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虚弱少女戦士  作者: yucury
13/21

13話 駆け落ち

ユウコが学校に着くと、ディーオが理事長の娘であるアリスの婚約者になることが決まったという話が広まっていた。

アリスとディーオはまだ一回しかあっていないのに、しかもその一回も失敗したはずなのにと思っていたが、

理事長はディーオを信頼していて、アリスの気持ちとは関係なしに決まったようだった。


ユウコにはアリスを救い出すために一つ策があった。

そして、それを遂行することを決めた。


ユウコは家庭教師として、アリスの部屋に着くと、アリスに向かって伝える。

「アリスさん、私と一緒に外の世界に行きませんか?」

「行きたいけど、いつの話?」

「明日です。」

「明日!?一体どうしたの?」

「このままアリスさんが、勝手に決められた婚約を受け入れないといけなくなるのが耐えれないんです。」

「それは……。」

「今日に学校で噂になっていて、多分アリスさんにも近々聞こえてくると思います。

私はアリスさんを救いたいんです。」

「ユウコ、でもそんな急に明日に出るなんてそんな。」

アリスは迷っていた。


「明日、港に船が来ます。それに乗ってこの町から出ましょう。」

「私はこの町から出れない。」

「どうしてですか。」

「私はこの町が好きだし、外のことはよくわからないしいけないわ」

「でもここにいると君が自由になれないんです。」

「でも急すぎる。」


「正直に言います。私はアリスさんのためと言いながら、本当は自分のために外の世界に行きたいんです。

アリスさんがディーオと二人で歩いているところを見たときに胸が張り裂けそうな気持ちになりました。

私はアリスさんが他の人と結びついて、離れていくことか耐えれないんです。」

「ユウコ……。」

「それでも、救い出したくても、今の私には力がなくて、

ディーオやアリスさんのお父様からアリスさんを救い出すことができません。

だから、だから二人でこの町を出ましょう。」

「でも……。」

「私は外の世界でも働けるように外の世界の言葉はマスターしたんです。

学業も積んで。体も鍛えているので、外の世界で働いてお金を稼ぎます。

私を信じてください。」

「ユウコ……。」


「ユウコはいつも私の側にいてくれる?」

「はい、約束します。」

「冷たくしたり、無理強いしない?」

「もちろんです。私が今までアリスさんにそうしたことがありましたか。」

「ふふ。確かにそうね。むしろ私がいつもいつも、あんたに無理させていた気がする。」

アリスの顔には笑みが広がっていた。

「ユウコ、いつも私のこと考えてくれて本当にありがとう。大好き。」

そう言うとアリスはユウコに抱きつく。

ユウコは抱きしめ返した。

アリスの体は以前よりも華奢に感じたが、それはユウコが大きくなっているからだった。


次の日になった。ユウコは学校には行かず、外の世界に向かうための荷造りをしていた。

ユウコは荷造りを終えるとアリスのいる寮に向かう。

寮では、アリスも学校を休み、旅立つ準備をしていた。

アリスも準備を終えると二人は港に向かった。


港に着くと、すでに船が停まっていて、乗船準備をしていた。

二人は乗船場に向かおうとすると、一人立ちはだかるものがいた。

「アリスさん、そしてユウコさん、どこに向かわれるんです?」

「ディーオ、なんでここにいることがわかったんですか?」

「あなたのご友人にあなたのことを聞いていたんです。

それで今日学校に来なかったと聞いてたんで、寮から後ろをつけてたんです。」

ユウコは後ろをつけられていたことも、友人のメグミから情報が漏れていたことも驚いたが、打開策を見つける必要があった。

それはディーオにしばらく意識を失ってもらうことだった。


「二人で海を見にきただけって言ったら。」

「二人とも学校があるのにわざわざ抜け出してきますかね。」

ディーオはジワリ近寄ってくる。雰囲気は穏やかだが、隙はなく、戦闘態勢は整っているようだった。

「理事長からあななたち二人の様子がおかしいと聞いていて、監視していたんですが、正解でした。

ユウコさん、あなたはすでに二枚のチケットを購入済みですよね。」

「そこまで知っているなら、ここにいる理由はわかるわね。」

ユウコは手に持った荷物を地面に置き、戦闘態勢に入ろうとした。

しかし、ディーオ相手には分が悪く、なんとか隙をつく必要があった。

アリスは心配そうにユウコを見守っている。


「すでにお聞きになっていると思いますが、私は戦士大学で一番強いとされています。」

「それなら、私よりも強いということですね。」

「そうなると思うよ。」

「……。わかりました。ここは手を引きます。」

ユウコはそういうとチケット二枚を取り出して、ディーオの方に投げた。

「ユウコ、そんな……。」アリスは悲しそうな顔をする。

「わかってくれたらいいんだ。」

ディーオはそう言うと顔が船の方を向いた。

ユウコはその隙を見逃さなかった。ディーオの方に飛ぶと同時に手刀を食らわす。

ディーオはユウコが近づいてくる姿が視界に入れた時には手刀が入っていた。

ディーオは一撃でその場で崩れ落ちた。


「よし今のうちに。」

ユウコはチケットを拾い上げ、アリスを見るとアリスが驚いた顔をして、船を見ていた。

ユウコも船の方を向くと、そこにはアリスの父親がいた。

港に来ていたのはディーオだけではなく、父親もいたのだった。


「ユウコさん、お久しぶりですね。」

「理事長……。」

「話は聞いていました。アリスを置いて、今すぐ寮に戻ってください。」

「それはできません。」

「残念です。」

アリスの父親はそう言うとユウコと間合いを詰めていく。

ユウコはアリスの父親である町を救った英雄と真正面から、戦わないといけなかった。


「ユウコさん、君は学年主席で優秀だ。」

「しかし、対人との戦闘能力はあまりないと見ています。」

「さて、それはどうでしょうか。」

実際のところ、ユウコは専門は魔物であり、対人は苦手としていたが、今理事長にそれを知られるのはまずかった。

ユウコは勝機を伺うが、父親には隙がなかった。

ふっと父親の姿が消えた。

「うっ」

気づけばユウコは組み伏されていた。

「やはり、まだまだのようですね。」

「くっくそ。」

「金輪際、アリスには近寄らないように。家庭教師の契約も今日までです。」

そう言うとユウコは頭部に打撃を受け、意識がなくなっていくことを感じた。


「ユウコ!」

「アリス、家に帰るぞ。」

「お父さん、離して」

アリスの言葉が遠くから聞こえ、最後は聞こえなくなった。


目を覚ますと船はなく、周りにはユウコの荷物だけが転がっていた。

ユウコは部屋に戻り、初めてといっていいくらい落ち込んだ。

ここまで完膚までに叩きのめされるとは思ってなかった、

そして何より、アリスを救えなかったことに自身の情けなさを感じた。

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