ピーマンに糞を詰めた時。
冬、27年半付き合っている彼女と別れた。
別れたというのか、なんとも言えない離れ方をした。
そして世界は灰色になった。
春、世界は真っ黒になった。
これは彼女と別れたのが原因ではなく、ピーマンの糞詰を食べたからである。
そう、俺は失明した。
※
光の届かない生活にはもう慣れた。
目の見えない人生なんて彼女が居ない人生と比べたらこれっぽっちも悲しくもなんともなかった。
目が見えない分、耳は冴えている。幻聴すら聞こえるほどに。夜な夜な、枕元で
「フライパンをかじるな~…」
という声が聞こえる。非常に怖い。
夏、そんな生活が続いたがふと耳元で囁くモノとの会話を試みた。
?「フライパンをかじるな~…」
俺「お前はルフィか??」
?「???!!!」
あまりにも適当な返答をしたがモノは初めて反応してくれた喜びからか、声色を変えて続けた。
?「オマエ…海賊か?」
俺「いや、海賊っちゅーか、中華っちゅうか、なんつて笑」
俺の最高のギャグがタバコの煙のように部屋に蔓延した。
するとモノは続けた。
?「彼女に…アイタイカッ?」
俺はモノの不自然な喋り方、どこか懐かしく感じた。
俺「彼女とかどうでもいいわwてかアンタ会ったことあるよな?誰だ?ほんとにルフィか?w」
また俺のギャグがタバコの煙のように蔓延した。
非喫煙者だったらむせているところさ。
なんて糞みたいなことを思っていたらモノは重そうな口を開いた。重いのではなく。あくまで重そうというやつだ。
?「アレダ…オマエ…ゲーム好きだろ?カッ」
…!
……!
………!
俺は思い出した。こいつ、太鼓の達人のドンちゃんの隣にいた水色の気持ち悪いやつだ!!!
俺は興奮して6階の窓から飛び下りた。
冬、俺は地獄で彼女との再開を遂げた。