第十八話
「で、頭の中で整理はつきましたか?」
「あ、ああ。まだごちゃごちゃしているがさっきよりは大分マシになってきた……」
「現実を受け入れることも大切ですよ?」
「それを受け止められないからこうなっているのではないか!」
「まぁ、いいんですけどね……信じられないなら信じられないで。少なくても俺は嘘はついてないぞ」
「……はぁ~、そうだよな」
ギルドマスターは頭を抱えている。
「そんなに頭を抱えるような事案なんですか?」
「ギルドとしては亜神様と関わるのはできる限り避けたいんだ」
「そりゃまたどうして?」
「恐怖の対象だからな。この国が亜神様一人と戦争したって勝てっこない。それほど理不尽の塊なのd」
と、ギルドマスターが喋ってる最中に上から物凄い魔力を感じた。俺はとっさに建物全体に防御の魔法を掛ける。数瞬の後、ズドンという轟音が王都全体に響き渡った。
「ギルドマスター亜神が来たみたいだ……ちょっと外に行ってくる」
そう言うと俺たちは外に出る。
「へ~、これ、あんたの仕業?」
「そうだが?あんたがこの王都に居るという亜神か?」
「様をつけなさい!様を!」
「別にそんなのどうでもいいだろ?名前は?俺はゼクスだ」
「ふーん、ゼクスね~私は教えてあげない。敬う気が無いやつに誰が教えるもんですか!」
「……はぁ、初めて会う亜神がこれか」
「……あぁん?」
「いや、なに興ざめしただけだ。神様から伝言預かってきてるのに、そういう態度を取るなら別にあんたの進退を俺がとやかく言う必要がないと思ってな」
「……おい、小僧。ここは王都だ。外へでろ。あの方の名を語るなら殺す」
「王都を傷つけずに俺を殺すことができないのか?不便だな……あまり先制攻撃はしたくないんだが……な!」
そう言うと、魔法で亜神を吹き飛ばす。王都の外まで。
「タルト、ピュア、戻っとけ。三人も後からゆっくり着いてこい」
そう言うと俺は飛び上がり、遠くの方の土煙が立っているところへ向かった。そしてそこに居たのは……悪鬼とも言える形相をした亜神だった。
「覚悟出来てるんでしょうね?」
「お前こそ。覚悟できているのか?俺はお前を殺すことができるんだぞ?その力も与えられている」
「……その年で魔法の深淵を知っている者に出会えるとは思ってもいなかったわ」
「無詠唱のことか?」
「ええ。これはちょっと本気を出さないと駄目かしら!」
そう言うと地面から炎が吹き上がってきた。俺は空を飛び、上空へと退避し、ダウンバーストを魔法で起こす。
「え!?な、なによこれ!」
炎が吹き上がってきたと思っていたが、どうやらマグマだったらしい。それを一気に凍らせたから、固まって岩になっていた。
「ふむ。こんなもんか?」
「あ、あんた、一体!……とにかく、亜神としてのプライドがずたずたにされたわけだから、何があっても貴方は殺すわ」
と会話していると三人がやってきた。
「おう、ゆっくりとは言ったが本当にゆっくりだったな」
「そ、そんな事言わないで……これでもかなり勇気を振り絞って来てるんだから」
「わ、私達もそうよ」
「お、お姉ちゃん」
「まぁ、いい。後ろで結界張って下がってろ。まぁ、殺しても死なないなら一回殺そう。どちらが優位に立っているのか教えてやらないとな」
「その上から目線、腹立つ!その前にあんたを絶対に殺してやる!」
「心配するな。お互い不老不死だ。俺を殺しても死なないから、安心して全力で来るといい。俺もこの機会はちょうどいいと思うんだ。この世界の亜神の強さ、見せてもらおう」
「生意気!」
こうして、壮絶なバトルが始まった……と思っていたのだが。
「あ、あんた、何なのよ!私は亜神よ!神様の眷属よ!なのにどうしてそんなに私を殺せるの!」
「いや、だって、一対一の戦いだぞ?一対多の戦法とったって勝てるわけ無いじゃん。そんなスカスカな強度の攻撃じゃ無理でしょ」
ワンサイドゲームが行われていた。ぶっちゃけて言うと、向こうは全体範囲攻撃。こっちは単体攻撃。コスパも威力も段違いである。いや、威力に関しては向こうのほうが上だろう。多人数に対してダメージを与えるという点では。だが、この戦闘は一対一なのだ。
「そろそろ、タルトとピュアを使うかな?」
「何よそれ!」
「ん?俺の刀だ」
そう言って、刀を抜く。二本ともだ。
「さて、これからは俺のスキルアップの為に、尽力してもらおう」
そして、再度ワンサイドゲームが始まった。
そして…………。
「もう嫌!痛いの嫌!お願い!やめて!」
「ふむ。もうギブアップか」
あれから数刻、殺しまくっていたら、とうとう音を上げた。
「もう痛いのは嫌かな?」
「あ、当たり前でしょ!こっちはあんたを殺せないのに、あんたは一体何回私を殺したと思ってるの!」
「そうだな~、千から先は数えていないかな?それに蘇るって言ったって、再生中に攻撃することもあったし」
「というかその武器は一体何!なんで私を斬れるの!」
「もともとこの刀は神様のところにあったらしいぞ。その刀に魂が宿った為、肉体を与えた。それがこの刀だ。出てこいタルト、ピュア」
「そういうわけです」
「ということなの!」
「あ、あんた本当にあの人からの……」
「最初からそう言ってるだろ?」
「うぅ……」
「まぁ、俺としては有意義だったからいいんだけどな」
「私は全然有意義なんかじゃなかったわよ!」
涙目である。
「まぁ、とりあえず、信じてもらえたならそれでいい。で、神様から伝言だ。俺のところに来たいか?それとも死にたいか?それともそこにやりのことしたことがあるならそこに残るか?この3つの選択肢を与えよう。だって」
「……それは本当の話?」
「もちろん。長い年月を生きて、もう死にたいなら本当に殺してあげるし、神様の元へ生きたいならその道を作ってやる。もちろんこの世界になにか未練があるならそれをやり終わってから再度俺に言えばいい」
「……考えさせて……それと、これみんなに知らせたいんだけど」
「もちろん。そのために俺は亜神の名前をギルドで使っているわけだしな」
「……わかったわ。まだこの世界にやり残したことがあるから、今は決めない。ただ、ありがとう。神様の元へ行くことができるなら私はそうしたい。あのときは残る選択をしたけど……やっぱり会えないのは寂しいから」
「わかった。とりあえず、一緒に行動するなら俺のクランに入ってくれ。俺は世界を旅しながら亜神を探す予定だ。もちろん封印されているであろう亜神も含めてな」
「っ!封印している子まで!私は流石にそこまでは付き合わないわよ!」
「それはお前の自由だ。というかそろそろ名前を教えてもらってもいいか?いい加減お前呼ばわりはしたくないのだが」
「……マリーよ」
「わかった。マリーと呼ばせてもらう。俺は普通にゼクスでかまわない」
「わかったわ」
こうして、この世界の亜神とのファーストコンタクトはこんな感じで幕を閉じた。
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