熊と鮭
今回は御剣刀子目線です
大神犬太郎に対して私が呼ぶ私のみの通称「犬」
といっても心の中ではちゃんと大神と呼ぶのだがな。
犬と言うのは彼の反応が面白いからだ。
このことは岩手会長も知っている。
まあ、勿論、しっかりとした理由もあるにはあるのだが、うむ、私の心境としてはあまり明言したくないところである。
このことも会長は知っているのだが、大神には前者も後者も知られたくない。
しかし、まあ、大神には感謝しないといけないな。
岩手会長とちょっとしたデートを楽しむことが出来る。
といってもただの買い物でしかも場所がスーパーなのだがな。
「刀子ちゃん、この魚で良いの?」
そう言って岩手会長はパックに入っている魚を指差す。
パックの中には切り身になった鮭が入っている。
「切り身ではなくまるまる一匹あった方が良いかと内臓が得に好みらしいですから」
「そう、本物の熊みたいね」
「元が熊ですから」
「じゃあ、あれなんかいいんじゃない?」
会長が指さす先には、鮭が丸々一匹置かれていた。
鮭の大きさは50cmといったところか。
かなり大きいですね。
「大きいね」
「そうですね、岩手会長は、鮭は好きですか?」
「好きだよ。 ご飯とよく合うから」
「そうですか、そういえば鮭って川を上っているところを熊にはじかれるというイメージがありますね」
「ああ、熊は内臓しか食べないと聞いたことがあるよ。贅沢だよねー」
「贅沢ですね」
「しかし熊にとっては内臓以外のところは栄養が少なすぎるのかな?」
「内臓をねえ……」
「どうしたの?」
「ふと、思ったのですが、鮭は産卵するために川を上ってくるのでしょう?」
「うん、そうだね」
「卵を抱えた鮭の内臓を食べるわけです」
「ああ、なるほど」
「はい、鮭の卵はいくらとして人の食材にもなるほどです」
「そのいくらを食べるのだから」
「やっぱり贅沢ですね」
「しかし、熊が鮭をとるというイメージがあるのは北海道だよね」
「そうですね、熊が鮭を咥えている像がイメージが強いですね」
私は木彫りの『魚をくわえた熊』を思い浮かべる。
「神社に祀られている大熊も鮭を食べていたのかな?」
「鮭が取れる川と言うのはここらでは聞かないですね」
「私もそうだよ」
「やはり、昔の人も鮭を食べる熊という印象を持っていたのでしょうか」
「そうだね、その推論が一番しっくり来るよ」
岩手会長は納得のいったように何度もうなずきます。
「では、この鮭を丸々でいいでしょうか」
「そうだね」
鮭を丸ごと買うことになった。
鮭の代金は岩手会長が出すと言ってきかなかった。
少し頑固なところがあるのは、やはり意志の強さを感じられるので私としては色々とうれしい。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
鮭の皮を食べる派か食べない派か、僕は両方です。
食べれる時と食べれない時がありますから。
え? どうでもいい? あ、はい、すみません




