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第13話 計画実行

 現在、グレディアム家の屋敷前。正確にはそこから400km離れた場所にあるベルムヘイド王国帝都、首都であるこの町全体を見間渡すことの出来る塔。この塔には数名のグレディアム家の護衛を務める者の印を刻まれた護衛服を着た兵士たちが数名いたが、全てクレアが一瞬で抹殺した。馬車の中では数種類もの短剣の技を使うことが出来ると言っていたクレアだが、早すぎて何がどうなっているのか全く判らない。 琥珀は自分の防具と短剣、そして今でも未だに能力低下魔法を常に掛けられている為、いつもならばクレアの技を捉えられたかもしれない。


 そして現在、琥珀は少しイラついていた。能力低下魔法を自分に一日中掛けられているという事はヨミスは琥珀を全く信じていないことを意味する。これから共に戦う仲だから共に協力し合おうなどと馬車で言っていた割には自分の護衛であるこの4人の暗殺者たちの技や戦闘スタイルを解らないようにし、そもそもヨミスには琥珀と協力プレイなどする気はそもそも無いのだろう。


「作戦を伝える。アレックス、クレア、ヘイドの3人は魔法の使えない琥珀をカインの元へ行くまでをサポート。ゼイドは僕の護衛とここから屋敷内への射撃。カイン暗殺後は彼の部屋から目的の球体を探し出し、屋敷内の暗殺者やメイド共々全員を抹殺。それが完了したら各自、すぐさま先程僕らが馬車を預けた場所で待ち合わせ」


「「「「「了解」」」」」


 そうしてエレガ、エルク、ディアブルとミルの奪還作戦は開始した。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 夜。辺りは暗闇に包まれており、屋敷内の護衛は断然に多い。しかし屋敷裏は大通りであり人目が付くため護衛が手薄だ。琥珀たちは屋敷の裏側の倉庫が設置されてある場所から屋敷内へと進入する計画となっている。


 アレックス、クレア、ヘイド、琥珀の4人は予定の場所へ向うため屋敷裏の大通りを歩いていた。勿論、普通の服で。


「「「「「...........」」」」


 全員無言で屋敷裏の大通りを他と変わらない恰好で歩く。そしてクレアが言った。


「ねえ、ちょっと休憩しない~?」


「そうだな。皆も少し休まないか? ミサが疲れたみたいだ」


「オッケー」


「.....」


 いきなり全員が喋り出した。これは目的の場所へと続く店と店の隙間にあるスペースに入るためだ。その隙間は人が一人、入れるか入れないかというくらいであり町で歩いているような男性では到底すんなりと入ることは出来ない。しかしそれをいとも簡単に4人は滑るように入って行くとそんな狭い空間で一瞬の内に先程の町で歩くような服から暗殺用の全身黒で覆われたスーツに着替え、そのまま屋敷内へと入って行った。


 情報によると屋敷の周りには魔法防御壁が張られているとの事だったが、クレアが短剣を腰から抜き空間に円を描くとその部分だけ微妙に透き通ったようになり、予想だがこれは部分的にクレアが魔法防御壁を切り取ったということだろう。クレアはまるで力を入れていなかったようだが、魔法防御壁とは本来それほどまでに簡単に切り取られても良いものなのだろうか? それともクレアの技術が凄いのだろうか? とにかくクレアにとっては貴族の屋敷の周りに張られている魔法防御壁など紙のようなものなのだろう。


「ん....。」バタッ..。


「ん? どうしたロバー....」バタ...。


 屋敷の裏庭で立っていた二人は状況が判らず、瞬時に暗殺された。屋敷裏で護衛をしていたのはどうやらこの二人だけのようだ。その他の護衛に気づかれていないことを確認すると4人は屋敷内へと入って行く。


「なっ、おま...ぇ...」シュッ...バタ...。


 グレディアム家の長男であるカインの暗殺に成功。ここまでで4人が屋敷内へ進入してからまだ一分も経っていないのではないだろうか。カインの寝室はもう事前に調べ終わっておりこの部屋までのルートは完全に記憶していた。しかしカインがまだ起きていたことは想定外。だが喉仏を最初に狙い声を出させなくさせた為、然程違いは無い。他の3人は球体を見つけ、既に屋敷内の護衛とグレディアム家全員の暗殺へと向かっていた。


 次はパーティーメンバーの救出。下準備はもう済ませてある。今日の朝、昼と晩、毎回同じ場所へとカインだけが向かっていたということはその場所がエレガ達の捉えられている場所なのだろう。


「やはり...」


 予想は的中した。階段裏にある扉。中には掃除道具などが入っており一見何の変哲もない掃除道具入れに見えるのだが、よく見ると左の壁端に縦状の隙間が数ミリほど空いており、これは上級貴族などではよくある仕掛けなのだ。琥珀はその隙間に手を入れ横へスライドした。壁が開くとそこには地下へと続く階段が隠されていた。


 地下は暗く、何の音も無い。真っ暗な地下室に明かりを灯すとそこにはお互いに地下室の角で寄り添い、寝ていたエレガたちの姿があった。4人はまともな衣服を着ておらず、一枚の薄い布で出来た奴隷服と同じ様な恰好をしていた。


「起きろ。俺だ」


 琥珀は4人を囲う鉄格子の鍵を切り落とすと中へ入り、彼らを起こした。


「あ...ぁ.....。ハク...ぅ....!!!!」


 琥珀はエレガに抱き着かれ、エルク、ディアブル、メルは目を覚ましこちらを呆然と見ている。


「琥珀、その恰好...」


「後で話す。今はこの屋敷を少しでも早く出ることが先決だ。屋敷内の護衛は仲間が何とかしてくれているはずだが夜が明けるとすぐ見つかる。だからその前にこの町を出るぞ」


 そうして琥珀はパーティーメンバーたちの救出に成功したのだった。

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