運命と選択肢
大変お待たせしました。
闇を纏う微睡みの中で、誰かの声を聞いた気がした。
気のせいだろうかと、思う程微かに、泣き声が。
この声は。
あぁ、なんだあの子か。
そう思って声のする方に向けて、手を動かす。
だけど手は届かず、泣き声は止まない。
瞼が重く、無理矢理薄く開くが、視界がぼやけてしまって、よく見えない。
そして聞こえた。
『お願い、お兄さん泣かないで
そんな悲しそうな顔、しないで』
どう言う意味だ?
泣いているのは僕じゃない。
君だろう?
『ううん、泣いてるのはお兄さんだよ』
ははっ、もしかして僕の心が泣いてるって言いたいのかな?
『そんな、自分で流してる涙に気付いてないの?』
―――――
憧れだった。
好きだった。
だからこそ、迷いの森から出て直ぐ、あの人に再会出来ると知って驚き、嬉しさと悲しさが伴なって涙が出そうになった。
凄く会いたかったし、私の想いも伝えたかった。
その瞬間がとても幸せで。
とても、胸が苦しかった。
だけど運命は幸せを、運んでくれた訳じゃなかった。
あの人はどんな形であれ、私と会うと日時などは関係無しに、必ず死んでしまう運命にあるらしいと知った。
私は何度も、あの人の事故死から殺人、病死に突然死と自殺まで降り掛かってしまう運命を見つめ続けた。
あの人に想いを告げても、告げなくても結果は変わらず。
あの人と付き合っても、付き合わなくても結末は変わらず。
私があの人に会わなければ、死にかける様な事故はあれど死亡率は下がる事を知った。
そんな事、蝶に見せられてしまったら、私は迷いの森に留まる事しか出来ないじゃないっ!!
そんな時、精霊様の声が聞こえた。
「まだ、可能性はあるよ」
湖の中に潜り、少女は迷い人の前にゆっくりと降り立ちます。
少女は既に、迷い人が大切な人に会わないと決めた事を、知っていました。
それでも、諦めて欲しくなかったのです。
少女は方法は別の形であれ、迷い人の会いたいという願いが、叶えられる事を伝えたかったのです。
「愛しい人に会いたい?」
「本当に、あの人に会えると言うのですか?」
「ごめんなさい、直接会う事は出来ないの」
でも、別の方法で会わせる事は、出来るかも知れない」
「私はここから出る事が出来ないのに、ですか?」
「うん、ここで眠る事になってしまうけれど大丈夫、起きたらもう一度、湖の上で流れ星を見よう」
少女の声が迷い人の不安を、包む様に優しく響きます。
迷い人は少女の声に安心と、僅かな不安を乗せて、頷きました。
少女が迷い人の手を優しく掴み、町の中を歩き出します。
「この白い町はね、蝶が作ったの
そして、私も知らない内にこの町に役割が出来ていたの」
――――――この町はね、迷い人の為のものなの。
この森から出たくないと願い、この地で眠る事を決めた迷い人の眠る場所なの。
少女は瞼を伏せて悲しげに、そしてどこか苦しそうに言ったのでした。
何か自分で書いてて悲しくて泣きそうになった……