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第11話 契約

『試されし鍛えし者よ。その知恵を存分に使うと良い』


――――――――――――――――――――――――――――――


「...............」


 目を開けるとそこには天井があった。隣の窓はどこかで見たことのあるような窓と外に広がる真っ赤な夕日。


「やっと起きたか…」


 どこかで聞いたことのある声。エレガ、エルク、ディアブル、メル、ましてやダンジョン内や町で聞いたことのある声でもない。


 (ヨミス)


 自分の隣にヨミスがいることに気づき、腰から短剣を取り出すもそこに短剣は無かった。すると窓側とは反対側に座っているヨミスは喋り出した。


「まあ、まあ、落ち着きたまえ。新しい短剣を見つけたようだね。おめでとう。売り払ったりはしていないさ」


「ヨミス、生きていたのか」


「どういう意味だい? この程度の暗殺者に僕が暗殺されるわけないだろう?」


 琥珀が寝ていたベッドの横で座っているヨミスは嫌な笑みを浮かべながら言った。ヨミスの言う”この”とは今、ヨミスが椅子に座り足の台にされている女暗殺者の事だ。この暗殺者は以前、琥珀がエストへ向かう途中に琥珀に暗殺を仕掛けて敗北し、ヨミスの暗殺依頼を承った暗殺者だ。一ヶ月もの月日が経った今、未だに暗殺依頼の達成か失敗かの報告が来ないと思っていたがヨミスに捕らえられていたとは...。


「ところで君が持っていた二つの球体だけど空の方は今、僕の手元にある。だけど膨大な魔力が入ったもう一つの球体は残念ながらベルムヘイド王国の貴族に取られてしまった。そして君のお仲間もね。まあ、それで君とは契約を再び結びたいと思う」


 この部屋には現在、ヨミスと女暗殺者以外に4人の暗殺者がいる。短剣使い、魔法使い、盾使いとそれぞれの持っている武器によってどのような事が出来るのかは大体察しがつくが、一人だけ他の3人より大きいマントを被った暗殺者がおり、マントの中は暗視魔法で中を全く見ることが出来ない。できることならこの場でヨミスたちを殺し、この町で共に暗殺に協力をしてくれるような者を集ったが...。問題はヨミスを含める6人と一人で殺し合い、果たして自分が生き残れる可能性はあるのかということだ。


 琥珀は自分の生存率が低く、成功率もかなり低い殺し合いは素直に諦め、ヨミスの話を聞くことにした。それにエレガたちがどの貴族に捕らえられ、その貴族の屋敷はどこにあるのかなど、そしてその貴族の身の回りに存在する人間のほぼ全てを調べ上げてから救出へ向かう必要があるが、どうせヨミスはもうそんな事は調べ終わっているのだろう。


「契約を結ぶ前に君が気絶してから一週間の内、何が起こったのかを教えよう。君が気絶した後、あの場では君の仲間の...エレガと言ったかな? ベルムヘイド王国第14位侯爵、グレディアム家長男のカインが彼女たちを運んでいたのを偶然あのダンジョンに潜っていた僕たちが目撃し、僕たちは君だけでも助けられるのであればと思い、カインが君を連れ去る前に助け出した。そしてカインはベルムヘイド王国に戻り、それからは君の仲間の着けていた防具や武器を売りさばいているようだ。で、膨大な魔力の入っている方の球体は自分で保管しているらしい」


「質問だが、お前はどうやって俺を助け出した?」


「それは企業秘密」


「まあいい。それでお前の言う、契約とは?」


「前まではお前なんて君から言われたことが無かったのにな。一応、今回君を助けたのは僕なんだよ?」


「いいから話せ」


「はぁ。そして以前よりせっかちになったようだね。まあいい。で、僕の提案する契約とは君のパーティーを助ける代わりにあの膨大な魔力の入った球体の使用方法を教えてもらうということだ。勿論、利用価値のあるものなのであれば使用権利が貰いたい」


「断る」


「いいのかい? 相手は貴族。それも王国の中でも第14位の座である代々昔から存在する貴族だよ? 屋敷には24時間、防御魔法が使われていて今はその膨大な魔力の入った球体を手に入れたばかりだから誰かに狙われないよう、厳重な警備も備わっている。まず、屋敷に物理防御魔法が使われている時点で君はグレディアム家の屋敷内には入れない。それにもう一週間も経っている。君の仲間が今頃どうなっていてこれからまた数週間も準備や計画などで時間を費やしていたら彼らはどうなっているかは想像ができるだろう? それでも僕とは契約をしたくないと?」


 エレガたちが捕らえられた理由は大体想像ができる。どうせあの球体の使用方法をエレガたちが知っているとヨミス同様、カインも思ったのだろう。そしてもしカインの目的がエレガたちからの情報収集がなのであれば急いだ方が良さそうだ。罪やベルムヘイド王国によくある理不尽な理由で捕らえられたということなのであればエレガたちに与えられる危害は運が良くて水かけ。悪くて暴力や性的暴行。だが、情報を吐かせるために捕らえられているのであれば球体について全く情報を持っていないエレガたちは今、この瞬間も常に痛みと苦痛をある一定のペースで回復薬を飲まされながらも与えられている可能性がある。


「わかった。契約を結ぶ」


「良かった。君ならそう言ってくれると思っていたよ!」


 満面の笑みでにこやかに微笑むヨミス。彼の助けを借りるのは癪に障るが今はそれを堪え、琥珀はヨミスの手を借りることとなった。


今回は次の話へと移行するための大事なお話...と言った感じですね。

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