2話 学校
ユウコの通う戦士高校は、保育園から大学まである一貫校で、魔王を封じ込めた戦士が理事長を務めていた。
戦士を育てることを目的として創設されていたため、格闘訓練から薬草学など多種多様な授業があった。
ユウコ自身は単純に奨学金が出るから、この学校に入学せざる得なかったが、
周りは文武両道の生徒が多く、ユウコのような文のみの生徒は珍しかった。
そんなユウコであったが、学校に入ってすぐに、座学の授業で学ぶことはほとんどないことがわかった。
すでに学んでいたり、少し時間かければ把握できるような内容ばかりだったからだった。
そして、三ヶ月経った今となっては、ユウコは学内一頭が良いと噂されれるようになっていた。
教師陣もユウコのことを認めていて、二年、三年の授業に出てもいいし、授業に出なくていいことになっていた。
ユウコはお言葉に甘えてと、興味がない授業になると図書館などで自学に励んでいた。
その日もユウコは図書館にいて、先日スライムに襲われたことから、今まで手をつけていなかった薬草学や魔物学の書物を読みふけっていた。
「あら?あんたなんでここにいるの?」
「あ、アリスさん。」ユウコが顔を上げるとそこにはアリスがいた。
「アリスさんも同じ学校だったんですね。先日はありがとうございました。」
ユウコは急にアリスが現れたので驚いたが、礼儀良くお辞儀する。
「あんたはここで何してるの?」アリスはぶっきらぼうにユウコに尋ねる。
「今、薬草学とか魔物学の本を読んでて」
「それは見ればわかるわ。あなたもこの学校の生徒だったの?その格好だと本当に高等部だったのね。」
「はい。今年に高等部に入学しました。」
「ふーん。ここはこの町一番の学校で簡単には入れないはずだし、学費も高いんだけど。あなたみたいな人でも入れたのね。」
ユウコはアリスに冷たく言い放たれ、心が苦しくなった。
「まぁいいわ。授業中なのにこんなところにいて、不良みたいね。よくわからないんでしょうけど、授業くらい受けなさい。」
アリスはそう言い捨てると図書室を出て行った。
ユウコはアリスに憧れていたこともあり、きつく言われ、図書室でしばらく落ち込んだ。
「ユウコさん、」
ユウコが帰宅しようとしていると、担任の先生に声をかけられた。
「あのね、ユウコさんに折り入ってお願いごとがあるんだけど、今いいかしら?」
「はい、何ですか?」
「家庭教師のアルバイトって興味ないかしら?」
「家庭教師のアルバイト?」ユウコは今まで家庭教師どころかアルバイトすらしたことがなかったので、イメージがつかなかった。
「引き受けてもらうまで、誰とは言えないのだけど、ある中等部の子の家庭教師になってくれる人を探しているの。
その子、授業には出ないし、テストも受けないしでひどいものなの。だから、先生が個別指導しようとしたんだけど、逃げられちゃってダメで。
私たちはもう手がなくなってしまって。」
「へぇ」ユウコは、そんな問題児がこの学校にいたんだ、と思った。
「今学期首席のユウコさんなら年も近いし、話しやすそうだから、家庭教師にぴったりだって話になったの。」
「でも私は家庭教師とか教えることをあまりしたことないんですけど。」
「それでもお願い。もし引き受けてくれたら、当然謝礼が出るわ。さらに寮の部屋も用意します。」
「謝礼ですか。」
ユウコは乗り気ではなかったが、家は貧しいので、謝礼が出ると言うなら、引き受けるしかなかった。
「それなら、引き受けます。」
「それは良かったわ。」先生は安堵の顔をする。
「で、どなたに教えることになるんですが?」
「中等部二年生のアリスさんって知ってる?お父さんがこの学校の理事長の。」
「ぜひ、やらせて頂きます。」
ユウコはアリスの父が誰かは興味がなかったが、アリスにまた会いたいと思っていた。
だから、ユウコはまたアリスに会える機会ができて嬉しかった。でも、なぜ嬉しい気持ちになるかはユウコにはわからなかった。