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衝撃の出会い.2

「うううう…あづーッ…」

今日も乱暴にベルに起こされた僕はのそのそと城の裏門へと向かう。城の隣に建てられた僕らの家、というか寮みたいな建物から(王家管理なので内装も豪華である)出た瞬間に熱い熱気が皮膚に触れる。ナイツは暑い季節になると夜も風があまり吹かず、蒸し暑い気温となる。

「なんでこの暑い中馬鹿みたいな厚着してんだろ…」

もちろん僕の仕事着は夏も冬も変わらずに分厚い生地でできた警備服である。防弾チョッキの弱化バージョンのような作りで、とてもとても暑い、、、。

うだうだと文句を言っていても仕方ないので、少しでも涼しくなるよう襟元をパタパタとさせながら二時間どう過ごそうかと考える。季節によって変わるが、太陽が沈む時間帯の遅い今の季節は、午後六時から二時間ずつベルと交代で午前四時まで扉の前で突っ立っているのだ。取り敢えずぼーっと空の星を眺めていると、

_____コッコッコッ。

「っ!?」

普段聞き慣れない何かを叩くような音がする。

辺りを慌てて見渡すがいつもと変わらない景色。

動物か?泥棒か?刺客か!?

_____コッコッコッ。

再び同じ音がした。今度はどこから発せられている音なのか分かった。くるっと回れ右をして、大きな扉を見上げる。

「城の、中から…?」

城内と外を遮る大きな扉は頑丈に出来ており、内側の音などまず聞こえないだろう。しかし確かに聞こえた音を確かめるべく、恐る恐る扉をひくと_____

「こんばんは」

「_____っ!!!!」

音もなく開いた扉の隙間から少しだけ顔を覗かせ、微笑みを浮かべた表情で僕を真っ直ぐと見つめたその方は、

「ふ、フラーナ王女、様……あっ!?」

おかしいおかしいおかしい、よく考えてみろ、今は夜中の2時であり、王女様が起きているはずがない。しかししかしこの国の第一王女、しかも国でお世辞でも何でもなく最も美しい女性だと言われているお方を見間違うはずも無く…

「しー、お静かにお願いします」

否定をせず、細い指をピンと1本たて、唇に当てるその仕草に、やはりこの方はフラーナ王女様だと認めざるを得なくなる。

「こ、このような夜分遅くに、ど、どうなさいましたか!?」

挙動不審な僕。何を隠そう、王女様と話すのはこれが初めて、というか目があったこと自体奇跡に近い程の身分差である。門番をしているからと言って面識があるわけでは断じてないのだ。

「突然ごめんなさい。少し、お散歩に出かけたいのだけれど…いいかしら?」

扉をゆっくりと閉め、僕にそう問いかけるフラーナ様。遠くから、または写真でしか見たことのなかった遠い存在であるお方が今目の前にいる。

「さ、散歩でございますか?」

「ええ、そうよ。…だめかしら?」

上目遣いで僕を見つめるフラーナ様。これは意図した行為なのか、それとも素なのか…?フラーナ様の様子に倒れそうになる僕だが、それ以上に気になることがあった。それは、

「今日はなぜか眠れなくて…。どうか見逃してくれないかしら?すぐに戻りますから」

そう言ったフラーナ様の真剣な表情を隠すように、頭から足のくるぶし辺りまですっぽりと被っている、闇に溶け込んでしまいそうな真っ黒なマントである。中に着てる服も見えないぐらいに体の前も手繰り寄せている。城の中がいくら涼しく冷やされているからと言って外の温度が予想出来ない程ではないだろう。

「で、でも外出は禁止されているのでは…」

今日はとても暑いのにどうしてこんな服装でいるのだろうか聞いてみたいが、何が無礼に当たるか分からないので余計な質問はしない方が身のためだ。

「お部屋にお戻りになられた方が…」

「お願いします!!!」

今にも泣き出しそうに眉を下げ、僕のような身分の違うものに頭を下げるフラーナ様。

「あ、頭をお上げください、わかりましたから…っ」

「ほ、本当ですか…?」

「ええ、でも僕は二時間で交代の時間になるので、それまでにお戻り下さい」

「大丈夫、本当にすぐに戻りますっ!ありがとう!貴方のお名前は?」

「る、ルイと申しますっ」

「ルイ、ありがとう、このことはみんなには秘密にしておいてくれるかしら?じゃあ、行ってくるわ」

そのままフラーナ様は鉄柵をあけ、小走りに去っていき、マントの色が闇に混ざりこんですぐに見えなくなってしまった。

「な、名前……っ」

名前を呼ばれたことに興奮し、走り去っていくフラーナ様に何も言えずにいた僕は、その時起こったおかしなことに全く気づいていなかった。それは些細なことであるようで、とてもとても違和感の残る_____






フラーナ様は開ける時にかん高い音がどうしてもなってしまう丈夫な鉄柵を、音も立てずに開けて去っていった。


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