第19話 冒険者狩り
レビュー、一件頂きました。
本当にありがとうございます。
まだまだ文章力と語彙力が未熟な僕ですが、これからもよろしくお願いします。
『琥珀、4人組のパーティーがDの1へ向かった』
『了解。メル頼んだぞ』
『はい』
現在、ダンジョン経営者となった6人は地下7階で狩りをしている真っ最中なのである。ターゲットは……………冒険者。
『あと18秒くらいでメルちゃんの視界に入ると思うよ~!』
『わかりました!』
メルは地下6階から地下7階へ階段で降りた所に4つ存在する最初の分かれ道の内、一番右の通路を進み二度目の分かれ道を一番左に曲がった通路の果てで杖を構え冒険者を待ち構えている。
「【スリープ】」
メルは対象とその周りにいる者を睡眠状態にする催眠魔法【スリープ】を発動し、メルの視界に現れた冒険者4人を一瞬にして睡眠状態にした。
『任務完了。顔は見られていないはず』
『了解! では俺、セイン、ディアブルはそちらへ向かう。エレガとエルクは引き続き監視。誰か近づく者がいたら【共有】で連絡してくれ』
『『了解』』
今、6人の使っている能力はダンジョン経営の権利で得た能力【共有】。今までの会話も全て【共有】により遠距離かつ無音で心の声を送り合っているものだ。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
時は昨日、ダンジョン経営の権利を得て町へ帰ったすぐ後に遡る。
「で、貴方の言う考えって何なのよ?」
エレガは純粋な疑問を問いかける。現在彼女だけではなくパーティーメンバー全員が琥珀に呼び出され琥珀の部屋に集まっている。琥珀の目的はダンジョン経営の権利で得た【吸収】【生成】【共有】の能力を使い荒稼ぎに繋がる可能性のある計画をこの場の全員に伝えることだ。つまり琥珀にはもうそのアイディアがあり、考えもあるのだ。
「俺の言う考え…というより提案なんだが…。ダンジョン内の冒険者たちから魔力、装備品、アイテムを根こそぎ奪うことの出来る可能性のある俺の計画に乗ってみないか?」
その案にエレガは少し嫌な顔をして言った。
「つまりダンジョンで盗賊行為をするってことなのかしら? でも『鼠ノ洞窟』で私達の顔は利き過ぎているし、他の冒険者たちに見られたりでもしたらすぐに噂が広まって捕まってしまうわよ。それに始末した後に残る痕跡を消す魔法も誰も使えないわよ?」
「いや、噂は広がらないしそもそも盗んだ後、始末をする必要は無い」
「でも、始末しなきゃ盗まれた冒険者が覚えて―――」
「俺達にはダンジョン経営の管理で得た【共有】という能力がある。もしそれを完璧に使いこなすことが出来るのならまず絶対、バレずに盗賊行為をすることが出来る。まあ、今日は一先ずこの【共有】を完璧に使えるように練習するぞ」
「【共有】を完璧に使えるようにとはつまり伝えたい情報のみを上手く交換出来るようにするということか?」
「ご名答。ディアブルの言う通り、【共有】使用時に無駄な情報を謝って送らないようにし、最終的には完璧な情報収集とコミュニケーションが遠距離かつ無音ですることが出来るようになるのが目標だ」
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「では回収! と、その前に【吸収】」
そして現在。6人は徹夜で【共有】を練習し、現在完璧に使いこなせるようにまで【共有】をマスターしていた。
メルの催眠魔法によって睡眠状態になり倒れている冒険者4人からは琥珀が【吸収】で彼等の魔力を半分まで吸い取ると横からメル、ディアブル、セインが彼等の装備やアイテムを次々と剥いでいく。しかし全ては盗らない。この冒険者たちの外見の変わるような装備品は盗らず、アイテムバッグの中身や腰に隠された武器、そして指輪や腕輪などのアイテムをひたすら盗り続ける。
するとディアブルは、
「まさか共有がこれほどまでに使える能力だったとはな。しかし何故装備、全てを盗らない?」
と、琥珀に問いかける。
確かに現時点では装備を全て剥ぎ取り、この4人をダンジョン外に適当な場所で捨てた方が得る物は多い。しかし…。
「人は疑問に思うものは解きたくなる生物だ。それも自分の手に届きそうなものなら尚更。ここで突然気絶し、目が覚めた時には装備やアイテムがほぼ無くなっておりいつの間にかダンジョン外にいたという噂が町中に流れればその謎を解きにここへやってくる冒険者は今より格段と多くなる。それに加え、その冒険者が上ランクの冒険者であればあるほど信用度も高く、全てのアイテムを盗ってはいない為、再び今度は仲間や他の冒険者を連れて来てくれるということだ」
「なるほど…。そこまで考えているとは大したものだ。だが、それでもアイテムを全て盗り始末した方が魔力量も多く、第一見つかる可能性も無であり確実性が高い。それに謎となれば同じ場所で何人もの冒険者が行方不明になるという事件はかなりインパクトがあるのではないか? 噂はパーティー全員で密かに流せばそれと同じ勢いで噂は広まる」
「ああ。お前の言う通り広まるとは思うがその場合、盗賊被害だけでは動かないギルドや国もダンジョンで相次いで死人が出たとなれば動かざる終えない。つまりここには興味本意の冒険者たちが訪れるのではなく、その場合SランクかAランク級の冒険者、または国の騎士たちが本格的にその謎の解く際に本格的に戦闘の準備をしてやってくることとなる。その場合、俺達に生存の可能性は低い。運が良くて牢獄。運が悪くてそのまま攻め込んできた者に串刺しにされるかだ。勿論、今まで稼いだアイテムも金も没収される」
当然だ。アイテムが無くなればその冒険者がまた集めれば良い。だが人が死ねば命は戻っては来ない。つまりこの殺さず、適度に奪い、噂を広める方法が一番なのだ。
ちなみにこの冒険者狩りの方法はかなり単純なものだ。まず上の階から下の階へと続く階段は各階に二つ存在する。そしてこの階段は階の端と端にある。その途中には多数の分かれ道があり、上からの階段から下へ降りる為の階段へと続く道は一つしかなく他の分かれ道は全てが行き止まり。この分かれ道一つひとつにアルファベットや番号を付けパーティーメンバー同士、誰がどの位置にいるのかを確実に【共有】の能力だけで分かるようにし、後は差ほど人気の無い分かれ道の果てで冒険者を待ち伏せし、冒険者が行き止まりの場所まで辿り着いた瞬間、【スリープ】でその冒険者を睡眠状態にするというものだ。
この階、地下7階には2回しか分かれ道が無く、比較的狩りをしている冒険者も多い。狩りの基本は最初の分かれ道辺りで戦闘するのが基本の為、端で狩りをする冒険者はかなり少ない。つまりこの階は冒険者狩りにはぴったりなのだ。ちなみに最初は4つ分かれ道があり、パーティー内での呼び名は左からA, B, C, D。そして現在、琥珀たちが待ち構えていたDの通路の途中にある分かれ道は計2つ。これを左が1で右を 2と呼び左にはメルが。そして右にはディアブルが待ち構えておりどのみちDの通路の果てである1か2へ入り込んだ冒険者には睡眠状態になってもらい、アイテムを回収し終えたら毎回、ダンジョンの外へとセインに運んでもらっている。
「凄いね~! そこまで考えてるなんて、セインちゃん感激!」
「ああ。ところで装備は全て盗り終えたか?」
「はい、盗り終えました」
「俺もだ」
するとディアブルとメルは腰に掛けたマジックバックを開き、その中に入った膨大な数の装備とアイテムを琥珀に見せた。というよりこの冒険者たちからアイテムバッグごと盗んでいる。その証拠に腰にはディアブルとメルの持っていたマジックバッグ以外にも2つマジックバッグを腰に掛けている。
ちなみにマジックバッグとはアイテムや装備をそのバッグの外見には見合わないほどの量の物をしまい込むことの出来るバッグの事である。最も容量の小さい物はリンゴ4つほどを収納することができ、最も容量の大きいもので装備一式と回復アイテムなどを数個収納することが出来る。しかしマジックバッグは製作者によってその容量は違い、腕の良いマジックバッグ製作者により作られた場合、時には莫大な容量のある小さな巾着袋のようなものも稀に作成されることがある。
「ではセイン、いつも通りダンジョンの外に適当に彼等を置いてきてもらえるか?」
「了解!!! でも外に何度も置くだけだったらいつかはバレるかもだよ?」
「その心配は無い。セイン、お前は顔を知られていないしそもそも冒険者ですらない。それに加え、町から出ると常に透明化魔法でダンジョン内も身を隠しているからバレることはほぼ無いだろう。それにまず、お前が自分以外の誰かの視線に気づかないわけが無い」
「まあ、それもそうだね~! じゃあ、行ってくる!」
「ああ。だが警戒は必ず怠るな」
「分かってる~!」
そう言い、セインは4人の冒険者たちを引きずり非常口階段を上って行った。
今回は僕の頭の中では既に出来上がっている設定を文字にて表すのがかなり難しかったですが、頑張って書くことが出来ました。しかし説明しきれていない部分があるのも事実。その為、これから第19話は数回に亘って編集する可能性がありますのでご協力お願いいたします。