20話 戦闘
ユウコと魔王は倒壊した学園前で、対峙している。
ユウコは無表情を保っていたが、内心は焦っていた。
手持ちの便利道具は切れており、最初の一刀ですべてを決めるつもりだったのが、躱されてしまったからだった。
幸いにも魔王の片腕を裂くことはできていたが、それでもユウコは魔王に敵わないことがわかっていた。
「お前一人で私に勝つつもりか?」
魔王は威圧を感じさせるようにユウコに言う。
ユウコはじっと魔王の様子を伺う。
「傷を負ったとはいえ、小娘一人にやられはしない。」
魔王は正面からでは隙を感じさせず、ユウコは攻撃できない。
しかし、魔王に先手を取られると、弱者であるユウコは不利であり、
下手をするとアリスに危険が及んでしまうかもしれなかった。
町の人々と何よりもアリスを守るためにもユウコは戦うしかなかった。
ユウコは可能な限りチャンスを掴むため、先手を取り魔王に飛び込んだ。
「命知らずが。」魔王はユウコが向かってするのを予期していたかのように
遠隔から光弾を放出し、ユウコを近づけない。
こうなると決め手となる遠隔攻撃を持っていないユウコには不利だった。
光弾をユウコはかろうじて避けるが、徐々に体力が奪われ、攻撃が擦ることが増えいった。
そして、徐々に体にダメージが蓄積していく。
それでもユウコが後ろに下がることはなかった。チャンスは絶対にあり、絶対に引かないとユウコは決めていた。
すると魔王に向かって矢が飛ぶ音がした。
矢は魔王に当たると砕け散り、ダメージは微かにしか与えられないようだったが、
魔王の顔は曇ったようだった。
「ウォー」という声がして、何人かの戦士達が魔王の元に走り出していた。
ユウコの奮闘ぶりに、怯えて逃げ隠れしていた戦士達が奮起し、魔王に立ち向かっていったのだ。
その姿を見て、他の戦士達も奮起し、加勢は徐々に増え、魔王への攻撃が増していった。
そして、魔王の背後に大量の矢が打ち込められる。
「くそ、人間どもが。」魔王が悔しそうな顔をする。
魔王もダメージ蓄積が増えたようで、宙に飛び上がり、空から光弾を放出し続ける。
それに対して、戦士達はお互いに当たらないように気をつけながら、弓で応戦する。
ユウコも、トドメの弓矢を準備する。矢の数は一本だけで、外すわけにはいかなかった。
魔王は光弾を打って、戦士達を吹き飛ばすが、戦士達は何度立ち上がり、
弓矢を打ち続けていた。
「ユウコ」
声をかけられ、後ろを振り返るとそこにはアリスが近づいていた。
「アリスさん、ここに近づいては危険です。下がっていてください。」
ユウコは驚き、声をかける。
「でも、今は魔王が降りてこないんなじゃ、どうしようもないんじゃない?」
「それはそうですけど。」
「私に策があるの。」
アリスはユウコの目をじっと見た。ユウコはアリスの中の決意を感じた。
アリスは戦士達やユウコから離れたところに行くと、アリスは魔王に手を振る。
「魔王よ、私が生贄になる。だから、この戦いは終わりにしましょう。」
アリスは大きな声で魔王に声をかける。
魔王はその姿を見て、考えているようで、光弾の放出が止まった。
戦士達も弓矢を打つとアリスに当たる可能性があり、打つに打てないでいた。
ユウコはいつでも走り出せるように準備し、弓を持つ手に力を込める。
すると魔王は宙から急降下し、手を広げた。
その姿を見て、ユウコは勝機をつかんだ。
ユウコは魔王に向かって走り出し、魔王討伐様の剣を矢にして、弓を放つ。
剣はまっすぐに魔王の方に飛び、魔王の横腹に突き刺さった。
魔王は衝撃を感じると、すぐに上昇し、自らの体を見る。
見ると剣が刺さり、そこから体が融解していることに気づいた。
「ぐぐぐ。まさかここまでの戦士がこの町にいたとは、、」
魔王はそれ以上飛ぶことができなかった。降下し、最後は地面に墜落した。
ユウコはすぐに駆け寄り、人を周りから離し、魔王の周りに火をくべる。
炎は燃え盛り、灰だけが最後に残った。
町の人々は魔王が消える姿を見て、大きな歓声を上げる。
この町は魔王から本当に解放されたのだった。
その中で、ユウコは崩れ落ちるような形で地面に座り込む。
顔は呆然としていて、疲れが見えていた。
「ユウコ」
アリスはユウコに走り寄り、抱きついた。
「ありがとう。ユウコのこと信じてたよ。」
ユウコはアリスの言葉を聞き、アリスにやさしく抱きつかれたまま、そのまま後ろに倒れこんだ。
「ユウコ!?」
ユウコは幸せそうな笑みを浮かべながら、眠ったように意識を失っていた。