夢
お待たせしました。
夜中ではありますが、更新失礼します。
私は一緒に来てくれた蝶に手伝って貰ってあの人に語りかけた。
それは、私の夢とあの人の夢を繋ぐ事だった。
そして私は夢の中で意識がぼんやりしているのか、少し揺らいでいたあの人を見付けた。
そこは今とは真逆の季節。
夕陽が綺麗な夏の教室だった。
あの人は夢の中ですら、眠ろうと机の上に頭を置いてぼんやりしていた。
だから私は声をかけた。
するとあの人は私の事を認識した様で、私の姿も「迷いの森」に迷い込む前の姿になっていた。
夏のとはいえ制服が懐かしいなんて思ってしまった。
声をかけている間、懐かしさとむず痒さも相まって少し照れてしまって口調も変わったのはご愛嬌。
あの人が頭を上げて私を見た時の驚いた様な、どこか安心した様な表情に胸がチクリと痛んだのは仕方の無い事だと思う。
だって私は帰って来ていないまま、精霊様のお陰で奇跡的に魂だけでも再会を果たせただけなんだから――――
「違いますよ
先輩に私の声が届いただけで、先輩はまだ起きてません
先輩は今私と共に夢を見てるだけです
だからほら、起きましょう?」
「え?
何言って
じゃあここに居るのは――――
本当は夢の中じゃなくて生身で会いたかった。
あの人に触れたかった。
「ただいま」って言いたかった。
我儘だって分かってる。
それでも精霊様のお陰で、蝶のお陰で夢の中でも会えた。
あの人に一時でも声が届いた。
あの人の心に触れる事が出来た。
それだけでも凄く、嬉しい。
私はあの人の質問には答えなかった。
答えることは出来ないから。
だから代わりに――――微笑んだ。
上手く笑えてるかな。
綺麗な微笑みは結構苦手かも。
頬引き攣って無いと良いなぁ。
――――――
寒い、そう思ってゆっくりと瞼を開く。
涙でも出ていたのか、目元が腫れているのが分かる。
さっきあの子は俺に夢だと言ったけど、本当に寝ていたのか。
頭を上げて席を立ち、窓の外を見ると外は暗く風が強く吹いていて、雪は止んでいるが、積もっていた。
「こんな寒さの中良く寝てたな、俺」
早く帰ろう。
そう思って俺は机にかけていた鞄を取る。
ロッカーからコートとマフラー、手袋を取り出す。
その時、視界の端に淡く光る何かを見た気がした。
後味は淡く切ない雪の味……です。




