第六話
「そう言えば、ワイバーンとかその他ダンジョンで取れた魔物を冒険者ギルドに持って行ってないな……お金もほしいし、持っていくか?」
「そうですね、それもいいかと思いますが、まずその前に領主様のところへ向かいませんか?」
「どうして?」
「どういう魔物が居たかを報告したほうが、適正戦力を求めやすいのではないかと思います」
「なるほど」
「あの程度のダンジョンでは亜神が来るのは無理にしても、かなり強力な冒険者を連れてくる必要も出てくるでしょうし」
「わかった。じゃあ、先に領主様のところへ向かおうか」
一同は領主様のお城へ向かう。
「すみません、領主様はいらっしゃいますか?」
と門番さんらしき人に声をかける。
「誰だ?ここは領主様の屋敷だ。面会の予定を入れたいのなら、そちらの詰め所で名簿に書いてもらおう」
「一応結構急ぎなんですけど」
「理由は聞かないが、順番は守ってくれ」
「ん~、わかりました」
そう言うと、俺達は少し離れた場所まで来た。
「しょうがないな。正規の手続きが必要なのは目に見えてたけど、あの人頭が硬すぎ【ゲート】」
ゲートを開いた。そして、一歩踏み出す。
「やあ、マルク、久しぶり?」
「お、おい、ゼクス!どうやってここへ入ってきた!」
「魔法で?」
「いやいやいや、正規の手続きを踏めばちゃんと面会はできるようにしてあるのだぞ?」
「急ぎだったもので」
「急ぎ?」
「予想以上に強い魔物が出てきたので、報告しないとなと思いまして。中途半端な戦力では無駄死にが落ちだと思いまして」
そう言うと、マルクは目を細めた。
「なるほど、詳しく聞く必要があるな……今すぐに騎士団長を呼べ!」
急にたったかと思うと、扉を開き、大声で叫んだ。
「は、はい!大至急連れてまいります」
そう言うと、前で番をしていた近衛騎士が団長さんを呼びに行った。そして、数分と経たないうちに、団長さんはやってきた。
「ゼクスか……そしてマルク様。嫌な予感がするのは私だけでしょうか」
「いや、私も嫌な予感してならない」
「いやいや、ただ単にダンジョンに出てきたボスを見てほしいのと標準的な魔物をいくつか見てもらいたいだけですっt」
「騎士団長、訓練所に行き、直ちに訓練を中止、スペースを確保しろ」
「はっ!」
そう言うと団長さんは駆け出した。
「それでは我々も行こうか」
そして、訓練所へ着くと騎士団が整列して待っていた。
「我々は何処にいればよろしいでしょうか」
「壁際で待機しなさい」
「はっ、皆聞いたな、壁際で待機だ」
そう言うと、騎士団は壁際まで走り再度整列して待機している。
「それではゼクス、見せてくれ」
「じゃあ、とりあえず、ボスから」
そして俺は最初にボスを取り出した。あたりはしんと静まり返ってる。
「このドラゴンですけど……ってあれ?皆さんどうしました?」
「……これは亜神様に頼るほかないかも知れんな」
「いやいやいや、普通に冒険者でも勝てるでしょう。現に私でも勝てたんですから……数秒で……」
「は?」
「ですから、大丈夫ですよ。とりあえず、これがボス部屋に居たドラゴンです。他にも通常の魔物も何体か出しますね」
そう言ってドラゴンを収納し、次々に様々な種類の魔物を出していく。その間騎士団の人達は開いた口が塞がらない状態になっている。もちろん団長さんも、マルクも。
「と、まあ、こんな感じですかね?」
「……」
「あれ?どうされました?」
「……確かに見せてもらえて助かったよ。通常の魔物なら冒険者でもなんとかなりそうだな……距離を考えると、もう一つ街を作るのがいいかもしれないな……そうなると……」
なんか領主様はブツブツと言い始めた。
「あの、とりあえず、これ冒険者ギルドに持っていってもいいですか?」
「あ、ああ。かまわない。とりあえず見せてもらってありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。それでは失礼しますね」
「あ、ああ。また何かあったら来るといい」
「わかりました。その時はよろしくお願いします【ゲート】」
俺たちはゲートに入り、そのまま冒険者ギルドへ向かった。そして、俺はうかつにも冒険者ギルドの内部にゲートを開いてしまった。
「おい、今あそこから急に人が出てきたぞ……」
「何が起こったんだ?」
「俺が知るかよ!」
「どういうことだ?」
などなど、チラホラと訝しむ声が聞こえてくる。
「あー、今度から近くの路地にでもゲートを開こう」
「そうした方が良さそうなですね」
「おにーちゃん、うっかりなの!」
「まぁ、いいや。とりあえず受け付けに行こう」
するとさっきの現象を見ていたのだろう。受付の人は顔をひきつらせながら言う。
「い、いらっしゃいませ。本日はどのような用件でしょうか」
「魔物を討伐したのでそれをお金に変えたいんですけど、できますか?」
「はい。大丈夫です。先日冒険者ギルドに登録したばかりですよね?その魔物は何処へ?」
「ああ、魔法で収納しています」
「収納魔法!そんな伝説の物語に出てくるような魔法を使えるというのですか!?」
「えーっと、ここで嘘をついてもしょうがないと思うのですがいかがでしょう」
「わ、わかりました。それではカウンターに出してください」
「いいんですか?カウンター潰れますよ?」
「は?」
「とりあえず、最初に戦ったワイバーンを10体ばかり出したいのですが、ここに出したら大惨事ですよ?」
「……奥に解体所があります。そちらへどうぞ」
そう言うと、受付の人は案内してくれた。
「こちらが解体所になっています。少々お待ち下さい」
そう言うと一人の人を連れてきた。
「君がワイバーンを持ってきたって?しかも収納魔法で?ありえないだろ。本当なら出してみてくれ」
受付の人はそのまま逃げた。
「はい、とりあえず全部は出せそうにないのでまず一体」
そして、ワイバーン一体だけ取り出す。急にワイバーンがなにもないところから出てきたもので、そこで作業していた人達が一斉にこちらを見る。
「……」
「あの、これって買い取っていただけますか?」
「……買い取りはさっきの受け付けに言うといい。とりあえず、俺らはこれを解体して査定するだけだ」
「残りの9体はどうしたらいいですか?それと、他にもダンジョンで取れた魔物も居るんですが、それもここで出して大丈夫ですか?」
「……無理だ。ワイバーン10体は大丈夫だ。だが、このギルドの保有するお金を考えると他の魔物は……悪いことは言わない。王都へ行け。じゃないと買い取ってくれないぞ?」
「王都なら買い取ってもらえますか?」
「多分大丈夫だろう」
「ここも結構大きな街ですよね?」
「そもそも、この街は大きな魔物が来ることがまずないんだ。だから買い取りがどうしても他の街より劣ってしまう。それに南部の森から出てくる魔物のはそれほど規格外じゃない」
「なるほど。とりあえず、ギリギリこのスペースに全部出せそうなので一気に出してもいいですか?」
「……わかった。解体は俺らに任せてくれ。査定換金は数日かかるがそれでもかまわないか?」
「はい」
「それじゃあ、これを受付に持っていってくれ」
「はぁ、なんですかこれは?」
「ああ、これが査定番号だ。受付に持っていくとちゃんと木札で番号を刻印し、偽造防止の魔法を掛けたものを渡す事になっている。そして、査定が終わったら、普通は呼ばれるのだが、今回のような特殊な場合、一旦その木札を持ち帰って、後日来てもらうことになる」
「わかりました。ありがとうございます。それじゃあ、ワイバーンをここに置いときますね」
そう言うと残りのワイバーンを出して、受付に戻った。そして木札と交換してもらい、その場を後にした。
「そう言えば宿、とってないな。」
「もう一度冒険者ギルドに戻っておすすめの宿を聞いてみますか?」
「いや、適当に宿屋が何処にあるのか聞いて、泊まればいいだろう」
「じゃあ、次は宿屋探しですね」
そういった瞬間、片腕に衝撃が走った。
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