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第九話

「……何を言ってるんですか?」

「いや、マジレスすんなって」

「なんですか?それ?冗談ですか?」

「いきなり現実に引き戻された感じだ……だが、嘘じゃない。俺の眷属、所謂亜神という存在になってみないかと誘ってる」

「あ、亜神様になれるの?本当に?いやいや、ありえないでしょ!」

「さっきも言ったけど、これは神様からの使命でもあってね。俺の目的はこの世にいる亜神と会って、今後のことを聞くこと。死にたければ殺して上げる必要がある。なにせ不老不死だからな。俺にはその力がある。と言っても神様からの借り物だがな。その他に、亜神を増やすことも目的の一つだ。で、見事君が選ばれたわけ。選定理由はさっき言ったけど、君を気に入ったから」

「そ、そんな理由でいいんですか!?」

「どんな理由だろうが俺の勝手だそうだ。なんでも、神様と俺は同じ性癖を持っているらしくてな。俺が選んだ人物は間違いなく神様も好みだから、亜神にしたって問題ない。というか俺の魂が君を亜神にしろと叫んでいる気がする」


 そう言うとちょっと引き始めた。


「で、本題だけど、亜神になるつもりはない?」

「……不老不死なんですよね」

「そうだね」

「私なんかが亜神様になれるなんて」

「可能だよ?」

「でもでも……」

「まぁ、今すぐ決めろ!ってわけじゃない。俺は少なくても数日はここに居る。その間に決めてくれ。まぁ、それでも考える時間は短いかもしれないが」

「わ、わかりました。か、考えます……」

「今日はもう自分の部屋に戻りなさい。お礼とかそういうのはいいから。今日は忙しくて疲れただろ?」

「……はい」

「じゃあ、ゆっくり休んで、ゆっくり考えて答えを出せばいいよ。もっと考える時間がほしければ滞在日数を増やしたっていいんだし」

「……わかりました。この話はお母さんにしても?」

「構わないよ。好きにするといい」

「……わかりました。今日のところは、その、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。ゆっくり休んでね」

「は、はい」


 そう言うとすごすごと部屋を出ていった。


「そして、タルト、ピュア、そういうことはないから早く出てきなさい」

(あら?よろしいのですか?)

(いいの?おにーちゃん?)

「いいから来なさい」


 そう言うとタルトとピュアは出てくる。


「とりあえず、聞いていたか?」

「はい、ちゃんと聞いていましたよ」

「きいてたの!」

「というわけで、シェリーが望めば亜神にするつもりだ」

「それで構わないと思います」

「おにーちゃん、だいじょーぶなの!」

「何が大丈夫かわからないが、とりあえず明日から領主様の仕事がある。即金で支払ってくれるそうだから、明日にはここにお金を支払えると思う。その間なにかしてても構わないが、問題だけは起こさないでくれよ?」

「今日問題を起こしたあなたがそれをいいますか?」

「うっ、それを言われると反論できねぇ」

「うふふ、冗談です」

「まぁ、いいさ。とりあえず、しばらくはここでお世話になって、シェリーが判断したら王都へ向かおう」

「そうですね。王都に向かうのは賛成ですが、その前にダンジョンに寄っていきましょう」

「何処かいい場所があるのか?」

「この国の中でも最大級の迷宮が王都に行く途中にあります。少し、道はそれるのですが」

「そうなのか」

「はい。そこで経験値を稼いで、素材を……そう言えばゼクスさん、素材の解体も魔法でやればすぐ終わるのでは?」

「あ」


 そう言えばそうだな。


「あ、明日の朝ギルドに行って解体してくる」

「それがいいかと思います。私達はここでくつろいでいますので、ゼクスさんはお好きなようにしてくださいな」

「おにーちゃん、がんばれなの!」

「とりあえず、今日は寝よう」

「寝るのは構いませんが、寝具もなしにですか?」

「ん、多分シェリーが演る予定だったんだろうな……よっと」


 俺はふすまを開けて、布団を取り出す。そして、テーブルを片付け、布団を敷く。


「これが寝具だ。じゃあ、寝るぞ。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

「おやすみなの!」


 こうして怒涛の一日は終わった。



 次の日。俺は早速冒険者ギルドに行って魔物の解体をきれいに行った。そして、莫大な金額を得た。そして、俺は立ち去ろうとしたら、止められた。なんでもランクアップがあるとのこと。で、結果いきなりBランクに俺たち三人共上がった。


「それで、クランですが、立ち上げますか?」

「ああ、そう言えばそういうのもあったな」

「多分何処のクランにも入れないと思いますので」

「そうだな。じゃあとりあえずクランを設立するかな……ちなみに拠点を移す場合は言えばいいの?」

「そうですね。基本的に何処か別な場所に拠点を移す場合申告が必要です。一応守らなかった場合罰則があるので注意してください。クランのメンバーが分かれる場合もそのように伝えてくだされば結構です」

「わかりました。とりあえず、残り二人は留守番しているけど、構わないか?」

「いえ、お二方のうちどちらかが居ないと駄目ですね」

「じゃあ、ちょっと待っててください。【ゲート】」


 俺は旅籠の部屋に直接つなぐ。


「おーい、タルト、ピュア、お仕事」

「どうされました?」

「二人共Bランクの冒険者になれたぞ。そして、クランを立ち上げたいが、そのためには二人に来てほしい」

「わかりました」

「わかったの!」

「じゃあ、行くぞ【ゲート】」


 そして、冒険者ギルドの受付の前に出てくる。


「只今戻りました」

「い、今のは魔法ですか!?」

「あ、はい。その反応はもう良いので手続きをお願いします」

「わ、わかりました。それではゼクス様の方はギルドカードをBランクにしました。お二方のギルドカードをお貸しください」


 タルトとピュアはギルドカードを渡す。


「……はい結構です。これでBランク冒険者にお二方ともなりました」

「で、クランの話だけど」

「はい。お二方はクランの設立に賛成いたしますか?」

「ええ、私は賛成です」

「わたしも!」

「わかりました、それではクランを設立いたします。再度お三方のギルドカードをお貸しください。クラン名は何にしますか?」

「俺が決めていいか?」

「ええ、どうぞ」

「いいよー!」

「じゃあ「亜神の住処」で登録をお願いします」


 再度周りの空気が凍りついたような気がする。


「はぁ、やはりそういう名前ですか。わかりました。クランの募集は……しても誰も来ないと思いますがしますか?」

「いや、しません」

「わかりました……はい。それでは終了です。こちらがギルドカードになります」


 三人共ギルドカードを受け取る。


「ありがとうね」


 俺は受付の人にそう言うと、再度ゲートで二人を宿屋に連れていき、俺は領主の館にゲートで向かった。


 そして、一日中、未解決事件を解決しまくった。といっても言うほど数はなかった。ちなみに、過去に悪行を働いた事実がなければ魔法発動しても何も映らない。ということがわかった。こうして、お城の牢獄に居た人達は綺麗サッパリ次の日には居なくなっていたそうな。そして、これからもなにかあったら頼らせてもらうと言われたが、王都に魔物を売りに行く。そして、拠点を移すかも知れないというと、泣いてすがられた。だが俺は断る。


 閑話休題。


 こうして、たった一日でやることがなくなってしまったのだった。そして、その日の夜。


「失礼します」

「ん?シェリーか?」

「は、はい」

「どうした?布団なら自分でおろせるぞ?」

「いえ、そうじゃなくて、いや、それもですけど」

「何だ?かしこまって?」

「その、母とも話しましたが、その」

「いやいや、もう少しゆっくり考えていいんだよ?やることなくなっちゃったけど、別にダンジョンに行けばいいだけの話だから問題ないよ?」

「いえ、決めたんです」

「そうか。まぁ、納得しているなら構わないよ」

「僕……いや、私は先月成人しました」

「お~おめでとう」

「あ、ありがとうございます」

「で?」

「その、母には自分で決めなさいと。それ以前にそんな話鵜呑みにできないと」

「まぁ、前者はどうかと思うが、後者はそうだろうな」

「それで私はどうしたいか考えたんです」

「……」

「それで、決めました。私は亜神になります」

「……決めたきっかけと理由を教えてくれるか?」

「ふぇ?え?あの、その……言わないと駄目ですか?」

「駄目だね。これは人生を左右する問題だ。どういった覚悟で決めたのか、それを俺は背負わなければならないと思ってる。だから聞かせてくれないか?」

「……ひ、一目惚れです!」

「………………は?」

「その、道端で会った時に……その……あの……それで、宿の話をしてたので……アタックしてみました……そしたら来てくれるって……」

「そ、そうだったのか……まぁ、わかった。そういう理由だということを俺は理解した。亜神になるということは、っていう説明をこの数日でするつもりだったんだが……その説明をしてもいいか?」

「は、はい!」

「とりあえず、俺についてくるか、ここに残るかは自由だ。ただし、ある程度まで戦闘はこなせるようになってもらう。そのつもりで居てくれ。それとこれは俺のわがままだが、さっき自由とは言ったものの、できれば俺についてきてほしい。理由としては、まだ俺が未熟だってこと。他の亜神と接触するには時期尚早すぎる。だから戦力がほしいんだ」

「それは、わかりました。私はすでにもうついていくって決めています。母にも先程話しました。家を出るって言ったらせめて数日は待ってと頼まれましたが」

「どういうことだ?」

「私が宿の従業員とも言えるので、私が居なくなると大変です。誰かを雇うまではとのことです」

「あ、ああ、本当になんか物分りが良すぎないか?お前のお母さん?」

「あ、あはは、でね。本当に亜神になれるかわからないけど、彼についていくって言ったら「しょうがないね」って」

「そうか……本当に何者だお前の母親は?」

「と、とにかく、よろしくお願いします!」

「わかった。とりあえず、眷属のスキルを使うのは初めてだからな。少し緊張するが、まぁなるようになるさ」

「はい!」

「じゃあ、始めるぞ。横たわってくれ……【眷属化】」


 するとシェリーの体が輝き始めた。それと同時に苦痛に顔が歪む。肉体が神のものへと変革しているのがわかる。しばらくすると光は収まり、苦痛に歪んだ顔がもとに戻る。血の気もいいようだ。が、気を失っている。


「しばらく起きるまで待ってるか」

「そうですね」

「はいなの!」


 30分ぐらい経った頃だろうか。シェリーの意識は戻った。


「えーっとここは?」

「おいおい、自分の家を忘れるか?」

「あれ?神様は?」

「ああ、神様に会ってたのか?」

「う、うん。神様に色々説明してもらってた」

「うん。なんかそこはかとなく嫌な予感がする」

「ゼクス様も神様で、私が眷属、亜神になったってことと、ゼクス様が本物のロリコンだということと神様もロリコンだということが」

「ああ、やっぱりね。今度神様と会ったらとっちめよう」

「多分無理だと思われますよ?」

「この肉体を強化しても?」

「将来的にはどうかわかりませんが……何億年かかるか……」

「そんなに絶望的なのか!」

「ええと……多分?」

「……まぁ、いいさ。とりあえず、おめでとう。今日から俺の眷属で亜神だ」

「はい!」


 こうして俺の初めての眷属、亜神が仲間になった。

お読みいただきありがとうございます。

誤字、脱字等ありましたらお知らせいただけると幸いです。

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