21話 旅立ち
魔王が消え去ってから一週間経つと、町は復興に向けて動き始めていた。
ユウコは魔王との戦いで、恐ろしく疲弊していたが、アリスの数日に渡る
つきっきりの看護のおかげで、今では後遺症もなく健康体そのものだった。
その日、ユウコとアリスは二人手をつなぎながら、町の状況を見て回っていた。
町を回ると町の人々の顔には笑みが広がっていて、町を立て直すことに活気を帯びていた。
そして、二人は戦士大学に着いた。魔王に壊された校舎からは瓦礫が撤去されようとしていて、
新しい建築計画が練られているようだった。
見て回っていると、アリスの父親が二人に近づいてくる。
「ユウコさん、ここにいらしたんですね。今ちょうど、校舎内にユウコさんの銅像を建てる話をしていて。」
「お断りします。」
「やはり断られますか。」アリスの父親は笑いながら言う。
「みんなで魔王を倒したんです。その代わりに、討伐隊のメンバーの名前を刻んだ碑を設置した方がいいと思います。
犠牲になった戦士達に敬意を払って。」
「なるほど。その通りですね。」
アリスとユウコは、町を回っていて、悲しそうな表情をしている人たちがいることに気がついていた。
それは魔王との戦いで犠牲になった戦士の家族や恋人だった。
「あとはアリスさんの名前も。」ユウコはアリスの父親に伝える。
「私の?」アリスは不思議そうな顔をしてユウコを見る。
「えぇ。アリスさんの最後の策略のおかげで、魔王は倒せたんですから。
それに、それだけじゃなくてもアリスさんが救った人がいるんですから。」
ユウコは、そう言うと学内を見回す。校舎など建物は崩れていたが、多くの生徒達はいて、がれきの撤去作業をしていた。
そこには、アリスを助けようとして、結果としてアリスが助けたメグミもいた。
「私でも、少しは役に立てたかな。」アリスは照れくさそうな顔でユウコを見て、聞いてくる。
「もちろんです。アリスさんがいたから、この町や人々は救われたんです。」
ユウコはアリスにそう答えると、アリスは満足そうに笑みを浮かべた。
その同日に、魔王討伐の祝勝会が挙げられることになっていた。
アリスの家にはロビーには収まりくらないくらいの戦士隊のメンバーや町の住人達や学生が集まったので、庭や食堂など至る所が開放されていた。
会が始まると参加した人々は大いに喜び、祝杯をあげた。
皆は楽しそうに互いの功績を称えあい、町の今後について語り合っていた。
そんな中、アリスとユウコは常に二人一緒にいた。
二人とも離れたくなかったからだが、この祝勝会でしなければならないことがあったからだった。
二人はアリスの父親の元に向かった。
アリスの父親は大テーブルで戦士隊に囲われていたが、二人が近寄ると戦士隊は席を譲り、
ユウコとアリスは、アリスの父親と向かい合った。
「理事長、魔王討伐を果たしたときの約束の話で来ました。」
ユウコはそう切り出すとアリスの父親の顔に大きな笑みが浮かぶ。
「ふ、その話ですか。」
「アリスさんの婚約の話はなくなったということでいいですか。」
「えぇ。私が今後、アリスを束縛することはないです。」
アリスはホッとした表情をする。
しかし、ユウコの顔にはまだ笑みはなく、アリスの父親を見ている。
「では、次にアリスさんと私のお付き合いを認めてください。」
アリスやアリスの父を含め一同はユウコの発言に驚く。
「はは。仮に認めなくても二人は気にされないでしょう。」アリスの父親は笑いながら言った。
「いいえ。私はアリスさんとお父様の関係が悪いままではいけないと思っています。」
「ユウコさんは本当にしっかりしている。」
そうアリスの父親は言うとアリスの方を向く。
「アリスも、ユウコさんと、これからもずっとお付き合いしていきたいんだよね。」
「うん。私もユウコと一緒にいたい。ユウコを愛しているから。」
アリスが頬を赤くし、照れながらそう答えると、周りから黄色い声が上がる。
「そうか。アリスは自分で運命の相手を見つけることができたんだね。」
アリスの父親はそう答え、真剣な眼差しでユウコの方を見る。
「ユウコさん、アリスをよろしくお願いします。」
アリスの父親は頭を下げる。
「アリスさんを必ず幸せにします。」
そう言うと、ユウコも頭を下げた。
アリスとユウコの関係は、アリスの父親にも認められたのであった。
三人はその後も同じテーブル話し合った。
「ユウコさん、あなたはあなたのお父上以上に立派に育たれました。」
「ユウコさんほど優秀な人は見たことがない」
など、アリスの父親は、ユウコとアリスが飽き飽きするくらいまで、ユウコを褒め続けた。
「ただ、二人は今は学生なので、お付き合いは認めても、結婚までは許しませんからね。」
ユウコが褒められすぎて気疲れしていることに気がつくと、アリスの父親は冗談めいて言い、去っていった。
ユウコはその姿を見送り、アリスと目を合わせる。
目を合わせていると、アリスの顔は火照っていき、パーティーの衣装と合わせて、今までで一番美しいように見えた。
気づけば、ユウコはアリスを抱きかかえ、ユウコはアリスにキスをした。
アリスもお返しとばかりに、ユウコにキスを返す。
周りからは「キマシー」と叫び声が上がっていた。そして、それはその日一番の盛り上がりとなった。
祝勝会が終わると、人々は各々の家に帰っていった。
ユウコはアリスの隣の部屋を借りることになっていたが、アリスの部屋に泊まることになった。
アリスとユウコは片時も離れたくなかった。
アリスのベッドの上で二人は横になり、お互いを見つめ合う。
「ユウコは、このあとどうするの?」
「私はアリスさんと一緒にいられたら、それだけでいいんです。」
「私も、ユウコと一緒にずっといたい。」
「アリスさん……。アリス、愛しています。」
「ユウコ、私も愛してる。」
二人はお互いを強く抱きしめ、熱い口づけを交わす。
その夜、二人は結ばれた。
そして、月日が流れ、春が来た。
学校の校舎は立て直し中であったが、授業はできるようになっていた。
学内には、新たな生徒が入学し、新たな息吹がもたらされていた。
ユウコとアリス、そして二人の親族一同は港にいた。
「本当にこの町から出られるんですね。」
アリスの父親が言った。
「はい、この世界は広いです。私とアリスで、外の世界を見に行き、この町をより発展できるようにしたいんです。」
「わかりました。ユウコさん、これを受け取ってください。」
それは大学の卒業証書と報奨金だった。報奨金は多く、世界を見て回るくらいはあった。
「ありがとうございます。」
ユウコはアリスの父親に頭を下げた。
「この町はアリスとユウコさんのホームタウンです。またいつでも帰ってきてください。」
アリスの父親はそう言った。
アリスとユウコは一同にお辞儀すると、船に乗り込んだ。
アリスとユウコが船に乗り込むと、船は出航した。
二人は甲板から港にいる人々に手を振る。
そして港から離れると、二人は今後のことについて話し合った。
ユウコとアリスは夢であった外の世界を回ることになったのだ。
外の世界を回る中で、いろいろな出会いや冒険があったが、
二人はずっと幸せに仲良く暮らしましたとさ。
終わり
なんとか書き終えられました!
ここまで長編作成が大変とは思ってませんでした、、。
五万字には壁がある気がしました、、
ですが、入れたい話は一応なんとか入れ込んだはずです、、。
誰も死なないようにしたかったのに、気のせいか犠牲者がでてしまったのは悲しい、、
それでも、可能な限り要素要素を入れこめれたと思っているので、楽しんで頂けていたら幸いです、、