第五章 四話 吊るされたのじゃロリ
のじゃロリせいでややこしくなった話は、思いの他あっさりと収束した。
というのも、岩手会長が岩手家の皆さんに話を通してくれたおかげだ。
まあ、姉ちゃんが帰ってくると同時に
「16歳未満の女の子に手を出したらロリコンだよ!」
と俺に迫ってきたこと以外は問題が無かった。
勿論、姉に誤解を与えたのじゃロリは今、天井から吊るされてくるくると回転している。
「目が回るのじゃー」
自業自得だ。
「ごめんね。タロちゃん、タロちゃんを信じ切れなくて」
「いや、姉ちゃんが心配してくれるのはありがたいからいいよ」
姉は、俺の許しを得ると安堵の息を漏らす。
「けど、何でまた、その子を泊める事になったの?」
「いや、断りきれなかったんだよ……」
「で、その子の名前は?」
「ああ、紹介した方がいいな。
こちら俺の姉の大神結、こちら放火魔に襲われてたところを助けた少女、追ヶ崎美咲だ」
「む、前に助けたという少女だったのか」
「ああ、そうだよ」
「全く、鳴ちゃんにも困ったものだ」
鳴ちゃんとはのじゃのじゃ言ってるロリのことだ。
花楽里鳴知でからくりみんち、組織の人は鳴ちゃんと呼ぶ。
因みに俺が付けたあだ名はリミだ。
まあ、だいたいのじゃロリと呼ぶがな。
「こいつのせいで混乱が増えるな」
可愛いだけにもったいない。
せめて、おとなしかったらちやほやされてもおかしくない容姿をしているというのに。
更に回転を加えてやる。
「の~じゃ~」
あれ、ちょっと楽しんでやがるな。
「あ、あの」
「ん? ああ、美咲ちゃんだっけ」
「はい」
「騒がしくてすまないな」
「い、いえ、大丈夫です」
「そうか」
「あの」
「どうした?」
「お姉さんのことを犬姉って呼んでもいいですか?」
「犬姉!? 何でまたそんな名で呼ぼうと?」
「犬兄のお姉さんだから犬姉」
「ふむ、犬太郎の姉で犬姉かなかなかどうして悪くない」
「姉ちゃん!?」
「ほら、私が犬太郎のものみたいでなかなか」
やめたげて、そんなディープな事言うのやめたげて、美咲ちゃん首を傾げてるぞ!
「犬太郎?」
「ああ、こいつの名前を知らなかったのか」
こいつって、……姉の俺に対する扱いがわからねえ。
「てっきり犬太郎の頭の一文字をとって犬兄と呼んでいると思ったのだが、誰かに犬とでも呼ばれていたのか? タロちゃん」
「その通りでごぜえますよチクショウ」
「まあ、いいか」
俺がよくない。
言うと話が進まないから言葉を飲み込む。
「で、この家のご主人には話を通しているのか?」
「ああ、会長経由で伝えている」
「そうか。
なら今日は、そうだな鍋にするか。
それとも焼肉か」
「鍋が良いです」
まさかの意見を出したのは美咲ちゃんだった。
「ふむ、焼肉は嫌いか?」
「んーん、でも犬兄と一緒ならお鍋が良い」
「そうか、すっかり懐かれてるなタロちゃん」
「そうなのか?」
「そうだよ。 ね?」
「うん」
「そうか」
ロリコンでは無いのは確かだが、やはり懐かれるのは嬉しいものだ。
ただ、お鍋が良いって言って懐かれてると判断する姉の基準がわからねえ。
「私も懐いてるけどね!」
「何を張り合ってるんだよ……」
頼むから張り合うな、ただでさえややこしいことになっていたと言うのに。
「め~が~ま~わ~る~の~じゃ~」
「しっかりと反省したらおろしてやるよ」
ついでに後悔もしとけ、多分しないだろうがな。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
さてさて、そろそ進めていきたいですが、基本は隔週の不定期になりそうです。
シナリオとか今のところほぼ無いので、うん、いつエタってもおかしくないな。




