第五章 閑話 もふもふライド
とある屋敷の庭を追ヶ崎美咲ちゃんを背に乗せて走り回ると美咲ちゃんは嬉しそうに声を上げる。
「わーい」
「ずるい! 私ももふもふライドしたい!」
御剣はずっとこんな調子でこちらを見ている。
何だそのもふもふライドって
「くっ、こんなことなら少女に産んでもらえばよかった!」
「いや、お前、現在進行形で少女だろうが!」
全くこいつは俺が变化しているときだけデレるからな。
しかも普段とのギャップが大きいというか本当に同一人物か怪しくなる。
まあ似たような人を一人知ってはいるが、現金なツンデレほど魅力がないツンデレはないと思う。
「くっ、こうなったら『も○』を探すしか」
「そんな大きい狼いてたまるか!」
何だそのもふもふライドへの飽くなき欲求は
「じゃあ、大神様乗せて下さい」
まさかの土下座を使う御剣。
こいつ、もふもふ教にでも入っているのか!?
「そこまで言うなら仕方がない」
因みにではあるが、現在進行形で美咲ちゃんは俺の背中に乗っている。
見た目から狼に乗る幼女に頭を下げている構図は何か新興宗教じみたものに見えただろう。
「済まない美咲ちゃんこのお姉さんと変わってあげてくれ」
「大丈夫なの?」
「ああ、少しぐらいなら大丈夫、多分」
そう言って美咲ちゃんが降りて御剣が俺にまたがる。
「もふもふ、ふふふ、もふもふ」
「頼むから全体重を乗せようとするなよ」
「分かっている」
御剣が体重を俺に預ける。
重い、いや、ちょっと待て重すぎる!
「おい! 御剣! なんか変なの持ってねえだろうな!」
「変なもの? 失礼な私は護身道具しか持っていないぞ」
「例えば?」
「刀に太刀、鎖鎌に鎖分銅、手裏剣、棒手裏剣、円月輪に……」
「降りろ!」
そりゃ重たいわ! 何でそんなにたくさん持ってるんだ馬鹿なのか?
「そりゃ無いよ大神様ぁ」
「せめて護身道具は外して乗れ!」
何故負担を多くしようとするのか。
「大神様ならこの程度大丈夫かと」
御剣のこの姿に対する信頼度がおかしい!
「あんまり負担をかけるなら元の姿に戻るぞ」
「わかりました!」
さっと降りて廊下に武器をばら撒く。
「おい、そんな無造作に武器をばらまいて良いのか!?」
「後で片付けるから大丈夫だ」
疾風のごとく戻ってきた御剣に嘆息しつつ乗せてあげる。
「おお、軽い」
御剣は思った以上に軽かった。
護身道具を持たなければ大丈夫だな。
「うわっ!」
「ふふふ」
急に耳を触られたので驚いた。
「驚くから急に耳に触れるな」
「すまん、あまりにもかわいらしくてつい」
早速御剣を乗せたことを後悔し始めた。
「全く」
まあ、いくら御剣が思ったより軽いと言ってもずっと乗せ続けれるほど俺の体力はなく、息が上がる。
あと、モフモフされるのと御剣の息がくすぐったい。
「はあはあ」
「はあ、はあ、いい加減、降りてくれないか」
「やだ!」
と幼児退行気味な拒否のお言葉を頂いた。
「はあ、離れないともとに戻るぞ」
「やだー!」
これはどちらに対する「やだ」なんだろうな?
まあ、戻るけど
「うわ!」
「お前、もう少し節操ってものを持とうぜ」
まさか、御剣にこの言葉を言う日が来るとは思って、……いや、思ったことあるな。
「く、もう少しだったのに」
何がもう少しなのかな?
さて、今日は、もう帰るか。
「美咲ちゃん、あまりかまってあげられなくてゴメンな」
「ううん、楽しそうな姉ちゃん見てたからいいよ」
「そうかありがとう」
「こちらこそ! ありがとうございます!」
すっかり元気になった美咲ちゃんの頭をなぜつつ御剣を見る。
いつの間にか庭に散りばめられていた武器、暗器の数々は、消えていた。
御剣って一体何なんだろうな?
拙作をご覧いただきありがとうございます。
面白い小説ってどうやって書いてるのか知りたいデス
ウボアー




