第二十一話
「よし!亜神は居ない!今のうちに攻撃するのだ!」
宣戦布告もなく、マグレア帝国の皇帝は進軍を始めた。
「陛下、やはり年寄り共が耄碌していたのだな。亜神などというものは脅威のうちに入らない。それに兵器は日進月歩。常に改革されてきています。今は昔と違う。亜神なぞおそるるに足りませぬぞ」
「宰相のお前から見てもそう思うか!よしよし!その亜神とやらが来てもこちらの兵器で蹴散らしてくれようぞ!」
一方、カメイア共和国の亜神二人。
「おいおい、また戦争かよ……あ~、そんな時期かもな」
「面倒ね。さっさと終わらせましょ。王国や帝国に居たマリーたちも少し気になるし」
「あの、変な戦闘の魔力か?かすかだがここまで届いたくらいだしな」
「ええ、状況はわからないけど、とりあえず急がないといけないと思うわ」
「それじゃ、一丁行きますか!」
「ええ!」
更に一方、ミレニアに居た俺たちプラス亜神三人は……。
「おい、コラ。どこに行くつもりだ?」
「どこって、国境に向けて飛んでいくに決まってるじゃない!貴方も飛んでたでしょ!」
「だから、そんな無駄なことをしてどうするんだ?」
「無駄とはどういうことですの?」
「転移すればいいだろ?」
「はい?」
「は?」
「……いやいやいや、転移なんてできたのはあの方ぐらいですわよ?……まさか!」
「ああ、俺が転移させれば済む話じゃないか」
「転移できるのですか!」
「凄い」
「嘘でしょ!?」
「信用されていないな……まぁ、いいけど。とりあえず、地図か何かで場所を教えてくれ。流石にどこだかわからないのに転移はできないからな」
そう言うと三人は地図を見せて、国境を見せてくれる。
「了解。じゃあ、全員で手をつないで。安全のために空中に飛び出すから、各自滑空して着陸すること。いいね?」
「「「はい」」」
「「「「「はい」」」」」
「それじゃあ……転移!」
そして、宣言した通り空へ飛び出した。
「ちょ、ちょっと高すぎませんか?」
「いや、変なところに転移して、山と合体は嫌だったから」
「この辺一帯、丘はあれど、山はない。地図ちゃんと見た?」
「ありゃ?そうなの?まぁ、転移してしまったものはしょうがない。降りるぞ。どうやら、余裕で間に合ったようだ。帝国軍は国境こそ超えているが、まだ街にたどり着いていない……とりあえず、降りる場所は……帝国軍の前でいいか」
俺たちは全員で帝国軍の前に降り立つ。そして、リィリが一歩前へ出て叫んだ。
「これは一体何だ!誰の許可を得て戦争行為を行おうとしている!」
兵士たちは嘲笑い、ニヤニヤしながら歩を止めない。
「はぁ、だったら……ふっ!」
気合を入れたかと思うと高さ数十メートル、横に数百メートルの岩の壁ができた。
「はぁはぁはぁ、これで話を聞くきになった?」
リィリは壁の上に立ち、帝国軍に向けて言葉を発した。しばらくすると奥から人が神輿に担がれて、出てくる。
「おお、どこへ行っていたのかと心配しておったのだぞ。噂では共和国に拉致されたと聞き及んでおる。共和国から脱することができたのか?」
「皇帝、貴方は何を言っている?まさか亜神の力を侮っているの?」
「そのようなことは……ただ、事実として、亜神の力とやらを我々は凌駕したと思っておる」
「呆れた。何度同じ事を繰り返せば気が済むの?」
「過去は過去。今は今だ。昔の技術では勝てなかったかもしれないが、今の我々の技術を持ってすれば、君たちにすら勝てるのだよ!」
「……はぁ、愚かな人間。いや、私も人間だったから人のことは言えないけど……」
「それにしてもどちらにいらしたのかな?貴方はもう調停役として意味をなしていない。貴方の時代は終わったのですよ」
「その台詞数十回は聞いている。戦争のたびに。いい加減うるさい」
「やれやれ、貴方を救うという名目でしたが、そのようなものはもはやどうでも良い。儂こそが至高の存在である!ひれ伏せ!」
「はぁ~……で、どうするの?」
「ひれ伏さぬのか?命は大切にしたほうが良いと思うぞ?」
「心配しなくても私達は死なない」
「ああ、あの耄碌した老害が言っていたことか……ふん、そのような世迷い言、誰が信じるか」
「まぁ、戦争してから時間が経ってるからしょうがない」
「ふん!そのような高いところに立って儂を眺めるなど不愉快じゃ!そこの子供をひねりつぶせ!」
そう言うと全軍が一斉に動き出した。魔法部隊と思われる者たちが前に出て壁を壊しにかかる。リィリは壁の反対側。俺たちの方に取り降りてくる
「まぁ、音とかリィリの顔とかでわかるが、どうだった?」
「説明……面倒……察してるならそれが正解」
「この壁後数分で壊されるぞ……呑気にしてていいのか?」
「え!?嘘!そんなはずはない。壊されないように作った」
「そうは言ってもな。この壁脆いし」
「……」
「俺が作り変えようか?硬質化させるだけならさほど手間ではないぞ?元素を書き換えればいい話だからな」
「しなくていい。どうせ奴らは壁を超えられない」
と言った瞬間壁の真ん中に穴が空いた。そこからこっちに向かって軍隊がなだれ込んでくる。
「何!?」
「だから言っただろ。脆いって……下がってろ」
そう言うと俺は、魔法でダイヤモンドの壁を更に作った。そこに魔術防御も組み込んで。物理でも魔法でも絶対に抜けないように。
「これでどうだ?」
「こ、これは一体なんですの!?」
「ん?宝石の壁」
「ほ、宝石!?」
「宝石って実は結構硬いんだぞ?それに魔術防御を施した壁を作った」
「……」
「なんて出鱈目な」
「まぁ、できたものはしょうがないだろ?で、これからどうする?……おや?あの後ろからくるやつって」
「ん、多分リラとメア」
「亜神か?」
「ん」
「なるほど、とりあえず、三人が居れば俺らはあらぬ疑いを受けることは無いよな?」
「多分大丈夫」
それを聞いて俺は安堵した。そして、遠かった豆粒みたいなのが人の形となり見えてきた。そして、俺達の目の前に降り立った。
「おっす、三人集まってたのか!久しぶりだな!」
「三人共元気にしてた?」
これが次の亜神との邂逅だった。
毎週楽しみにしていただいている方にはとても申し訳無いのですが、誠に勝手ながら、個人的な理由で一時休載したいと思います。
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