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第23話 ダンジョンを有名に

「で、今のは?」


「聞いての通り、ミルリド王子だ」


「だけどここって国の法律に反する場所よね?」


「ああ。まあ、ここには貴族なども入り込んでいるからな。それにそもそも経営者が…な…」


「ん? 経営者がどうし―――」


 と、エレガが問おうとした時、琥珀はシャルドが目の前に立っていることに気づいた。


「あの…闇の帝王様からお客様方へのVIP室入場許可が出ています。お客様方の誘導と招待をさせて頂きます」


 琥珀は「はぁ…」と、ため息をつくとシャルドに言った。


「いや、結構だ。その闇の帝王様とやらには“復讐の意は無い”と、伝えてくれ」


「え? あの…」


 意味が解らないといった顔だ。まあ先程、闇館での出来事を知らないシャルドには当然の事だ。


「闇の帝王にはVIP室入場を俺達が断って帰ったと言えばいい」


 もうこの場にあまり長居はしたくない。そして自称闇の帝王である国王に話す気は無い。この場所に来た理由はMPポットを買うためだけであり、国王にも王子にも用は無い。


「は…はい」


「では俺達はもう表の世界へと戻らせてもらう。必要な物は買い終わったからな」


 そうして琥珀とパーティーメンバー6人は速やかに闇市場を出て行ったのだった。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


「エレガ、これを適当にそこら辺に置いてくれないか?」


「ええ。わかったわ。」


 エレガは琥珀の指示を受けMPポットを言われた通り、地面の適当な場所に置きその場から離れる。


「【吸収】」


 琥珀が吸収を始めると徐々にMPポット内の魔力が徐々に濃い紫から紫、そして最後には透明に。


「ダンジョンの総合MP量の回復というわけだな?」


 ディアブルはそう言い、ダンジョンの情報画面を表示した。流石、ディアブルだ。いつもながら理解が早い。


「ああ。最近、ダンジョンの総合MP量が減り、それと共にダンジョン内の魔物数が少なくなった。そして勿論の事、魔物数の減少したこのダンジョンに来る冒険者たちも以前と比べてかなり減った。だから今回はこのMPポットでダンジョン総合魔力量を増やしたってわけだ」


 と、琥珀が説明するとエルク、メル、セインがダンジョンの情報画面を表示し始める。


「ホントだね~。確かに“ダンジョン魔物管理各階”ってやつが20に減ってるね! 前は確か…50? 60?」


「300だ」


「さ、三百!!? 滅茶苦茶少なくなってる!」


 セインは以前との差に驚き、不安を感じているようだ。多分、自分の収入の心配だとは思うが…。


「まあ、今魔力量を100万MP回復させたから魔物の数も回復するはずだ。そして当分は魔力の事を気にする必要も無い」


「でもかなりの出費でしたね。今、残金どのくらいなんですか?」


「痛いところを突くな…メル…。残金、3万だ」


「3万!? それってかなりヤバいじゃないの?」


「まあ、落ち着け。だからこそこれからこの『鼠ノ洞窟』を有名にしていこうと思う」


「どうやって? 言っとくけど私達はそこまで有名じゃないから他の町のギルドで紹介をしても来てくれる冒険者なんて一人もいないわよ? まあ、琥珀ならお金…じゃないわね…。知り合いとかに噂を広めてもらうとかするのだと思うのだけれど…」


 エレガは疑問に思いながらも必ず琥珀が何かしらしてくれるのだろうともう既に琥珀に頼る体勢は整っているようだ。


 だが残念ながら琥珀の知り合いに金無しで噂を広めてくれる者はいない。なんせ琥珀の知り合いといえばほぼ全てが暗殺や闇商売など裏での職業の者だけなのだから。彼らは金を払わなければ何一つ行動しない。そして現在、金欠に近い琥珀は人を雇う金は無い。つまりそれ以外の方法で今回は『鼠ノ洞窟』を有名にしなければならないというわけだ。


「まず『鼠ノ洞窟』を有名にする前にこのパーティーを有名する必要がある」


「なるほど。有名度の高いランクSなどの冒険者がダンジョンを勧めると各地から他の冒険者たちがそのダンジョンに集まるように俺達も有名になりこのダンジョンを勧めればそれと同様の事が起きるってわけだな! 流石、琥珀! 冒険者狩りには少し飽きていたからな! はっはっはっは!!!」


 大声で笑うエルク。エルクの笑い声がこの空間全体に響き渡り、地下5階の行き止まり地点で話合っているとはいえ少々、他の冒険者たちに聞こえないか心配だ。


「ちょっと…! エルク…! 言っとくけどここダンジョンの中なのよ!? …もし…誰かに聞かれたら…」


「おお。悪い悪い。いつもの癖でな」


「セイン、周辺に冒険者の気配は?」


「いないよ~?」


 運がいい。今のはもし周辺に他の冒険者たちがいたのならば絶対に聞こえていたと思っていたが…。冒険者がいないと分かり、ほっとする琥珀。もし冒険者が聞いていれば確実に口封じのために殺さなければならなかっただろう。


「まあ、次から気を付けてくれ。無駄な戦闘は省きたいからな。で、話の続きだがエルク、お前の言った通りSランク級になった俺達がこのダンジョンを勧めればここへ来る冒険者は増す。だが新たなるSランク級の冒険者がこのダンジョンから生まれたとなれば必然的にこのダンジョンに冒険者たちは増える。そして手っ取り早い話、高難易度クエストをこの一ヶ月の間に出来るだけ多く、そして早く達成して期待のルーキー冒険者チームというイメージを他の冒険者たちに植え付けるんだ」


「でも…。そもそも高難易度クエストって…。あまりこの町のギルドには依頼が来ないですよ…?」


「…………」


 なるほど。予想外の問題点。

 いくら実力があれどもその実力を活用する場所と機会が無ければ無駄になってしまう。


 琥珀は少し考え、数秒後にはもう琥珀にはその問題の解決策を尋常じゃない速さで考え終わったのだった。

六日間、バイトと勉強が忙しく投稿できていませんでした。

しかし、今日からはまた小説投稿を再開していくのでよろしくお願いします。

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