第七話
「おっ、お兄さん、今晩の宿をお探しで?」
声を書けてきたのは……俺好みのどストライクの女の子だった。元気っ子で茶色より少しオレンジがかったショートの髪型、胸部装甲は薄いが、なくはない。どうして分かるかって?決まってるだろ。当てられてるんだよ。
「えーっと、探しては居るけど、君は?」
「おっと、ごめんごめん、私はシェリー。異国風宿屋、正式名称、旅籠、明鏡止水の看板娘をやってます!というか、実家ですけど!」
「異国風って……日本の文化でも取り入れたってか?」
「ニホン?よくわからないけど、遥か西の島国の文化らしいよ」
「ここはアトランティスか何かか?」
「むぅ、アトランティスとやらも知らないけど、とにかくうちに来ない?安くしとくよ!」
「ああ、かまわないが……というか、つけで大丈夫か?」
「へ?お兄さん文無し?もしかして貧乏?あはは、声かけてごめんね……じゃ!」
そう言って逃げようとするシェリーの腕を捕まえる。
「こらこら、人聞きの悪いことを言うな。ほらこれ」
「これ?……あっ、木札か……冒険者には見えないけど……冒険者さんなの?」
「ああ、そうだよ。で、査定に数日かかるそうだ。狩ってきた魔物が多かったからな」
「数日……」
「とりあえず、今は文無しだが、確実に収入が入る。ケチるつもりはないぞ?」
「ん~とりあえず、お母さんに相談してみる」
「そうしてくれると助かる。俺とこの二人合わせて三人で泊まりたい」
「ん!わかった!じゃあついてきて!」
そう言って、たどり着いたのは立派な旅籠だった。いや、これ宿屋と言うよりやはり旅籠と言ったほうが正しい気がする。この文化は本当に一体何処から?……いや、地球で言う西洋の文化がここにあるなら、島国の文化としてこういう物があってもおかしくはないのかもしれないな。
「お母さん!ただいま!」
「こら、シェリー!一体何処でほっつき歩いていたの!」
「いや、呼び込みしてただけだよ!」
「シェリー!あんたって子は!そちらがうちの娘に連れてこられた方々ですか?すみませんね。ここで女将をしているリアと申します」
「はあ、それでここに泊まりたいのだが、生憎無一文でな。とは言え、冒険者ギルドで査定してもらっている最中なんだ。数日かかるかも知れないが、ちゃんと支払いはする。対価としてこの刀を預けるので泊まらせていただけないだろうか」
「あらあら、武士の方ですか?それにしては服装がおかしいですね?」
「いや、武士というわけじゃないんだけどね。魔法も使うし」
「武士と言って通じたのは初めてだよ。あなた方も西の島国からやってきたのでしょうか?」
「いいえ、私達は違います。あなた方もってことは貴方も?」
「ええ、私は西の国の出身でね。向こうの旅籠をイメージしながら頑張って再現したのさ」
「立派な旅籠ですね」
「そう言ってもらえると嬉しいね」
「で、泊まらせていただけるでしょうか」
「かまわないよ。そのかわりさっきの刀はちゃんと預かっておくからね。お金が準備できたら返すから、ちゃんと支払っておくれよ?」
「わかった……というわけで、ここでいいか?タルト、ピュア?」
「大丈夫ですわ」
「だいじょーぶなの!」
「じゃあ、よろしくお願いします」
「あいよ、それじゃあ……鳳凰の間に案内してあげな」
「あいさ!じゃあお兄さんたちついてきて!」
そう言うと、見れば見るほど日本風の旅館である。
「はい、ここが鳳凰の間になります」
「……畳?」
「やっぱりお兄さん、さっきは否定してたけど西の国の出身じゃないんですか?」
「いや、違うよ」
「本当ですか?」
「ああ、出身は言えないが、確実に違うとは言えるよ。畳の材料がい草だと知っていたとしても西の国の出身じゃないよ」
俺はニヤリとしながら言う。
「あー、お兄さんやっぱり西の国の出身か~」
「だから違うって」
「もうごまかされませんよ!い草なんて知ってる人どれだけ居ると思うんですか!」
「そう言われてもな……俺の故郷も似たような物があったからな~」
「はいはい。その故郷が西の国というわけですね?」
「……ところで西の国の名前はなんなんだ?」
「……え?……お兄さん、本当に西の国の出身じゃないんですか?」
「?最初からそう言ってるが?」
「いや、国の名前を言うのはタブーですよ?知らないんですか?」
「ほぅ、これで俺が西の国出身じゃないってことが証明できたな」
「なーんだ……本当に違うんだ……」
「……違うね」
「まぁ、いいや、そっちの二人は西の国出身だよね?格好もそれに近いし」
「いいえ、私達も違います。出身はゼクスさんと一緒なので」
「ゼクスって誰?ってお兄さんか……そう言えば名前聞いてなかったね」
「ああ、そう言えば言ってなかったな。俺はゼクス。こっちはタルトとピュアだ」
「タルトです、よろしくお願いします」
「ピュアはピュアなの!」
「ん~、もしかしてお兄さんロリコン?私狙われてる?」
「……否定はしないが、この子達とはそういう関係じゃないぞ?」
「うわ、否定しないんだ……ちょっとこのお兄さんに近づくのやめとこっかな?」
そう言うとそーっと出ていこうとする。
「だから待てって。俺はそこまで節操がないわけじゃないぞ!」
「いや、ごめんごめん冗談だって……そっちも冗談だよね?」
「……」
「いや、そこで黙られると困るんだけど」
「まぁ、俺は嘘をあまりつきたくないからな」
「……ってことは本物さん?」
「まぁ、間違ってはいないな」
「衛兵さん呼んだほうがいいい?」
「俺は何をしたんだ?」
「何もしてないけど将来なんかやばいことをしそうな……でも大丈夫か。そういう悪しき人は亜神様が天罰を下してくれるだろうしね!」
「……亜神か……」
「ちょ、ちょと、様をつけなさいよ……何処で聞いているかわかったもんじゃないんだから!」
「そうなのか?」
「そういう情報に特化した亜神様もいらっしゃるということだよ!」
「ふむ。今度から気をつけよう」
「そうしてね……あー怖い怖い」
「ところで、一つ質問していいか?」
「何?」
「どうしてこの旅籠客が居ないんだ?」
「……な、なんのこと?」
「人の気配はわかるつもりだ。どうして人が居ない?」
「……」
「言えない理由があるのか?」
「違うの……近くの宿屋に悪い噂を流されてるの」
「……またベタな展開だなオイ」
「ベタな展開?」
「いや、なんでもないこっちの話だ。で、こっちはやり返さないのか?」
「そんな事したらアイツラと一緒になっちゃうじゃない!」
「なるほど……良識はこちらの方にあるわけか……心配するな。ちゃんとお金も払うし、ここに泊まる。さっきからこの旅籠を監視している人達が居たがそういうことか」
「え!?アイツラやっぱり近くにいるの!?」
「ん、心配ない。ちょっとお灸を据えて来る」
そう言うと俺は、部屋を出て入り口に戻る。すると女将さんが血相を変えて出てくる。
「お、お客さん、このあたりは少し物騒だからあまり外に出ないほうがいいよ!」
「心配するな。腕には自身がある」
「いや、そうだろうけど……」
「心配するな。この旅籠を監視しているのが居るからちょっと、そいつらで遊んでくるだけだ」
「監視?まさか!」
「大丈夫、色々聞いたけど、ここの旅籠気に入ったからここから離れる気はないよ」
「ほ、本当かい?」
「ああ、本当だ。というわけで散歩だ。タルト、ピュア、行くぞ刀は預けとく。約束だからな。何かあったらタルト、ピュア、頼りにしてるからな」
「わかりました」
「はいなの!」
そう言って俺は旅籠を出た。少し旅籠から離れたらその監視者がすぐに折れに接触してきた。
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