第二話
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「すっげー、神様の体すげー」
「だから言ったの!」
「ふふふ、結構余裕があるはずです」
俺は全速力で走っているが、普通に走れている。疲れてはいるのだが、普通に走れちゃうのだ。前の俺なら考えられない。
「おや、ちょうどいい魔物があそこに居ますね。戦ってみましょう」
「戦うの!」
「へ?魔物?」
「ほら、あっちです」
するとそちらからそこはかとなく嫌な感じがしてくる。
しばらく進むと熊のような化物が居た。
「なんだかわからないけど、強そうなの!」
「あらあら、初戦にはちょうど良い相手かもしれませんね」
「いやいやいや、もっと簡単なのからにしない!?」
「おにーちゃんいかないの?」
「いやいやいや、無理でしょ」
「とはいえ、私達が戦ったのでは相手にならないので、やはり戦っていただかないと。それに、戦うことによってわかると思います。その肉体について、自分自身の変化について」
そう言われて、俺も腹をくくった。どうせ不老不死なんだ……痛いのや苦しいのは慣れっこだ。ええいままよ!突撃しちゃる!
俺は姿勢を低くして、鯉口を切る。いつでも抜刀できるようにして、できる限り音を立てずに走りすれ違いざまに抜刀する。
「グオォ」
斬った感触はあった。居合は一之太刀しか基本的には存在しない。振り返って第二撃目をはなとうとした。が、その必要はなかった。
「おー!おにーちゃん!すごい!」
「これは確かにお強いですね」
「へ?」
俺は間抜けな声をだした。だって、一太刀で敵を倒せるとは思っても居なかったからだ。
「う、嘘だろ……てか、これだけでもかなり強いじゃん……強くなる必要あるの?」
「強いのは認めますが、まだまだです。ここから狙って街を一刀両断できるくらいにならないと話しにならないと思いますよ」
「は?そんなの一生鍛えたって無理じゃねぇか」
「そんなことはありません。鍛えればそれに答えてくれる肉体ですから」
「だいじょーぶなの!」
ポカーンとしている間に俺の初戦闘は終わった。
「次は魔法を使って倒してみましょう」
「まほー!」
「おー!魔法!」
「ふふふ、ゼクスさん、ピュアに似てきましたか?」
「いや、そんなつもりはないんだけど」
「ピュアとおにーちゃん似てる?わーい!」
「まぁ、ピュアが喜ぶならいいか」
「あらあら、本当に神様と一緒で幼い子どもが好きなのですね」
「いやいや、あれと一緒にしないで」
「おにーちゃん、ピュアのこと嫌い?」
「いやいや、嫌いじゃないよ」
そう言うと、泣きそうだったピュアが、満面の笑みで喜ぶ。こういう一喜一憂している姿を見るとなんかほっこりする。
「ふふふ、やはり神様と似ておりますね」
「その話はもうよそう」
「よそー!」
「ふふふ、わかりましたわ」
こうして再度街の方へ向かってひた走る。その間に魔法のことを色々と聞くことができた。曰く、魔法とは術者のイメージによってどのような効果でも発揮することができるとのこと。ただし、それができるのは真理を知っているものだけというお話だ。なんともチート臭い。通常の人達は、魔法を使う時、詠唱を行ったり、技名を言ったりするらしい。だけど、それにはちゃんと意味があって、明確にイメージして言霊として発音することにより、安定した威力で魔法を使うことが可能になるのだとか。そういう中二臭いのは俺は遠慮したいかな。
そして、街に近づいても来たが、魔物も強そうなのが数体いるのを確認できた。これで魔法の訓練ができる。やばいのは空を飛んでいることと、街に向かっていること。もちろんその前に俺らが接触できるだろうから問題ないだろうが。
「見えた。あれだな?」
「ええ、とっくに見えてましたけどね」
「おにーちゃん、おめめわるい?」
「いやいや、普通見えないから」
「あら、そういえば教えるのを忘れていましたわ」
「何を?」
「魔法で身体強化すれば更に速く走れますし、遠くも見えます。夜になっても昼間のように見ることも可能になるはずですよ?」
「え?」
「もちろんイメージ次第ですけどね」
「……それ早く言ってほしかったな」
「あ、あはは、ごめんなさい」
「おねーちゃん、ごめんなさい?」
「いや、大丈夫、気にしてないよ……とりあえず、身体能力のイメージはできた……けど、魔法ってどうやって発動するの?」
「すでに発動されていますよ?」
「へ?」
「先程からスピードが段違いに上がってます」
「おにーちゃんはやーい!」
「魔法発動のトリガーがよくわからないな……」
「イメージすることがトリガーになってるみたいですね」
「ってことは……おお、こんな感じか」
そう言って手のひらに炎を出現させた。青白い炎が。
「ってことは、ちょっとアイツラで色々試してみよう」
そして、街の近くまで行くと空飛ぶ魔物と人の集団が居た。
「あらあら、これは助けに入ったほうが良さそうですわね」
「たすけるたすける!」
「了解!」
そう言うと俺は更に加速し、集団に声をかける。
「割り込んですみません!あれ、倒してもいいですか!横取りとか言わないですよね!?」
「は!お前何いってんだ!街の冒険者は魔法使い以外は下がっていろ!あれはワイバーンだぞ!」
「強いんですか!」
「馬鹿野郎!強いに決まってる!」
「倒せそうですか!」
「無理だろうな!」
「じゃあ、あいつら全部もらいますよ!」
そう言うと俺はワイバーンと呼ばれた魔物の顔に水の玉を出した。すると、息ができず暫くの間もがき続け、次第にドタドタと全部落ちてきた。
「お~、やっぱり空気がないと死ぬか」
「お、お前さんは一体何者だ!」
「さあ?」
「さあっておい」
「まぁ、いいや。ところでさっきの魔法詠唱していなかったがどんな魔法なんだ?」
「ただ単に顔に水の玉を浮かせただけですよ?」
「は?」
「え?」
「いやいやいや、だから詠唱は?」
「必要なんですか?」
「……頭が痛くなってきた」
「団長!この死体はどうしますか!」
「ああ、倒したのはこいつらしいからな、そいつに全部くれてやるしかない……ただ、タダ働きは流石に勘弁願いたい。何匹かワイバーンを分けてはもらえないだろうか」
「別にいいですよ。私は当面のお金があれば十分なので、そちらがそれを払っていただければ全部あげます」
「は?ワイバーンだぞ!いいのか!?」
「なにか問題がありますか?」
「お前さん、ワイバーンの価値を知らないのか?」
「すみませんが、田舎から来たもので、相場とか全然知りません」
「はぁ、この数のワイバーンなら、王都の一等地に豪邸を建てて、一生遊んで暮らせるだけの金額にはなるぞ……控えめに言って」
「お~、じゃあ、横取りしちゃったわけですし、利益の2,3割貰えれば嬉しいかなと思いますがどうでしょう……」
「は?」
「え?」
「いやいやいや、普通倒したものが10割だろうが……逆に俺らが2,3割の利益をもらえたら領主様に奇跡かと驚かれるぞ!」
「そうなんですか?」
「はぁ、常識のないやつと思っていたがそこまでか・・・まぁいい。とりあえず、全部運ぶぞ」
む、そういえばラノベでよくある収納とかできないだろうか。とそこでイメージしてしまった。
「団長!ワイバーンが消えました!」
「は!?どういうことだ!」
「魔力を感じたのでなにかの魔法だとは思われますが……流石にかすめ取られたわけではないでしょうし……我々もそこまで鈍くはないですから」
「そうだよな……一体どういう」
「あの~」
「何だ!ってそうかお前さん、ワイバーンが消えてしまったそうだぞ!どうする!」
「多分、犯人僕です」
「は?」
「えーっと、こうかな?」
収納したものを放出するイメージをすると合計12体のワイバーンが出てきた。
「な、一体何が!」
「ああ、魔法で収納していました」
「だから詠唱は!」
「必要なんですか?」
「うがー!」
「うわ、急にどうしたんですか?」
「はぁ、もういい。疲れた」
「はあ、お疲れ様です」
「誰のせいだ!誰の!」
「僕ですか?」
「もういい、そんな出鱈目な魔法があるならそれで。もう一度しまって、もう一度出してくれればそれでいいよ。とりあえず街まで来てもらえないか?」
「ああ、それはちょうどよかった。僕らも街を目指していたもので」
「僕らってお前一人じゃないか?何を言ってるんだ?」
「あれ?」
(ゼクスさん、ゼクスさん、私達の本体は刀です。もとに戻っただけです。心の中で念じれば私達に声が届くはずです)
(もどったの!)
「なんで戻る必要があったのか知らないけど、そういうことね」
「は?何言ってるんだ?で連れは?」
「いや、先に多分街に向かったんじゃないですかね……戦闘力なかったっぽいですし」
「そうなのか?ならいいが。まぁ、とりあえず、街まで来てくれ」
「了解しました」
そう言うと再度ワイバーンを収納する。
「本当に出鱈目だな」
「なにか?」
「いや、なんでもない」
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