過去
お待たせしました。
スランプになってしまいました。
そして取り敢えず一区切り着いたので、少女の話を入れてみます。
ある国の端の端に、小さな村がありました。
その小さな村の近くの森の奥深くに湖がありました。
夜にだけ湖に現れる少女の伝承が村で語り継がれる前、これは生前の少女の過去の話です。
青年以外、誰に語るでも無い物語です。
僕は知りたかった。
僕にとってのミルフィリアは妖精でも精霊様でも無く、普通の人間の少女だった。
勿論最初会った時は大人びた子だとも思ったし、もしかしたら本当に精霊様なんじゃないかと思った。
基本的に怒らないし優しいのだ、そして少しだけ存在に現実味が無い。
迷い人は誰だって精霊様だと、そう思うだろう。
それでも長く接するとわかる事がある。
ミルフィリアは本当は少しだけ生意気な部分があった、それに実は泣き虫だった。
だから、こんなに感情が豊かな子が元々人間だったと聞いて安心したし、納得した。
だから、僕はミルフィリアの過去を知りたいと思った。
あの子がどうしてこの湖に居るのか、どうして「迷いの森」という物が出来上がったのかを。
「ねぇ、ミルフィリアはいつからこの森に居るの?」
「急にどうしたの、お兄さん」
いつだっただろう、もしかしたら私よりも迷い人や蝶のが知ってるかもしれないね。
そう答えた後、ミルフィリアは呆然としていた。
理由を聞くのは躊躇われたけど、もしかしたら本当に忘れていたのかもしれないし、聞くのはまずかった質問だったのかもしれない。
村の端の端で地べたに座り込む汚い人間に声をかける者は居ません。
そもそも道端で倒れている者や、路地裏に座り込んでいる者達は一部スラムの様な場所に住む薄汚い住人と言われているのですから、声をかける様な物好きはあまり居ないのです。
そして、その中の一人として少女は――――ミルフィリアは居ました。
少女の生まれはどこにでもある家庭でした。
勿論、暖かな家も親も居ました。
しかし少女の住む村が飢饉に合った時、少女は村を追い出されたのです。
だから少女の育ちは決して良いとは言えませんでした。
その頃の少女の名はフィリア。
少女は余所者だったのです。
そして、少女には仲間が居た訳でもありませんでした。
だからこそ、少女は森の奥深い場所にある湖に一人で迷い込んだのです。
そして数十年後、少女の伝承が伝わったのは何の因果か少女が湖に迷い込む前に道端で過ごしていた村でした。
二章の続きは三章が終わった後……と言うことで。




