第十二話
「というわけだ。亜神になるって事はな」
と、亜神になった場合の詳細を説明する。それでどういう結論を出すかはこの子達次第だ。もちろん俺としてはこんな可愛い子たちが仲間になるなら嬉しいけど……。
「はい、わかりました」
「私も、わかりました」
「というわけだから、考えてから結論を出せよ?」
「「え?」」
「え?」
「あの、以前いいましたが、亜神様にしてください」
「私もその時から覚悟は決めています」
「いやいやいや、説明したばかりでしょ?もう少し悩む必要と叶いの?」
「私達どうせ帰るところもないですし」
「うん、だったら亜神様になることができるこの機会は嬉しいかも知れません」
「ほぼ無限の命だぞ?」
「はい!」
「それでもです!」
「……はぁ、わかった……じゃあ、眷属化のスキルをかけるぞ?」
「あら?今回はあっさりしていますね?」
「おにーちゃん、よっぽどこのみの子なんだ~!」
「……ロリコン」
「……色々と言いたいことはあるが、とりあえず眷属化させてしまうぞ覚悟はいいか?」
「はい」
「もちろん」
「……じゃあ、始める……【眷属化】」
するとシェリーの時のように二人の体が発光する。そして苦痛に歪んだ顔が伺える。やがて光が収まると表情ももとに戻る。いつ見ても心苦しい光景だ。
「終わったな。どうせまた二人共神様のところへ行っているからしばらく起きないだろう。ここで待ってよう」
そして、30分ぐらいだろうか。ロリコンだの、スケベだの、えっちだの、色々なことを言われながら耐え続けた。が、それも終わる。二人が目を覚ました。
「あの人が神様……」
「私達可愛いって……」
「それに、女の子たくさんいた……」
「やっぱりゼクスさんはロリコンなんだ……」
「だからクソ神!一体何を吹き込んでやがるんだ!一度俺をそっちに呼べ!ぶん殴ってやる!」
「あっ、そうだ。ゼクスさんがそう言うだろうって神様から伝言」
「えーっと「開き直れば楽に慣れるよ」だって」
「ぶん殴る、絶対ぶん殴ってやる!」
「って言ったら「無理だから諦めなさい」って言いなさいって」
「ちくしょー!」
俺の叫びは虚しくこだました……。
12話
「はい、予定は少々狂いましたが、ダンジョンへ向かいたいと思います!亜神はかなり能力が高いです!最低限そこまで力をあげましょう!スキルレベルをあげましょう!そして、ミアとシアは冒険者ギルドに行ってパーティー登録と、クラン登録をしよう!」
「「「「「はーい(なの!)」」」」」
冒険者ギルドにまずは寄って、いつものごとく奇異の目に晒されながら、登録を完了させる。毎度毎度こうでは鬱陶しくて仕方ないが、しょうがないと最近は諦めている自分が居ます。はい。
「で、ここのダンジョンはどういう特徴なんだ?」
「とにかく、大きく広いです」
「……で?」
「奥に行けば行くほど強い敵が居ます」
「……で?」
「強い敵を倒せば経験値がもらえます」
「……はぁ、とりあえず、出発するか」
「ちょ、ちょっとまってよ!装備はどうするの!?」
「あっ、すっかり忘れてた。俺は武器あるし」
「私も刀がほしい!」
「じゃあ、武器屋さん覗いてみますか?」
こうして、初っ端から何も考えずに行動した結果、ダンジョンではなく武器屋へ行くことになった。
「三人は戦ったことがあるのか?」
「私は一応」
「私達は普通に戦わないと死んじゃうから」
「……」
「ん、ミア、シア、ゴメンな。各自好きな武器を持ってきなさい。少々高いくても買うからな。いくら不老不死とは言え、痛いものは痛いからな。魔法はあるが、魔力にだって限界が……あるんだよな?」
「ええ、ありますよ」
「あるそうだ。だから、その時のために武器は必要だ」
「それ以前に武器を扱うことができなければ亜神とは対等に渡り合えませんよ?」
「そう言えば俺、剣術のスキルがあるけど、伸ばしたほうがいいの?」
「そうですね……刀のスキルを伸ばしてからでいいかと。とりあえず今は強くなることが先決です」
「わかった」
シェリーは無難に剣を選んでいる。双子は短剣を選んでいる。
「タルト、審美眼はあるか?」
「刀に関しては」
「だよな……これっていい武器なのかどうなのかわからないな……」
「とりあえず、間に合わせでいいと思いますよ」
「だな」
こうして、剣を2本、短剣を8本買った。双子は短剣二刀流にするらしい。
「ん~財布が寂しくなったな」
「え!?大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だ。ダンジョンから戻ってきたら解体をしていないモンスターを出して、そのままその場で解体すれば即金でもらえる」
「そう言えば大量に魔物を収納していましたね?」
「ああ、在庫不良気味なのに、更に今回のダンジョンで増やすとか、俺らは一体何を考えてるんだろうな」
「強くなるんじゃないんですか?」
「シェリー、それはそうなんだがな……まぁ、いいや。とりあえず、出発だ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!防具はどうするんですか?」
「……必要?」
「必要です!」
「どうして?」
「どうしてって、防御はどうするんですか?」
「魔法で結界張った状態で戦えば済むじゃん」
と言うと三人は唖然とする。
「結界って……そんな簡単にできるんですか?」
「イメージだよ。体に膜を覆いかぶせるようなイメージ?」
「いや、ゼクスさんが疑問形でどうするんですか!」
「ミアとシアはできるよな?」
「なんとなくイメージすればいいんですよね?」
「多分大丈夫かも?」
「入る前に三人共ちょっとやってみろ」
そして、やらせたら三人共できた。
「何だ。できるじゃないか。よし防具はいらないな。それじゃあ出発だ!」
こうして、ダンジョンへと出発するのだった。
「はい、次の方」
「はい」
ダンジョンの入り口は頑丈な格子があり、簡単に入れない様になっている。
「じゃ、ギルドカードを出してくださいね」
そう言われ全員分渡す。
「……はい、結構です。それにしてもそのパーティー名とクラン名はやめたほうがいいと忠告したほうがいいんだろうけど、もうすでに冒険者ギルドの受付に言われただろうから何も言わないでおくよ」
「あの、それって言ってるに等しいってわかってます?」
「はっはっは、通っていいぞ。はい、次の方」
こうして無事ダンジョンへ入ることができた。
「うわ、広いとは言われたけど、ここまで広いのか?」
階段を降りると大きな広場がそこにはあった。そこでは人がごった返している。
「次の階段は……あそこか……とりあえず、下の階へ降りるぞ」
「ゼクスさん、そんなちまちま階段を降りることをしないで、さっさと地図を作ってゲートで移動したほうがいいと思うのですが」
「まぁ、そりゃそうだな。みんなもそれでいいか?」
「「「「はーい(なの!)」」」」
「……【マップ】……【ゲート】……それじゃあ、行こうか……ダンジョンってこんなに楽なものなのだろうか?ラノベとか見てると大変そうなの多いのにな」
「ちなみにですが、ここのボスは神具の素材になるかも知れない素材ですのできちんと狩りましょうね?」
「なんですかタルトさん、その物騒なボスは」
「ちなみに、今のゼクスさんでは勝ち目がありませんので。魔法以外では」
「あー、やっぱり?」
「今回は他の三人のレベルアップも兼ねていますから、序盤の方から行きましょう。結構な長丁場になると思いますががんばりましょう。このダンジョンの間のゼクスさんの目標は各スキルレベルがカンストすることです」
「ん~、ちょっと待とうか。どうしてカンストなんて言葉を知っているんだい?」
「乙女の秘密です♪」
「……もういいけどさ。どうせあの神様にくだらない情報を入れられたんだろ?」
「……秘密です♪」
「まぁ、いいや、ちなみにカンストってレベルいくつ?」
「スキルレベルのカンストは99ですね。一応その上のエラー表記もあります。ゼクスさんはエラー表記にたどり着くのを目指してください」
「ちょっとまって、なにげに難易度上がったよね?」
「気のせいです♪」
「……」
「気のせいです♪」
「わかったわかった。カンスト以上を目指します。これでいいか?」
「はい、了解しました。お手伝いいたしますね?他の三人もカンスト、スキルレベル99までは上げましょうね?」
「「「……」」」
「お返事は?」
「「「はーい」」」
早速人の少ない地点へと降り立ったが、あまりにも弱すぎて話にならないため、一気に人の居ないところまで潜った。ぶっちゃけ3人は武器など使わず、魔法で強制的にレベルを上げた。そして、慣れ始めた頃武器を使い始めたが、ここでも困ったことが起きてしまった。なんと武器が意味をなさない事が判明。俺の持ってる刀はタルトの分身とも言えるものだから普通に斬れるのだが、さすが鋳造品。簡単に壊れました。しょうがないので、魔法のスキルをカンストさせるという目標で頑張ることにしました。
「そっちに行ったぞ!」
「えい!」
ワイバーン並の強さらしい魔物を一撃でシェリーが屠る。
「よし、これで全滅だな。素材を集めるぞ~」
俺はまだこのあたりは弱すぎて話にならない。もちろん刀や他の戦闘スキルのレベルを上げるために戦ってはいるが、正直まともな戦闘になっていない。一瞬で後ろにまわり、背後から首を落とす。だけの作業。本当にこれ、作業だよ。
「大分慣れてきたな……っと、今何時だ?……【時計】……げっ、もう夜じゃねぇか。はーい今日はおしまい!また明日ここから始めるぞ~」
そう言うと、三人はくたくたになったようで、ぺたんと座り込んだ。俺もそうだったが、不老不死になってしばらくは人間の習慣が抜けない。要するに夜になると寝たくなるのだ。
「とりあえず、みんなで冒険者ギルドに行って、今日狩った魔物を売りに行こう。そしたら宿に戻ってみんなは寝ていいぞ~」
「「「は~い」」」
「【ゲート】」
俺はゲートを開いて、出口用の階段の近くに移動する。そして、出口からちゃんと出る。そうしないと記録されているみたいだしな。一応今から冒険者ギルドに行くからそのあたりなんとかならないか、聞いてみよう。
「すみません、魔物の買い取りをしてほしいのですがよろしいでしょうか?」
「はい、常時受け付けております。魔物の素材はどちらに?」
「あっ、魔法で収納してます」
「え?」
「あ、はい。もうその反応はいいので、とりあえず、解体場まで連れて行ってください」
「あ、は、はい」
解体場まで行き、魔物を出す。一気に出したのではここに入りきらなくなるため、魔物の種類ずつ出していく。
「これが、15体、これが、27体、これが8体、これが42体……」
「おいおい、まだあるのか?」
「ん~、今日取れたのはもう少し。で、これが22体、これが12体。これで終わりだな。解体はこっちがする。魔法でできるからな。肉とかも買い取ってくれるのか?」
「……」
「ん?おーい……聞いてる?」
「……あ、ああ、すまん。肉は食用になるやつとならないやつがある。今回のは半々ってところだな……お前さんらはランクいくつだ?」
「俺ら3人はBランクで、こっちの3人が登録したばかりでGランクだ」
「お前ら3人は問答無用でAランクな。そっちの新人もBランク強制な。とは言え、Aランクの申請はしばらく時間がかかると思うが……こっちの方で手配しておく」
「……あっ、はい」
なんか話が変な方向へ転がってる気がする。
「それで買い取りだが、ここまで多く持ってきたやつは初めてだ……それにこんなに強力な個体ばかり……しかも魔道具じゃなくて魔法だと?一体どうなってんだ?」
「あー、そのあたりは気にしない方向でお願いします」
「……とりあえず先に解体だな。さっきの全部は無理だが、少しずつ出してくれ」
「あー、解体はこっちでやりますよ?」
「解体の技術があるのか?」
「魔法でなんとかします」
「魔法ってそんなに便利なものじゃなかったと思うんだがな?」
「いや、そんなもんですって」
「……まぁ、いい」
「じゃあ、とりあえず一種類ずつ出します……はい。これのどれが食用ですか?」
「……これと、これと、これだな」
「わかりました。とりあえず、肉いらないコイツラから片付けます……【解体】」
すると、肉は綺麗サッパリ消え去り、素材として有用なものだけが残る。
「おいおい、これの毒袋なんて始めてみたぞ?……どうやってんだ?」
「魔法です」
「だから、魔法はそんなに万能なわけ無いだろ!」
「まぁ、まぁ、いいじゃないですか……それじゃあ、次々行きますね」
こうして全てを解体した。食肉は全部売れなかったが、毎日少しずつ売りに来てくれとのことだった。保存が利かないのだろうか。
「……査定が終わった。一応このギルドの総資金の1割がここにある。これがお前らの取り分だ」
「お~、そんなにもらっていいんですか?」
「構わねぇよ。これらを加工するため、相当な腕が必要になるが、まぁ、加工できないわけじゃない。その後売上につながるから問題ないさ」
「じゃあ、ありがたくいただきます」
「それと、そっちの新人三人は受付にギルドカードを持っていけ。ランクがBまで上がるはずだ」
「本当にそんなにヌルくていいんですか?」
「ぬるいだぁ?おいおい、これだけの魔物を狩っておいてBランク以下にできるかよ!本当はAランクに推薦したいが、流石にいきなりAは無理だろうからな」
「まぁ、いいですけど。じゃあ帰りに受付に寄ってから帰ります」
「……まぁ、その魔法があれば大丈夫だと思うが大金だ気をつけろよ」
「ああ、ありがとうな」
そう言うと解体場のおっちゃんと別れて、受付に行き、シェリーとミア、シアのギルドカードを渡す。そして、Bランクになったギルドカードが戻ってきた。ちなみに入り口から入って出口から出ないと駄目だそうな。面倒だ。
「じゃあ、今日はお疲れ様。帰ろっか【ゲート】」
「「「「「はーい」」」」」
こうして宿までゲートで戻ってきた。
「お疲れ様、初めてのダンジョンはどうだった?」
「とにかく疲れました~」
「お腹空いた……気がする」
「わたしも」
三人共かなりへばってるようだ。
「まぁ、ゆっくり休みな。俺はまともに狩りしてないからもっと奥に行って狩ってくる」
「い、今からですか!」
「ああ、問題があるか?」
「い、いえ、不老不死になると寝なくてもいいっては聞きましたけど……本当に不眠不休で?」
「まぁな、体力は食うし疲れるけど別に我慢出来ないほどじゃない。空腹感もちゃんとあるけど無理したって別に問題はない。強いて言うなら、モチベーションが下がるくらいかな?」
「す、すごいですね」
「私達もいつかは」
「お姉ちゃん……」
こうして三人の初めてのダンジョンは無事(?)終了した。
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