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虚弱少女戦士  作者: yucury
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3話 英雄の娘

アリスは小さい頃から恵まれた生活をおくっていた。

生まれたときには既に、父親は町の英雄で、戦士学校の理事長を務めていて、

アリスも当然のように同初等部に進学した。

アリスは父親の立場に関係なく礼節をわきまえていたところを尊敬していた。


しかし、中等部に入る前から状況は変わっていった。

アリスの父には叶えなければならないことがあったが、アリスはそのための訓練に耐えれなかったのだ。

そして、父親のアリスに対しての扱いが変わっていった。

アリスは、家にいると億劫で、父親と会うことが苦痛になっていき、

結果として、アリスは中等部から寮に入ることになった。


中等部一年になって始めは真面目に授業に参加していた。

新しい環境で刺激はあり、友達もできていた。

しかし、徐々に授業は退屈と感じ始め、出席する気にはなれなくなっていった。

そして、何もする気が起きなくなっていった。

このまま卒業したとしても、アリスは自身に未来はないように思っていった。


あの日、スライムに襲われているユウコを見つけたのは、偶然だった。

アリスはよく池の周りを散歩するのが好きで、その日もいつものように歩いていた。

普段なら人がいても気にしないのだが、そのときは襲われていたため、さすがに危ないと思い、ユウコを助けることになった。

しかし、アリスは他人にも興味が持てなくなっていたため、ユウコのことはほとんど覚えてはいなかった。


先生は他の生徒ならともかく、英雄で理事長であるアリスの父のことを恐れていてた。

アリスの父にアリスの状況が知れると、評価が下がることは間違いなかったので、ひた隠しにしていた。

そしてアリスに個別指導を進めようとしていたが、アリスはどれもブッチしていた。


放課後にアリスは先生に呼び止められた。

次は先生ではなく、高等部の生徒を家庭教師につける、ということだった。

「家庭教師に高等部の女?首席だかなんだか知らないけど絶対いや。」

「体はあんまり強くない子なんだけど、学年一どころか高等部で一番優秀の生徒なの。」

「そいつ、なんていうの?」

「ユウコさんって言うのだけど。」

「ユウコ?」

なんか聞いたことあるな、とアリスは思ったが、記憶には残っていなかった。

「絶対いや。」

「でも会うだけ、会うだけね?」

「いや。」

「……。そこまで言われるなら、我々も観念して、あなたのお父様にあなたの授業態度や成績を伝えなければなりません。」

「くっ。」

アリスは口ごもる。父に今の状況が伝わると家に連れ戻される可能性があったからだ。

「わかったわよ。会うだけよ。」


アリスは学校内の応接室に着くと、図書室で見かけたうだつがあがらなさそうな女がそこにいた。

顔は青白く体は細く、とても戦士になれるような感じではなかった。

「こんにちは。またお会いましたね。」ユウコはアリスに声を掛ける。

アリスは絶句した。まさかこいつがユウコで、学年首席だとは思っていなかったからだ。

「またあんたなの。」

「はい、ユウコです。アリスさんよろしくお願いします。」

「あんたとよろしくするつもりはないわ。」

「そんなこと言わないで。二人仲良くしてね。」先生がそうとりなすも、アリスはそっぽを向いたままだ。


「アリスさん、それなら一つ、学ぶことの良さを知ってみませんか?」

ユウコはその外見とは異なり、落ち着いた声で堂々とアリスに話す。

「は?」

「一緒に外の草原に来てもらえませんか?」

「何よ。あんたまたスライムに襲われるわよ。」

「そこで学習の重要性を見せたいと思います。」


アリスは渋々といった顔をしながら、ユウコについていくことになった。

アリスは内心は興味があった。今までユウコのように学ぶことの良さを伝えようとした人がいなかったからだ。

しかも、行き先が最初に二人が遭遇した場所となると何を見せてもらえるか好奇心が湧いた。


草原に着くとユウコは、以前襲われた原因となった花を手に取り上空でぐるぐる回し出した。

「あんたそんなことしてると、風が吹いているからスライムが近寄ってくるわよ。」

「まぁ見ててください。」ユウコはそのまま花を回し続ける。


ガサガサと音がして、三体のスライムが現れた。

するとユウコはカバンから何か怪しい液体を出し、それをスライムの方に振りかけた。

スライムはその液体に一度近づいたと思うと、即座に引き返し、逃げるように森の中に消えていった。

ユウコはスライムをあっさり退けたのだ。


「あんた何したの?」

「この液体はスライムが苦手な魔物の匂いなんです。」

ユウコはニッコリと笑い、アリスに向かって話す。

「私は以前、草原でスライムから、アリスさんに助けてもらいました。

その経験から、スライムはあの花の匂いが好きであることを知りました。

私はさらに詳しく知りたくなって図書館で、魔物の書を読み漁ったんです。」

「あんた、図書室で確かに読んでたわね。」

「はい。あのときなんです。本の中でスライムが嫌いなのはスライムを食べる魔物の匂いであることがわかりました。

それで、同じような匂いを作るのは、薬草学の書に記載あったので、簡単に作ることができました。」

「そんなことしてたんだ。」

「学ぶとでできることが増えるんです。今までできなかったことができるようになるんです。

 私はスライムに倒されましたが、今は追い払うことができるようになりました。」

ユウコはアリスを見つめる。アリスは心が動かされていた。


「アリスさんにも叶えたいことがあるはず。それをするためには学ばないといけません。

私にお手伝いさせてください。」

アリスは自分のしたいことを考えた。それは今はないように見えた。

でも、ユウコの言葉から、自分にも夢がつかめるのかもと思い始めた。

アリスはユウコを認めるしかなかった。

「あんたはほんとなんなのよ。」

アリスはそうぼそりと呟き、振り返る。

「わかったわ。あなたを家庭教師として認めるわ。」

アリスは初めて誰かが自身の家庭教師になることを認めた。

そして、アリスは、自身の叶えたいこと、未来について興味が湧いてくることを感じた。

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