第8話 ダンジョンボス再び現る
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現在、『鼠ノ洞窟』地下6階。ダンジョン探索進行状況…0。
「いないわね」
「いないね」
「本当にいないな! はっはっはっは!」
「どうして魔物が一体も出て来ないんですかね…?」
ダンジョンを潜った階で言うと一見進んでいるが、これまでにダンジョンへ入ってからまだ一体たりとも琥珀たちは見かけていなかった。
「このままだと本当に新しい武器の練習が出来なくなってしまうぞ!」
「まあ、ディアブルそんな熱くならなくても…。次の階ではいつもみたいに魔物が現れるわよ………多分….」
そうして琥珀たちはあっという間に地下12階まで辿り着いていた。そして琥珀たちは異常な光景を目の当たりにした。
「おいおい、こりゃどうなってんだ?」
「エルク、何か不味いことになってそうね」
地下12階はこのパーティー以外、未だ攻略されていなかったはずだがボス部屋の前には数百人もの冒険者たちが集まっていた。彼らの装備は見るからにランクBからAであり、集団で固まりながら行けば来られないわけでは無いのだが、様々な分岐点がありその一番奥に存在するこのボス部屋は決して一日で探し当てられるようなものでは無い。では一体どうやって彼らがこのボス部屋まで来られたのだろうか? 琥珀が予想するにこのダンジョン内では魔物もトラップなども今は作動していないのだろう。つまりここにいる数百名の冒険者たちがそれぞれバラバラに道を進み、ボス部屋を探し当てても絶対に12階の階段前まで戻ってくるというのを約束し、最後にそのボス部屋を探し当てた者にボス部屋を案内させてここまで来たということなのだろう。その証拠に今となって気づくが、確かにここに来るまでの道のりの各分岐点には必ず光広石が壁に刺さっていたような気もする。
しかし初めて地下12階へ足を踏み入れるとなれば恐れるものは多いはずだが、この階でも魔物やトラップが作動していないことを祈り、ここまで来くることが出来たということは余程の優れた指導者がここに集まっている冒険者たちの中にいるはずだ。
5人は彼らの元へと近寄ると何やらその冒険者たちの中で抗議し合っている者が3人。
「だからだな! いくらこの人数で挑んだとしても勝てる勝算がどこにある!?」
その講義し合っている者の中の一人は筋肉が浮き出て見えるほどの筋肉を有したガタイの大きい中年男性が一人。彼はいかにも前衛であり手に持っている物は盾。要は彼は盾使いだ。
「わからない。だからこそ冒険者たるもの命を懸けてでもボスに挑んでみてもいいのではないか? いつまでもこんな小さく外部の冒険者の立ち寄らないようなダンジョンで一生狩り続けるのは嫌だろ? さあ、俺と共にボスに挑みたいものはいないか?」
その中年男性の正面に立ち抗議しているのは短髪で黒髪の若い男。彼は背中に剣を背負っており、彼はダンジョンボスに挑もうとしているようだ。
「おい、ガキ。魔物が12階まで一体たりとも現れなかったのはこのダンジョンで狩りを20年間以上してきた俺でも初めてだ。お前の言う通り、これはこのダンジョン史上最もボスに集団で挑むことの出来るチャンスなのかもしれない。だが前例で10年前、S級の冒険者たち12人がエストの都市部のダンジョンボスに挑み、その後逃げ帰ってきたっていう噂を聞いたことがあるだろ!S級の冒険者12人でもダンジョンボスに返り討ちにされたんだ。俺達が束になって挑んでも結果は見えている」
どうやらこの盾使いはダンジョンボスに挑むことに反対のようだ。
「そうだそうだ!」
と、中年冒険者の隣に立っていた若い男が中年冒険者に同意して声を上げた。すると中年冒険者の隣の反対側に立つ老人がそれに異論の声をあげた。
「ベルク、わしはそんな噂聞いたことが無い」
「うるせぇジジイ! てめぇは覚えてねぇだけだろ」
「いや、俺もそんな噂は聞いたことが無いよ~?」
真面目な顔で中年冒険者の仲間と思われる先程、彼の隣で彼に同意していた若い男が手のひらを返し、彼の言っていた12人のSランク冒険者が返り討ちにあったという噂をまるで本当に聞いたことが無かったかのように言った。ちなみにあの中年冒険者、ベルクというらしい。
「は? さっきお前、俺の話に同意してたじゃねえか!? この裏切り者めっ!」
と、まあベルクとその隣に立つ若い男と老人の言う噂はどうでもいいとして…。彼らはここへ辿り着けてはいるが、今何故このダンジョン内には魔物がおらず、全てのトラップが作動していないのかということに関しては全く彼らにも判らないようだ。
「どうする?」
「琥珀、私思ったのだけど魔物が現れないのは私達がボスを倒したのが理由なのではないかしら?」
「まあ、ボスを倒したからといってダンジョン内の魔物が全て現れなくなるっているのは無いと思うが、きっかけはそうと考えて良い」
「つまりボスを倒したことが影響したのではないが、原因はボスを倒した時、又はボスを倒した時のとある条件によって成りゆく現象というわけだな?」
琥珀の予想以上のディアブルの察し。「きっかけはそうと考えて良い」という琥珀の言葉だけでそこまで考えれるとは…。
「なるほど。確かにこのような事態は前例に聞いたことがないであるからな~。」
そしてエルクもディアブルによって理解したようだ。
「ねぇ? つまりどういうことなの?」
「つまりだな…。魔物が現在、ダンジョン内で現れないのはボスを俺達が倒したことが理由では無いと琥珀と俺は考えている」
「それはどうしてかしら?」
「エレガ、おかしいとは思わないか? 以前、ダンジョンボスを倒したという前例は多くは無いものの、数回は報告されている。だがその時、ダンジョン内の魔物が現れなくなったという事は聞いたことが無い」
「なるほど。だから二人はダンジョンボスを倒したことがきっかけじゃないって考えているわけね! でもこのダンジョンが特別ってわけではことは?」
「可能性は低いだろうな」
まあ、可能性は低い。だがそうであってほしいと願う。何故ならもう一つの可能性は――――
ドス゛ン…..
重い音が響き渡る。その音はボス部屋からのものだ。
ボス部屋は何故から琥珀たちがここへ辿り着いた時からずっと扉が開いたままだ。数十人もの冒険者が横一列に並んでも入れるような縦横巨大な扉。そして最初に見た時にはボス部屋の中にダンジョンボスはいなかったはずだが…。
「何? 何の音?」
「きゃあああ!」
「うっっっ…」
この空間中に響き渡る巨大な物体が高い場所から墜落したかのような音。そしてそれにより発生した地響き。冒険者たちの中の女冒険者たちからはそれに驚き、おもわず叫ぶ人が数名。そして地響きが収まるとこの場の者は全員、恐る恐るボス部屋の中を見た。
「なっ…なんだありゃ!? あれがこのダンジョンのボスかよ…」
巨大鼠。しかし前回琥珀たちが戦った巨大鼠とは違う。形は以前と同じであり体に覆われている鉄のようなものと尻尾に付いた鋭い刃のようなものも同じだ。しかし色が違う。以前の巨大鼠は全体的に紫と茶色で染まっていたが、今は体中が黒であり、尻尾の部分がエメラルドグリーンに光っている。
琥珀の考える中で最悪の可能性が現実となってしまった。
冒険者は一刻も早く逃げようと琥珀たちの後ろを駆けていく…が、ある一定の場所まで下がると冒険者たちは足を止めた。
「って、そういえばダンジョンボスはボス部屋から出られねえんだったな。ついビビッて逃げちまったぜ」
「そういえばそうだった…。迫力あり過ぎ….」
「本当にボス部屋から出てき…そ….….」
途中で男からの言葉が止まった。
ボス部屋からは巨大鼠の足が一歩ずつ踏み出されており、ボス部屋の扉を通りゆっくりと出てくる。
「ダンジョンボスがボス部屋から出ているだと?」
「ぎゃあ゛あ゛あ゛!!!」
予想通り。
ダンジョンボスがボス部屋から出てきたのはほぼ確実に琥珀があの特殊なレアアイテムをボスから手に入れたからだ。多分、あれは琥珀が何かしらの条件をクリアした際に与えられたアイテム。そして現在分かっている耐久値無限という能力はとても価値が高い。
以前、琥珀が暗殺者だった時、噂として偶々耳に入ったことなのだが、強い冒険者がそのダンジョン内で死ぬと次の月には必ず強力な魔物がダンジョン内に多数生み出されると。ということはこのダンジョンは冒険者の何かを資源として魔物やトラップを新たに生成しているのではないだろうか。琥珀のこの予想が合っているとすれば何故このようにダンジョンボスがボス部屋から出てきているのかと言えば、琥珀がこの特殊な短剣を獲たことによりダンジョンの資源が少なくなったからだろう。つまり、それを取り戻すために他の冒険者を複数まとめて殺せるような魔物をこのダンジョンは今、生成したということだ。
魔物がいない=ラッキー → 魔物がいない=資源不足
と、考えれば各階に魔物を生成する為の資源を全て今、この目の前に存在する巨大鼠につぎ込み冒険者たちを集団でまとめて殺すために生成されたとすれば全てに合点がいく。
今回は本気で逃げ出す冒険者たち。皆、非常口階段へと一直線に走っていく。
「全員、逃げろーーー!!!」
そう叫ぶ男。先程ダンジョンボスへ挑もうとしていた若い剣士だ。そしてその周りには彼のパーティーと思われる冒険者たち、そして先程彼と抗議していたベルク、老人、そしてその隣に立っていた若い男と杖を何故か二本持った若い女性。
この状況、彼らも逃げるべきだと思うのだが…。
これからも常に面白く、そして読者様がワクワクして見て頂けるように頑張って書くのでよろしくお願いします!!!