眠り
盛り上がりの手前と言うのもあってちょっと短いかもです。
白い町自体が迷い人の為に作られた、というのはこういう事だったのか。
そう納得する事が、多くあった。
眠りに着いたあの時から、身体ごと棺から出る事も出来た。
蝶に聞いてみれば、この町の中には沢山の物が存在しているらしい。
水中特有の水草、植物もあれば水の中でもお構い無しなのか本もあった。
蝶を通じて、音楽も聴けた。
時間を気にしなくて良い、というのがこんなに心が休まるだなんて、思わなかった。
あの後、精霊様はこの湖の中に、入る事は無かった。
この湖の中から、精霊様が見える事は無かった。
湖の外に出ると、熊のぬいぐるみを抱えた精霊様と、蝶に囲まれて小さなお茶会を開く事が多かった。
精霊様が出す紅茶はとても温かく、香りも味も美味しかった。
出されるお菓子も日によって違った。
緑茶が恋しくなった時も精霊様は笑って和菓子と共にお茶を出してくれていた。
そういえば、と会ってからまともに流れ星を見る事も出来ていなかったが、約束を果たす事も出来た。
星々は一瞬の輝きと共に夜空を流れていた。
その輝きは最後まで綺麗だった。
気が付いたら流れ星を見ていて感動で泣いてしまっていた。
笑って誤魔化そうとしたけど、精霊様に抱きしめられて一緒に感情も引き出されてしまった。
そして私は年甲斐もなく大声で泣いた。
こんな事もあったが、基本的には楽しい事ばかりだった。
そして精霊様は毎回こう言う。
「今が凄く楽しい
また今度、君が目覚めるのが、待ち遠しくなっちゃうな」
寂しそうに、泣きそうな顔でそう言うのだ。
私が次にいつ、目覚めるかも分からないのに。
私に眠らないという、選択肢は無いのに。
――――――
あの時、迷い人が景色を眺めている時に、少女はそのまま説明を続けていました。
『眠りも目覚めも自由、そして自分次第なの
君の身体が迷いの森から出られない事実は変わらないけれど、他は変えられる
この子達の力を借りてこの森の外に居る大切な人を夢の中で見守るの』
『えぇ、分かりました』
一通り説明を終えた少女は、優しく迷い人を見つめました。
そして迷い人は白い棺でゆっくりと、眠りに付きました。
後は――――――あの人の夢を見て、あの人に会うだけだった。
次回を楽しみに待ってて下さいな。