強くなっていっただけでなく、身長が伸び、体重も増え、アリスから見ても雰囲気が変わっているように見えた。

アリスも身長が伸びていたが、ユウコはそれ以上の伸びで、まるで中学生の頃までの成長力が今になって現れたかのようだった。


ユウコの雰囲気が変わってきたと言う話は、アリスのクラスにも広まっていた。

最初のうちは授業中に一人グラウンドを走っている変わった生徒がいるという噂だったのが、

徐々に内容が変わり、虚弱な首席が戦士を目指して体を鍛えているという話になっていた。


アリスはその日、放課後、トレーニング室に向かおうとすると、同じクラスのエリスが近づいてきた。

「アリスさん、またユウコさんのところに行かれるの?」

「そうだけど。」

「ユウコさんの様子が変って噂があるのだけど、本当なのかしら?」

「ユウコのことは、噂の通りよ。戦士目指していて、訓練してるの。」


「何でもアリスさんも時々一緒に訓練してるって。」

「そうよ。」

「最近アリスさんの実務訓練の成績が高いと思ってたのですけど、その成果でしたのね。」

「まぁそうなるわね。」

アリスはそういうとエリスの横を横切ろうとする。

「ところで、知ってます?最近ユウコさんのファンクラブができたって。」

「なんですって?」

アリスは初耳の話にエリスのほうに振り返った。


エリスはユウコのファンクラブの話をしてくれた。

何でも、ユウコには元から図書館で出くわすとその日幸運になると言う話があったようだ。

それで、何人かの生徒はユウコを見に図書室に行くことがあったらしい。

ところが、最近ユウコ自身は体を鍛えることで、虚弱だったところがなくなっていき、

顔つきには健康的になってきて、徐々に精悍な顔つきになってきたようだ。

そこに噂していた生徒たちが気づき、魅力を感じたようで、ファンクラブが結成されたと言う話だった。

「ユウコにそんな魅力なんかないわよ。」

「そうかしら、私も最近廊下ですれ違いましたが、魅力的な顔つきをされていましたわ。」エリスはそう言った。


エリスと別れ、アリスはトレーニング室に向かう。

廊下を歩きながら、アリスはいつもの腑抜けたユウコの顔を思い浮かべる。

「あのユウコがまさかね。」


アリスがトレーニング室に着くと、ユウコはトレーニング中だった。

離れた位置でユウコの姿を見ていると、確かに以前に比べて、健康的なようだった。

体はまだ細くはあったが、締まっているようにも見え、顔つきや目には鋭さがあるように見えた。

「いやいやユウコはユウコよ。」アリスは一人つぶやいた。


「ユウコ。」

アリスはユウコに近づくと声を掛ける。

「あ、アリスさん、こんにちは。」

ユウコはふにゃっとした笑みを浮かべる。

「あんた、最近調子乗ってるんじゃない?」

「いきなりですね。」

「何でもファンクラブができたって聞いたんだけど。」

アリスは興味ないふりをしながら、ユウコに聞く。


「えっ、そうなんですか? 確かにこの前走っている時に、応援されちゃいましたよ。」

照れたような顔でユウコは笑う。アリスは気に食わなかった。

「ふーん。そうなんだ。」

「アリスさんと同じ中等部の子だったと思うんですが、図書館で何度かあったことあるみたいなんですが、

頑張ってくださいって言われちゃったんです。」

「ちやほやされて楽しい?」

「回答に困りますが、正直に言うと応援されるのは嬉しいです。」ユウコはそういうとさらに照れた顔をした。

「あんたのそういうとこ嫌い。」

「えっ、アリスさん?」

「ふんっ」

アリスはなぜかユウコが周りから認められ、好かれていくことに憤りを感じていた。


「でも、実際はアリスさんこそモテるじゃないですか。」

ユウコはこれ以上この話はまずいと思ったのか、アリスの話を持ち出した。

「モテてない。」

「アリスさんかわいいですし、いつもチヤホヤされていて、人気者って感じがしますよ。偉いって雰囲気が出てますし。」


アリスはユウコの褒め言葉にまんざらではなかったが、話をそらされたことに苛立ちを覚えていた。

「それは、父の威光のおかげでチヤホヤされてんの。」

「そんなことないですよ。アリスさんは運動神経も良くて、いつも一際華がありますよ。」

ユウコはアリスを見て、笑みを浮かべながら話す。しかし、ユウコの笑みがアリスをさらに苛立たせた。

「さらに、最近アリスさんは私のクラスでも有名ですよ。中等部にすごい子がいるって。」

「うるさい。」

アリスはユウコの話を遮った。


「あんたねぇ。そんな風に誰にでもいい顔してると、本当に大切な人は離れていくからね。」

「それは困ります。」

「でしょ。」

ユウコはそういうと少し考えるようにうつむき、アリスと目を合わせた。

「アリスさんは私の光だから、離れていかれると困ります。」

「……。は? 私が光?」アリスは想定外なユウコの言葉に虚を突かれた。

「はい、アリスさんはいつも、私を照らしてくれて、私に元気を与えてくれます。」

何より、私の進むべき道を照らしてくれました。」

「……。意味わかんないこと言わない。」

「確かに変なことを言ってているかもしれませんが、私にとってアリスさんは光なんです。」

ユウコはアリスをじっと見つめる。

「ふん。」

そういうと、アリスはユウコから離れた。


アリスはユウコと離れた場所でトレーニングをしながら、ユウコと会話した内容を思い返していた。

「私が光ねぇ」

アリスはぽつりと呟いた。

振り返ってユウコの姿をちらりとみる。

ユウコトレーニングを頑張っていた。額に汗をし、一心不乱といった感じだった。


「あんたこそ、私の進むべき道を示してくれたから、私にとっては光なのに。」

アリスは、ユウコこそアリスに多くを教えてくれた存在であることを本当は感謝していた。

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