幼い罪
お待たせしたのです
表現が淡白かもしれないので後から加筆はするかもしれません
「その先は、私が直接話さなきゃね」
そう言った少女は一匹の蝶を両手に迎え入れた。
そして、痛いと言いたいのに我慢している様なあまりにも苦しそうで、泣きそうな表情で小さく呟いた。
「そっか、あの時から話さなきゃいけないんだね
勇気を出すにはあまりに苦しい所からだね」
湖に波紋を広げて少女は舞う。
背中に大きな青い蝶の羽を広げて、鱗粉を散らしながら舞うその姿は、人間性を失った幻想的な雰囲気がどこか僕を拒絶する様でいて、僕も声をかける事が出来なかった。
そして少女は湖の上で静かに口を開いた。
「私は幼かったし、兄と違って家族に捨てられる事に対する意味を知らなかったし、知ろうともしなかった
だからあの後、深い絶望を抱えたまま家族の元に向かった
あの、家族団欒とした笑顔が咲いた家族の中に」
――――――
少女は家族が揃って笑っている場所にふらりと近付きました。
『おかあさん、おとうさん、おにいちゃん』
姿の違いはある種、一目瞭然でした。
少女の家族は働く者特有の傷や汚れはあれども、少女程ではなかった。
村で住むには支障の無い程度だった少女の服はボロボロ、以前履いていた靴も今は履いておらず、以前はそれ程ではなかった肌や髪、身体の所々は汚れと小さな傷や瘡蓋が出来ていました。
少女は幼さ故に何も知らず、純粋故に家族を信じていました。
しかし、今は現状を否定したくて仕方ありませんでした。
家族を信じたいが為に一生懸命叫んだのです。
『いいこで、ずっとまってたのにっっ!!
ひどいよ!
わたしをひとりぼっちにするなんて!
どうして!
わたしも、おうちまでつれていってくれなかったの?
なんでおにいちゃんはわたしをおいていったの?』
少女は幼さを盾にして絶望を矛に、感情の爆発と共に暴走してしまったと言う事なのでしょう。
「私ね、凄く家族を憎んだの
絶望と怒りで視界が暗くなって
殺してしまいたい程の殺意が湧いてたの
でも今なら分かるんだ
アレは、仕方のなかった事なんだって
でもあの時は、何で私あんな事を」
その後暫く、少女に記憶はありませんでした。
しかし、状況は語っていました。
少女は意識を取り戻した時、自分の兄の首を絞めていたのですから。
気付いた瞬間、少女は慌てて兄の首から手を離しました。
少女の兄は急に入った空気に肺が耐えられず、咳をした後、気絶しました。
そして周りをよく見てみると、椅子やテーブルは倒れ棚に置かれていた物は全て下に落ちたのか、割れた物や破片が散乱していました。
地面やカーテンは赤い血で汚れ、ナイフか何かで縦に引き裂かれた様な跡がありました。
そして両親は少女の傍らで、鮮やかな赤と共に倒れていました。
少女は状況を理解した途端、自らのした事を受け入れられずに言葉にならない叫びをあげました。
「すぐにでも消えたかった。
私が両親を殺したって言う罪の意識から逃れたくて、死にたくなった
でも、私のやった事は変わらない
だから、私はその後、自分の育った村から逃げたの」
――――――
少女の顔は、蒼白で恐怖と諦めに満ちていた。
傷付くのが怖い。
失望されたくない。
もうあんな思いはしたくない!
まるで今までずっと抱えていた治らない傷口を自ら抉らなければならない様な、そんな無言の内に秘めた心の叫びが聞こえた気がした。
気が付けば僕は涙を流していた。
僕は泣いてはいけない筈なのに涙が止まらない。
それなのに僕は彼女の代わりの様に止まらない涙を流していた。
どうしてだろう。
どうして、こんなに心が苦しくて痛いんだろう。
誰か、僕に理由を教えて。
少女と青年の立場が逆転しちゃった感……




