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第27話 ミルド冒険者ギルド

 扉を開けるとギルド内には冒険者たちが大勢くつろいでいた。殆どが4、5人のパーティーで固まっており、何かを話し合っていた。しかしギルド内に琥珀たち6人が入るとギルド内が徐々に静まり返り、周りの殆どの視線がこちらへ向いた。


「何かいきなり静かになったわね…」


「ああ。こちらでも俺達の事が知れ渡っているということだろう。それよりさっさと依頼を探すぞ」


「りょうかーい!」


 静まり返ったギルド内をまるで何ともないかのように依頼板まで足を運ぶ。周りの目線は常に琥珀たちに向いているが、もうあまり気にはならない。エレガはここまで自分達の事が知れ渡っているとは思っていなかったのか驚いていたが、ミルドとエルドはかなり近い。この距離間なら様々な噂が飛び交っていても不思議ではない。そして琥珀たちがギルド内に現れるといきなり静かになるなどもうエルドの冒険者ギルドではよくあることであり、もうこの雰囲気には慣れている。


 と、依頼板に貼ってあるS級の依頼書で出来るだけ早く達成できそうなものから探し出そうとしていると


「よう、また会ったな!」


 背後から肩を掴まれ、気づき後ろを振り向くとそこにはボス戦で以前、戦闘の場にいた中年男性、確か名前は…


「オーバースペルのベルクだ。以前、『鼠ノ洞窟』のボスとの戦闘で世話になった」


 そういえばそんな名前だったかもしれないな。と、思っているとベルクの後ろには彼のパーティーメンバーたちがいることに気づいた。


「ヴァイスよ。助けてくれてありがとう」


「あ! 前会った子じゃない! 怪我はもう治ったの?」


 エレガがヴァイスたちに気づき、後ろを振り向きそう言った。


「ええ。もう傷はこの通り。あなた達のお蔭で全員、元通りに回復したわ」


「そう。なら良かったわ! ところで何故、ここに?」


「私達もこのダンジョンへ探索に来たの。『鼠ノ洞窟』は最近まで魔物の数が少なくてあまり狩りが出来なかったからね。ここ数日はまた魔物が増えたみたいだけれど、どうせなら新しく出来たこのダンジョンで狩りをしようかと思ってね」


「そうなのね! じゃあまたこの先、ダンジョンで会うかも知れないわね」


「ええ。そうね」


 と、エレガとヴァイスの話を聞いている間にエルク、ディアブル、メルが依頼を見つけたようだ。


「琥珀、この依頼はどうだ?」


 ディアブルは琥珀に2枚の紙を差し出し、見せた。


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 依頼ランクSS


 内容:中級ボスのコア回収

 報酬:30万


 対象ランク個人(-A)以上


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 依頼ランクA


 内容:中級ボス戦に参加

 報酬:2000(一人あたり)


 対象ランク個人(-A)以上


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 二枚とも中級ボス関連の依頼書であり、二枚目からすると近々大規模戦闘が行われるようだ。しかし中級ボス部屋には入場制限というものがある。中級ボス部屋に25人が入室すると必ず中級ボス部屋の門には透明な壁が現れ残りの冒険者たちは絶対に入室することが出来なくなる。そしてそれに加え、門の扉が閉まってしまうため中を窺えるのは序盤の方だけ。そして中級ボスが厄介な一番の理由は最下層のボス以上に体力が異常に多いことだ。もし中級ボス戦に一人でも弱い冒険者が混ざっていた場合、それは死に繋がってしまうことになり兼ねない。


 ちなみにこのパーティーは平均が-Aランク。勿論、Bランクである琥珀がその平均を大幅に下げてしまっていることもあるがこのパーティーの中で最高ランクのエレガでさえ-Sランクなのだからこの依頼は受けたとしても必ず参加に落選する。エレガだけなら必ず参加可能だと思うが、パーティーでとなると絶対に無理だ。


「かなり良いとは思うが…。これ対象ランクが“個人”で-AランクだからBランクの俺とB+ランクのメルは参加できない」


「確かに…。では他の依頼を…」


 と、ディアブルが最後まで言おうとすると、


「あっ、あの良ければ俺達とこの依頼、受けないか?」


 と、ベルクは一枚の依頼書を差し出した。


 ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 依頼ランクS


 内容:地下1階~10階のマッピング

 報酬: 20万

 期間:1週間


 対象ランク(不要)

 詳細:地下1階~10階までの全ての道やトラップ、危険地帯と安全地帯をマップに表示し提出。提出後、一度使いの者を地下10階まで案内。報酬支払は案内後。


 ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 どうやらかなり美味しい依頼のようだ。依頼主はあらかた想像できる。そもそも使いの者と詳細に書かれている時点でこれは貴族のボンボン冒険者か遠くからのSランク級冒険者。これなら依頼主の金銭的な心配は必要無さそうだ。


「これは良い。楽そうな依頼で結構じゃないか! はっはっは!」


「確かにこれなら他にこの依頼を受けている冒険者たちにも後れを取られることは無さそうだしもし他に依頼を達成した冒険者たちがいたとしても途中で狩った魔物を売れるから損は無いわね!」


 エレガとエルクはベルクの申し出に乗り気のようだ。そしてベルクはニコリと「どうだ?」といった感じで笑みを見せた。勿論OKだ。断る理由が無い。


「では俺達もオーバースペルの依頼に参加させてもらおう」


 そう言い、琥珀はベルクと握手を交わす。しかし琥珀は一つだけ確認をした。


「報酬の分配は半分? それとも人数で割るか?」


「それは勿論、半分で」


「くくっ」と、悪い笑みをしながらも握手を続けるベルクに琥珀は苦笑いで返すのだった。


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