第22話 購入と黒いフードの男
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「ようこそ闇館へ。私は貴方様の御案内を務めさせていただく、セバスと申します。以後お見知りおきを」
と言い、執事姿の老人は頭を下げた。やはり闇館でも案内役が付くようだ。闇市場の内装はダンジョンのような数々の別れ道のある洞窟といった感じだったが、闇館は壁全体が紫色の大理石で装飾されており、所々には様々な魔物の骨が飾られている。
「目的の品が既にお決まりでございましたらご案内致します」
「ではMP100万ポットのある場所に案内してくれるか?」
と、琥珀が言うとセバスは顔色を変え、琥珀の言ったこを聞き返す。
「MP100万ポットでございますでしょうか…?」
「ああ。その通りだ」
すると少し間を開け、セバスは言った。
「ご案内致します」
周りには琥珀がMP100万ポットを買い求めていると聞き数人の者達が集まっている。
「お客様はMP100万ポットをお買い求めになっていらしているとのことでございますね。お値段は500万になりますがよろしいでしょうか?」
セバスに案内され辿り着いた場所にはMP毒偽装ポーション、殺薬ポーション、バブルレイズポーションなどの商品が並んでありその中にはMPポットと書かれたアイテムが3壺。それぞれ100万10万1万MP魔力系のアイテムがあり今回琥珀が買い求めているものはMP100万ポット。これだけ毒々しい名のポーションが周りに置いてあればこのポーションも毒入りなのではと思わず疑ってしまいそうだ。
「ああ」
琥珀はアイテムバッグから1万と書かれた金貨100枚の束を差し出すと次々とアイテムバッグからそれと同じものをもう4束取り出した。
「ゴッ、ゴッ、ゴ、五百万!!?」
エレガは狂ったように驚き頭を抱えそう叫んだ。そしてディアブル、エルク、メル、セインの4人もエレガ同様、かなり驚いているようだ。それもそのはず。これほどの金は貴族の持つちょっとした城を買えるほどの金額だ。現状からするとかなりの出品になってしまうが、これほどの魔力を得れば当分はダンジョンの魔力の心配をする必要はあるまい。そしてこの数週間でこれほどの金額をただ数百人から奪うだけで得られるということはまた魔欠になればここへ再び出向き今日と同じようにMP100万ポットを買いに来ればいいのだ。
そう内心で今後の保証を再確認した琥珀はMP100万ポットを受け取りその場を立ち去ろうとした時…。
「おいお前、何を企んでいる」
後ろから黒いフードを被った男が琥珀の肩を持ち、琥珀を止めた。彼の背は低く、背後には同じく黒のフードを被った男が二人。どこかの貴族なのだろうか。どのみちこのような場所に来ている者に琥珀がどのような事を企んでいたとしても彼にそれを聞き、止める権利は無い。大体、このMP100万ポットを買う人間は殆どが兵器や大規模魔法を使うために買うわけだから何者かにそう問われても仕方がない。しかし…。
「おや? これはこれは、ミルリド王子ではないですか。このような場所に陛下がどのような用件で? それともまさか、陛下もこのような”違法地帯”でお買い物を?」
フードを被った小柄な男はこちらから顔を覗き込めないものの、明らかに彼の身体は後ずさった。どうやら当たりのようだ。どこかで聞いたことのある声、背丈、そして後方の二人の護衛。やはり彼はミルリド王子で間違ってはいなかったようだ。
「ちっ…」
明らかにミルリド王子はそうこちらに聞こえるように舌打ちをし、背後の一人が言った。
「この者らを捕らえよ!」
すると闇館の中、周りでこちらの話を伺っていた執事やメイドの恰好をした者達が一斉にこちらへ襲い掛かった。しかし、
「おい、動くなよ、小僧」
ほんの少しの間も無く琥珀は一瞬で少し離れた所まで後ずさったミルリド王子の目の前に立ち、彼の首に短剣を当てた。その瞬間、襲い掛かろうとしていた者たちは一斉にその動きを止めた。
「み、皆の者、誰も動くな…」
「…おい、俺の話を聞け…」
琥珀は周りに動かぬよう指示を出していたミルリド王子の首に刃をより近く突き付け、彼の視線を再び琥珀に戻した。
「知っての通り、少なくとも俺はこの場では全員を殺し全てを闇に葬ることも可能だ。そしてまた3年前を繰り返さぬ事を勧める」
「お前は我の大切なものを…」
「それはお前に関しても同じだと思うが?」
「っ…」
「ここは手を引いてくれないか? 心配せずとも悪いようには使わない。特に復讐にはな」
するとミルリド王子は全員に琥珀らに危害を与えぬよう、命じ彼の護衛役である背後の二人は即座に彼を横たわらせ琥珀の付けた彼の首に出来た切り傷をハンカチやタオルなどで塞ぎ回復ポーションで彼の傷を癒し始めた。
そして琥珀含む6人は闇館を出て行った。




