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第四話

「団長さん、冒険者登録しました。それと仲間も見つかりました」

「おお、そうか。良かったな」

「ええ、私が走ってモンスターのところへ向かってしまったためはぐれたみたいです」

「なるほど……で、連れというのはその子供二人なのか?」

「はい。タルトとピュアです」

「タルトです。よろしくおねがいします。ことのあらましは聞いておりますので」

「ピュアなの!わたしもおねーちゃんと聞いたの!」

「おお、そうか……ちなみに二人共冒険者なのか?」

「はい」

「はいなの!」

「……そうか……ゼクスと言ったな」

「はい、どうかされましたか?」

「こんな小さな女の子二人を冒険者にするとはどういうことだ!?」

「とはいえ、僕よりは多分強いと思うのでそこまで心配は要りませんよ?」

「ゼクス殿より……強いだと……」

「ええ、私では勝てませんね」

「あの魔法を使ってもか?」

「無理でしょうね」

「……わ、わかった。これ以上何も言うまい」

「はぁ」

「とりあえず、冒険者ギルドの登録をしたなら、ギルドカードをあそこに行って出してくれ」


 そう言われ、詰め所まで行って、冒険者カードを見せる。すると、通行料免除になった。というか、本来は通行料が必要だったのか……だから、冒険者ギルドに加入しろって事だったのね。


「登録してきました」

「そうか、では我々についてきてくれ」


 そうして、先程の冒険者ギルドを横目に見ながら、通り過ぎ、お城とも言えるような建物の方へ向かう。領主様にも会うみたいな事言ってたから、多分行くだろうなとは思ってたけど……なんか緊張するな。


「とりあえず、まずは訓練所へ行く」

「訓練所ですか?」

「そこでワイバーンを出してほしい」

「二体でいいんでしたっけ?」

「あ、ああ……本当にいいのか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「そ、そうか……じゃあよろしく頼む」

「はい……それで何処に出せばいいですか?」

「サイズがサイズだから倉庫には入らないだろう。邪魔になるが、あそこに出してくれ」


 そう言うと、大きなスペースの端っこにつれてこられた。


「ここでいいですか?」

「ああ、頼む」


 そして、収納しているワイバーンを放出する。すると、周りに居た兵士達が歓声を上げる。


「うお、なんだ?」

「城に残っていた兵士たちだからな……実際ワイバーンなんて見たことないのがほとんどだというか全員だと思う。だからだろうと思う」

「団長!これが噂のワイバーンですか!」

「ああ、そうだ」

「すごいですね!竜種の中でも弱いとはいえ竜種を倒したわけですからね!」

「いや、それがだな」


 団長さんはバツが悪そうに顔をそらす。


「どうしたのですか団長?」

「倒したのは彼だ。ゼクス殿が居なかったら全滅だった。それに、本来だったら彼がワイバーンを全て倒したのだからおこぼれをもらっただけだ」

「は?」


 キョトンとした顔でこちらを見てくる兵士さん


「何かの冗談ですか?」

「そう思うのも無理ないと思うが、今の収納魔法も彼の魔法だ」

「何処からともなく現れたのは彼がやったと?」

「ああ」


 そう言うと団長がこちらを見た。


「わかりました。もう一回収納して出します」


 そう言うと一瞬でワイバーンを収納し、再度出した。


「……な、なるほど……これほどの魔法使いならわからないでもないですな」

「まぁ、そういうことだ……とりあえず、近衛を除いた者たちはワイバーンの解体をしておけ!……それではゼクス殿、こちらへ。領主様へ面会の手続きは取ってあります」

「あっ、はい。わかりました」

「私達も一緒でいいのでしょうか?」

「いいの?」

「ああ、大丈夫だよ。ここの領主様は寛大だからな」


 そう言われ、お城の中へ連れて行かれる。


「今回は特例ゆえ、領主様の執務室へご案内します。何しろ、事が事だったため、未だ事後処理に追われています」

「はい、私は何処でも構いませんよ」

「かまわないの!」

「こら、ピュア、私達は部外者ですから静かにしてないと駄目ですよ」

「わかったの!」


 そして、団長さんに案内され、執務室とやらへやってきた。


「失礼します。マルス様、よろしいでしょうか」

「入ってかまわないぞ」

「はっ、失礼いたします」


 そういって、扉を開いて、中へ入る。


「ん?ああ、君達がワイバーンを倒してくれて、それに倒したワイバーンを2体もプレゼントしてくれた者かな?」

「は、ええ、まぁ……えっと、私はゼクスといいます」

「私はタルトです」

「ピュアなの!」

「おっと、失礼。私の名はマルク・セイス・フィリス・リッヒ。気安くマルクと呼んでくれ」

「ああ、わかったマルク」


 と俺が言うと団長が頭に手をあて天を仰いだ。


「はっはっは、本当にマルクと呼んでくれるとは、実に嬉しいね」

「いや、だってマルクがそう呼べと」

「普通貴族相手だと様をつけるかなにかするんだけどね……いや、気に入った。そのままマルクと呼んでくれ」

「は、はぁ」

「それで、ゼクスがワイバーンを倒してくれた功労者かな?」

「ええ、ワイバーンを倒したのは間違いないです」


 そう言うと、マルクが立ち上がり、深々と頭を下げる。


「この街を助けていただき感謝する。本当にありがとう」

「頭を上げてください。魔法のいい練習になったというだけの話ですから」


 そう言うと頭を上げ、こちらをキョトンとした顔で見てくる。


「魔法の練習?」

「ええ、窒息死させただけなんで、規模的にはそこまで大きなものじゃないんですけどね」

「窒息とはなんだ?」

「えーっと、空気を吸わないと人間って死にますよね?」

「ああ、死ぬな」

「それは化物だって一緒で、口と鼻を塞いだのですよ。顔全体に水の玉を作って」

「……」

「……マルク様、事実でございます」

「信じられん・・が、お前が言うなら確かなのだろうな」

「いや、嘘とか言ってないですよ?」

「しかも12体全てのワイバーンの顔に水の玉を作り、殺したのを確認しました」

「なんとも……そんな方法で……」

「結構簡単にできたんだけど……難しいの?」

「詠唱はどんなものだ?いや、秘術か……教えられるようなものではないのだろう」

「そ、それが、詠唱がなかったのです」

「は?詠唱がない?」

「ええ、詠唱はしていないですね」

「……いや、確かに顔の周りにだけ水玉を作り出す魔法なんぞ、聞いたこともないから特殊なのはわかるが……ではどうやって魔法を発動させた?いや、これも人に言えるわけはないか……」

「いや~、普通にイメージしたらそうなっただけなんですけどね」

「いやいや、それでは魔法は発動しないはずだ。鍵となる詠唱があって初めて魔法は創られる。こんな初歩的なことを知らない魔法使いは居ないはずだ」

「そう言われましても……出来ちゃったんです」

「……」

「……」

「あの~、どうかされましたか?」

「ゼクス、君は何処の魔術学院を出たのだ?」

「いや、そういう教育機関には関わったことがないので」

「……独学か……」

「そういえば……伝説となってる物語や、亜神同士が戦うときは詠唱を行いませんね」

「……そういえば……ゼクス、君は伝説の人物なのか?」

「いや、そう呼ばれるような存在じゃないと思うんですけど」

「……まぁ、いい。とりあえず、色々と世話になった。今後何かあったときに、君にできる限りの協力をすることを誓おう」

「ありがとうございます」

「それにしても私はとんでもない人物と知己を得たのではないだろうか」

「そうですかね?冒険者も登録したばかりですし」

「ゼクス殿、ワイバーンを10体持っていったらそれだけでBランクは間違いないですぞ」

「団長さん、そんなこと言ってましたね」

「そういえばそうだな。私がランク上げの為の推薦状でも書こうと思ったが、不必要かも知れないな」

「ですね。私はそういうの、もらってもあまりうれしくはないので」

「ほう、普通は嬉しがるものなのだがな」

「楽しくないじゃないですか……簡単にランクが上がったら」

「くっ、はっはっは……楽しくないか!そうかそうか!そうだよな、冒険者になったからには成り上がろうと思うものだ!貴族からの栄誉なぞ捨て置けばよいのだ!」

「いや、それをマルクが言ったらいけないんじゃないの?」

「くっくっく、そうだな……いや、久々に興奮してしまった。それで、これからどうするつもりだ?」

「えーっと、適当にレベルをちまちま上げながら、目的のためにひた走る予定です」

「目的か……ふむ、どのようなものか聞いてもいいか?」

「いや、それはちょっと言えないですかね……いや、言ってもいいんですが……」

「どうした?歯切れが悪いな?」

「ま、いっか。とりあえず、当面の目標は亜神より強くなって、亜神に会うことです」

「……」

「……」

「あっ、やっぱり二人共固まった」

「ゼクスさん、言っても良かったんですか?」

「まずかった?」

「いえ、まずくはないですが、今亜神に察知されるのだけは避けないといけないので」

「そういやそうだったな。というわけで、亜神を超える強さを持つことが今の所の俺の目標かな?」

「……」

「……」

「ありゃ?まだフリーズしてる?バグった?」

「……はっ、いやいやいや、亜神様にお会いしたいと?一体どんな物騒なないようなのですか?それ以前に亜神様を超える?そんな事が可能なのか?」

「一応神様が言うには、可能らしいですよ?」

「……」

「……」

「あっ、またフリーズした」

「……神様……会ったことがあるのか?」

「ええ、ありますよ。というか目的というのは実は神様からのお願いだったりもするんですけどね」

「……」

「……」

「またフリーズか……というか団長さんもしかして立ったまま気を失ってる?」

「……そうか……そちらの二人の様子を考えても……そうだな……神様に会ってきたのは確実なのだろうな……信じがたいが……」

「まぁ、こればかりは信じてくださいというしかないので。証拠も見せられ……あっ、そっか。証拠あるじゃん」

「証拠が……あるだと……?」

「タルト、ピュア、俺の刀の方に戻って」

「ああ、そういう事ですか。わかりました」

「わかったの!」


 そう言うとタルトとピュアは俺の腰に装備している刀に戻った。


「ちょっと待て、今何が起きた?」

(私達は本来神器と言われる神の装備品です。そこに仮初の肉体を用意してもらったのです)

(ピュアもそうなの!)

「ちょっと待て、この声は何処から聞こえてきている?頭の中に直接聞こえてくるのは気のせいか?」

「ああ、気のせいじゃないですよ。ちなみに何処からというのはこの二振りの刀からですよ。彼女たちの本体はこれなので」


 そう言って、刀に触れる。


「……確かに……これは、神様でもなければ……起きるはずのない現象だ……流石に亜神様でも無理だろう」

「多分ですが、亜神では無理でしょうね」

「……は、ははは……私は夢でも見ているのだろうか?」

「いやいや、現実逃避しないでくださいよ」

「……と、とりあえず、目的はわかった。だが、このあたりは強い魔物はあまり居ないぞ?」

「えっ、そうなんですか?」

「あ、ああ」

(いいえ、近くにダンジョンができています。そこの魔物は強力ですよ。しかも、先程のワイバーンもそこから出てきたみたいですし。一応国王様に報告したほうがいいと思います)


 そう言うとタルトは実体化した。続いて、ピュアも実体化した。


「ゼクスさん、ここ一帯の地図を出せますか?」

「地図?」

「はい、魔法で」

「多分?」

「出せるはずなので出してもらってもいいですか?それに、魔法を使えば否が応でも無詠唱の魔法の存在を示せますし」

「ああ、わかった。とりあえず、やってみる」


 そう言うと、ここ一帯の地図という漠然としたイメージだけで魔法を発動する。


「あら、予想以上に緻密な地図になりましたね」

「……そうか?これってこのあたりの地図で合ってるのか?……マルク?」

「……あ、ああ、このあたりの地図だな……異様に緻密に書かれているが……これが魔法?ありえない……だが、これが現実」

「えーっと、ここですね。ここに入口があります。それで今回このあたりとこのあたりにまだ強い魔物の反応があるので、私達で駆逐してきます」

「いい経験値稼ぎになるのか?」

「ええ、それはもう、とても」

「けいけんちなの!」

「……そんな……その情報は本当なのか?」

「ええ、本当ですよ。強い冒険者の募集や王国から兵士の増員をお願いしておいたほうがいいと思います」

「……そうしよう」

「まぁ、私達が最初にそのダンジョンに入って、一度全滅させますので、しばらくは猶予があるはずです」

「倒せる前提……いや、亜神を超えると言っている以上、可能なのだろうな」

「ええ」

「というか、安請け合いしていいのか?」

「別にいいじゃないですか。どうせ貴方の経験値になるのは変わらない事実ですから」

「はぁ、まあいいけど。とりあえず、そういうわけなんで行ってきてもよろしいですか?」

「ああ、わざわざ済まなかったね。ゼクス、また今度ちゃんとお礼をさせてくれ」

「あまりそういうのはいいんだけど……まぁいっか。じゃ、行ってきます」


 こうして俺たちは領主の城を後にした。

お読みいただきありがとうございます。

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