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短いです。

アンケート結果が明日決まるかな……

 


 暗い暗いどこかで、頭上の光に向かって腕を伸ばす。

 それなのに、身体が酷く重い。

 光に、どうしても届かない。


 コポリ……

 コポポ……


 そこが水の中だと気付いたのは、僕の吐いた息が(あぶく)になって、光に向かって行ったからだった。

 しばらくして、足が丁度地面に着いた事から、水底(みなそこ)であることが解った。

 水中でも平然と息が吸えるだなんて。

 これは夢だろうか。

 そう思って声を出そうとするが、口からは空気(あぶく)しか出ず、声を出そうとすると息が詰まって苦しくなった。

 声はこのまま、ずっと出せないのだろうか。

 ここは水中だと言うのに、ほんのりと青く光る蝶が僕の手元に止まり、僕の見ている暗い景色を変えた。

 町が、見えた。

 人の気配は感じないのに、淡く輝く青い蝶だけが、所々飛んでいる白い街。

 まるで湖よりも、ずっと昔に出来たのでは無いかと思ってしまう様な、そんな町だった。


 この水底で僕は、「蝶」に人間と同じ様な、意思や意識がある事を知った。



 ――――――



 夜空に流れる星々は絶えず輝き、月と共に湖と少女、迷い人を淡く優しく照らしていました。

 少女の隣で眠りについた迷い人は、少女が繋いでいた手を離した事でゆっくり、ゆっくりと湖に沈んでいきました。

 迷い人を追う様に淡く輝く蝶も湖の中に入りました。

 湖は眠りについた迷い人を、柔らかく温かく包み込み、ゆっくりと水底へ導きました。


「君の悲しみや辛さは解ったよ

 迷い人、後は君次第だ」


 迷い人の、悩みや悲しみの詰まった夢は、蝶を通じて少女に届いていたのです。

 少女は蝶と共に、湖に沈みゆく迷い人を悲しげに見つめていました。






 コポリ…………

 コポポ……


 まるで近くに水槽でもあるみたい。

 そう思いながら、目を覚ます。

 最初に白く薄い毛布と、白いレース付きの天蓋。

 そして真っ白な天井が見えた。

 私は全てが白で包まれた、部屋のベッドで寝ていた様だ。

 部屋の窓を覗くと、薄暗い青に様々な色合いの蝶。

 私は淡く揺れた月の光が降り注ぐ白い町に居る事が分かった。

 まるで空が水面の様な、私自身が湖に沈んでしまったかの様な光景だった。

 良く周りを見ると、この町に住んでいたのは湖と同様、淡く輝く蝶。

 今も私の服に止まっていた青い蝶は私から離れる事なく、アクセサリーの様にくっついている。


「まさか幻想的な場所がこんな所にもあったなんて」


 そう言ってから気付く。

 息も出来て、声を出す事も出来るのに、口から吐いた息が(あぶく)になって頭上に上がっていくのだ。

 体を動かすと、水の中特有の抵抗感がある。

 そして、髪や服もフワフワとヒラヒラとはためく。

 もしかして私は本当に水中に居るって事?

 そう思いつつ、私は白い町の中を歩いてよく見てみる。

 所々で淡くきらめく蝶達が、明かりの代わりの様に、ちらほらと飛んでいる。

 そうしていて、暫くして解った事がある。

 蝶がたまに、私に触れるか触れないかの距離で私に見せる物がある。

 私に何かを必死に伝えようと、見せようとするのだ。

 私のこの先の未来を心配するように、まるで私にこれ以上の絶望が待っていると、言わんばかりに。






 迷いの森から帰って来て、直ぐに何処からか


『見付けたっ!』


そう叫ぶ人の声が聞こえた。

 こんな声さえあの人の声に聞こえるなんて、そろそろヤバいかなと思いつつ、振り向かずに精霊様に教えてもらった私の家のある方向に向かって歩く。

 先程の声が


『待って!』


と聞こえた。

 きっと私の事では無いだろうと、そのまま行こうとするが、腕を掴まれてぐいっと強く引かれた。


 声の主はあの人だった。


『一週間も、今まで一体どこに居たんだっ!!

 俺や君の親御さんが、どれだけ心配してた事かっ!』


『心配かけて、ごめんなさい

 一緒に、帰りましょうか』


 あの人の焦った顔を、初めて見た。

 迷いの森(あそこ)で帰ると決断して良かった。

 隈の出来た目と疲れた様な顔で、度々私を視界に入れてはホッとするその表情も、私の為だけに出来た物だと思うと嬉しい反面、私以外の人間にも同じ様にこんな顔をするんだと思うと少しだけ悲しかった。




 だって、私は知っている。

 あの人の心に残るぐらい、大切で特別な人が居る事も、あの人は人との付き合いや責任感だけで、こういう事が出来てしまうって事も。

 今私があの人のせいだと、態度に示して言ってしまい、その上で告白してしまえば、あの人の心に漬け込む事になるのを私は知っている。


 今ならそういう狡い事、しようと思えば出来た。

 だけど、そんな関係が長く続く訳が無いのも知っている。

 だからまだ良いの。

 まだ先輩と後輩って関係で、良いの。

 そう思って言い聞かせてないと、想いを告げてしまいそうだから。

 だけどまさか、それが後悔する事になるなんて、迷いの森から帰って来た事そのものを、後悔する事になるなんて、思いもしなかった。




次回、迷い人の結論。

Twitterで取ったアンケート結果を出来る限り反映させたいと思います。

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