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始まりのお話
――鉄と蒸気の時代。
人類は「化学」によって鉄の町を作り、蒸気の力を操った。
発展はめまぐるしく、技術は恐ろしい早さで革新されていった。
しかし、しばらくしてその技術の進化の限界に人々は気付き始めた。
人間は貪欲である。
尽きぬ探求心はさらなる叡智を求める。
人類はその貪欲さ故か、本来の正当な発展である「化学」を見限り、人理の道から外れた「魔法」という禁忌に手を伸ばした。
「魔法」は「化学」の道理と条理を捻じ曲げ、人々に新たな理を提示した。
「魔法」は「化学」では解決できない不可能を可能にした。
ある者には絶対的な力の座を。
ある者には朽ちることなき永遠を。
そしてその者たちに等しく混沌を。
鉄は錆付き、蒸気は魔法に汚染された霧に変わった。
――錆と濃霧の時代の始まりである。




