少女の伝承
久しぶりの投稿です。
今書きたい物語をベースに、高校時代に書いた物語やお題が混ざります。
世界が夢を見る頃、紡がれる夢物語。
心が迷った時や、癒しが欲しい時。
無意識的に見る夢であり、直接訪れる夢。
もしかしたら、向こうから来る事もあるかもしれない。
そんな夢物語。
昔、空気が澄んでいる綺麗な森の奥深くに、湖がありました。
そこに迷い込んだ少女が一人。
少女に親は、居ませんでした。
いえ、実際には居ましたが…………捨てられてしまいました。
話が長くなってしまうので、この話は後ほどお話しましょう。
様々な原因から、少女は何処へ行っても何処で迷っても、探す人は存在してはくれませんでした。
少女には帰る家が無い為か、村人や町の者も余計少女を探しはしませんでした。
そして少女は、湖と空の幻想的な景色に惹かれました。
いつしか、湖は少女の魂の拠り所となりました。
少女は誰に見付けて貰う事もなく、湖で死にました。
少女の魂の欠片は、森の中に溶ける様に青い蝶になりました。
それから何年経った頃でしょう。
森は夜の間だけ【迷いの森】として、迷い込んだ者達に認識される様になりました。
いつしか、旅人や村人は青い蝶に導かれ、少女が湖で戯れる姿が何度も目撃され、伝えられ続けました。
何十年も、何百年も。
蝶に導かれた迷いを心に抱えた者の、行く末がどうなったかは本人達にしか知る術はありません。
結末を運ぶのは、少女じゃなくて迷った本人だったのです。
これが後に、小さな村で伝えられる。
夜にだけ現れると言われる
【湖の妖精】や、【導きの精霊様】と謳われた少女の伝承です。
真っ暗な空一面に、沢山の宝石の様に輝く星がちりばめられた明けない夜空。
森の奥にある湖に迷い人を導く、青く輝く蝶。
幻想的な景色の中、湖の上に小さな波紋を広げながら立っているのは、熊のぬいぐるみを大事そうに抱えた十四歳程の少女でした。
少女の世界は、いつだって明けない夜でした。
「いつ見ても、綺麗な星空ね」
誰に届く訳でもなく、笑顔で夜空を見上げる少女の近くに、青い蝶に導かれし迷い人が一人。
「貴女は、湖の精霊様?」
蝶に導かれて少女に声をかけた迷い人は、生きてる事が不思議な程、今にも消えてしまいそうな雰囲気でした。
「精霊様」と呼ばれたのは伝承を聞いたか、幻想的な景色の中、湖の水面で沈みも溺れもせずに、立っているからでしょう。
「あなたがそう見えるのなら、きっとそうなんでしょうね」
そう返す少女は、ただ微笑みました。
不定期更新になります。