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第18話 ダンジョン経営の始まり

 ダンジョン経営の権利を与えられた琥珀たち。新しくパーティーの一員となったセインを含めこのダンジョン経営はどうやら一人だけでは無く複数の人数が一度に経営の権利を与えられるようだ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ~鼠ノ洞窟~(改名可)


 ダンジョン魔物管理各階 :300

 ダンジョン全体トラップ数:100

 地形          :ノーマル

 ルート         :ノーマル

 

 能力:共有

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「何か現れたわ! 何なのよ、これ?」


「俺達がダンジョンの経営者となった証に俺達にはこのダンジョンの情報が見れるようになったようだ」


「え? でもこの情報って…。普通に冒険者ギルドに載ってある情報と同じ…よりもちょっと少ないわよね?」


「…。ああ」


 非常に答えずらい。セインに契約として最低でも半年で60万は儲けられると言ったが…。つまり月給10万を約束したことになるわけだがダンジョン経営の権利特典が本当にこれだけなのだとすれば…….いや、必ず何か他に特典があるはずだ!


 琥珀はそう思い、目の前に表示されたこの画面上の情報をあらかた触れて何か他に出来ることは無いかと触れ回るが…。


(え…。本当にこれだけなのか…?)


 と、琥珀がおろおろと画面上を触り回っているとセインが琥珀に声を掛けた。


「そういえばさっきまで琥珀が持っていた球体二つが無くなってるけどもしかして無くても魔物を生み出したりすることが出来るんじゃないの?」


「それだ! では早速試すとしよう」


 琥珀は先程ゴブリンを生成した時と同様、手を前に突き出しまるで球体を持っているかのように指一本一本を曲げ集中するために目を閉じて言った。


 琥珀:「ごぶㇼ….


 エレガ:「ゴブリン生成!」


 と、琥珀の唱えるその横でエレガが勢いよくそう叫び琥珀はエレガの声に妨害され最後まで唱えきれずに途中止めで終わり目を開けた。するとそこにはゴブリンの姿があり、エレガはゴブリンの生成に成功したようだ。しかしエレガは手を前に突き出すどころか目もつぶっておらずただ「ゴブリン生成」と、叫んだだけでゴブリンは生成されたようだ。


「あ! ゴブリン生成成功!」


 エレガは自分がゴブリンの生成に成功したことによりとても喜んでいる。どうやら琥珀とエレガはセインの提案を聞き同時にゴブリンを生成しようとしていたようだ。そのためエレガは琥珀がゴブリン生成を試みているのに気づいていなかったようだ。


 それはともかく…ちらり。琥珀は周りを見る。この場の全員、エレガによって生成されたゴブリンに夢中だが、その前に…。俺のこの格好はどうなのだろうか…。琥珀は現在、何もない空間をそこらの中年オヤジならかなりマニアックな絵図になりかねないくらい見事な丸を手で作っており――――――――――


「琥珀、何してるの?」


「いや、球体が無くてもお前がゴブリンを生成できたことに驚いていただけだ」


 エレガにそう聞かれる瞬間、琥珀は手を即座に自身の横に戻し、冷静にエレガへ返答した。運よく誰も琥珀の事は見ていなかったようだ。


「そうね。これなら【吸収】の方も球体が無くても使えそうね」


「だな。試す対象が今いないから無理だが、多分【吸収】も使うことが出来るだろう」


 と、その時偶然、他の冒険者たちの足音がこちらへ近づいて来るのが聞こえた。人数は3人。喋り方からして三人とも男のようだ。


「…じゃあ、あの人たちで試してみる? 実験に犠牲は付き物!」


 セインは早速、【吸収】を試す際に当然のようにこちらへ向かってくる冒険者たちに犠牲になってもらうことを提案した。しかしこの案は暗殺者では無く、最初から冒険者であるエレガたちにとってはパーティーメンバーが見栄えなく他の冒険者を殺すのは気分の良いものでは無いだろう。


「いや、お前の透明化魔法で身を隠し魔力を半分程吸い取るくらいで十分だろう」


「え? そう? ならいいけど」


「頼んだぞ」


「オーケー!」


 そう言い、セインは透明になりこちらへ向かう冒険者たちの方向へと向かった。


「悪いな。セインは根っからの暗殺者だ。目的があれば見栄えなく貴族、商人、王でさえも暗殺の目標とする。だから決して冒険者だけを見栄えなく殺すというわけでは無い。後々、セインには追って忠告はしておく」


「いや、その必要は無い。そもそも冒険者はその日その日の金を集める手段としてこの職業に就いているだけであって別に仲間意識もそこまでのものでは無い。勿論パーティーメンバーが殺られるのは嫌だが、実際他のパーティーはどうでも良いというのが半数だろう。ちなみに俺達のパーティーは他のパーティーがどうであれどうでも良い」


「な、なるほど…」


 冒険者はギルドによりある程度は仲間意識が高いと思っていたが、案外そこまでのものでは無かったようだ。これを良い事と思うべきか呆れれば良いのかはわからないが、とにかく冒険者同士で殺し合うのはあまり好ましい形ではない。余程の事が無ければ魔物を利用し冒険者を殺す必要は無いだろう。


 と、琥珀がディアブルと話しているとセインが早速、【吸収】を使ってきたようだ。


「予想通り【吸収】使えたよ~!」


「そのようだな」


 セインは冒険者三人組を右手に一人、左手に二人、引きずって来ていた。


「【吸収】で魔力を半分まで吸い取ると気絶しちゃったみたい」


「狙い通りだな」


「ところで吸収された魔力はどうなったんでしょうか? 見た所セインさんの魔力は増えていないみたいですし」


 と、メルが不思議そうに問う。


 琥珀はセインが【吸収】で確実に魔力をこの3人組から吸い取った事を確認し、再び目に意識を送り、ダンジョンの情報画面を表示させた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ~鼠ノ洞窟~(改名可)

 

 ダンジョン魔物管理各階 :300

 ダンジョン全体トラップ数:100

 ダンジョン使用魔力量:5000MP/週

 地形     :ノーマル

 ルート         :ノーマル

 魔力総合量       :-1600MP

 ダンジョンレベル    :3

 経験値         :78/1000

 

 能力:共有

 能力:生成(使用制限1)

 能力:吸収(使用制限1)

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「皆、ダンジョン情報画面を見ろ」


 するとこの場の全員、ダンジョン情報画面を表示し始める。


「あっ…。情報が増えているわね」


「ああ。だが経験値とは一体なんだ?」


「さあ?」


 経験値。経験の数値。つまり経験の量と、思うのが妥当だが…。何の経験が経験値としてカウントされるのか。そして経験値がMAXになると何が起こるのか、まだわからないものだらけだ。


「【共有】っていう能力もあるね~! この能力は最初から表示されてたけど生成と吸収が能力欄にあるってことは【共有】も何かしらここの全員が使える能力みたいだね~!」


 そう言い、セインは自らの親指を短剣の刃の先で少し切る。


「「「「「痛っ」」」」」


「この場の全員に痛みが伝わったということはこの能力は感覚を共有する能力か?」


「いえ、そういう使い方もあるとは思うけど、痛みと共にセインさんの心の声が聞こえてきたような気がするんです。セインさんは自分の親指を切った時、口からは声を発してはいなかった。ですが薄っすらと私の頭の中にセインさんの声が聞こえたので…」


「つまりこの能力は感覚では無く、感情や心の声を共有することの出来る能力の可能性が高い。そしてもしその通りなのだとしたらこの能力があれば遠距離からでも情報の共有が出来るかもしれない」


「なるほど…。良い能力だ。これはかなり使える。そうだ…少し俺の考えに乗ってみないか?」


 こうして琥珀たちのダンジョン経営攻略は始まるのだった。

第二章、始まりました。

ここまで読んでいただいた読者の皆様、本当にありがとうございました。

これからも頑張って楽しく書いていきたいと思います!

よろしくお願いします!!!


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