大神犬太郎の怪異譚
異変発生で始まるお話
でもすぐには進まない
「小さな社を見張ることになってから程なく霧が発生した。 それほど濃くはなくギリギリ社が見える。
山が近い地域なため霧が出るのは意外と珍しくない。
しかし、隣りにいる会長はかなりワクワクオーラを出している。
「ほら、霧よ霧。 あとは、怪しい人物が出てくるのを待つだけだ!」
興奮したような口調で、声を抑えて喋る会長。
「ああ、そうだな」
相槌を打ちそして息を潜める。
しかし、ついさっき監視を始めたが、もう家に帰りたい。
出来ればもう二度とこんなことはしたくない。
代わり映えのしない小さな社を見ているだけではおもしろみも何もないし、何より眠たくて辛い。
「おや、儂の術にかからん奴がおったとは」
と、突然後ろから声がした。
とっさに振り返ると和服の女の子が立っていた。小学生か中学生かそのぐらいの年に見える女の子だ。
「おい、会長」
会長に声を掛けるが返事はない。
「クッ、生徒会長お前は生徒会長の鏡だった」
「いやいや、まて、別に殺すようなことはしておぬ」
「ほら、生徒会長とやらを確認してみよ」
「そう言って後ろから」
「用心深いの。 儂が視界に入れっばいいのじゃ」
少女はそう言って生徒会長が居る方へ歩く。
「の?」
会長はその場に「だるまさんがころんだ」をしたように止まっていた。
「いや、どう見ても大丈夫と言い切れない状態なんだが」
「そうかの?」
会長の腕をとり脈を測る。
「大丈夫そうだな」
一先ず一安心、しかし、この女の子が一体何なのかわからないことには変わりない。
「ほらの、まあ、番なれば心配することも必然じゃの」
つがい?つがいって?
えーっと確かテレビでやってたな何か鳥がいて二匹で子の世話をしている
「いやいやいやいや、まだ、番って分けじゃ」
「まだってことは」
「あ、あー、はい、会長を好きです」
「なるほど交尾したい相手なら」
「間違ってはいないんだけどその言い方やめてぇ」
地味にボディブロウのようにダメージが入る。
「わがままなやつじゃのう」
「いや、わがままとか言われる筋合いはないはず」
正義は我にあり何て言わないけど。
その言い方はあんまりだ。
「で? お主はこんなところで何をしておるんじゃ?」
不思議そうに尋ねる。
「や、僕はただ会長……、この女の子がそちらの世界に深入りし過ぎないための見張りです」
「ふむ、すまん言い方を変えよう。 お主のようなモノがなぜ普通な存在として振る舞っておる?」
お主のようなモノか、おそらくは僕の人狼としての部分を指して言っているのだろう。
「なぜ、と聞かれても、僕にはそれが当たり前だからです」
今さらあちらの世界の住人だからあちらの世界に行けと言われても困る。
何より会長を見張らないといけなしな。
「質問が意地悪すぎたかの? まあ、深入りし過ぎないようにの」
そう言って少女は神社の方へ歩いて行く。
「ん? あれは人影だ」
……え?
「ほら、何を見てる私の綺麗な顔を見るのもわかるが小さな人影が出たよ」
まさか、『術』が解けた?
確かにさっきの少女が社に入っていく影が見える。
いや、霧のおかげで影しか見えない。
少なくとも会長の目には突然人影が出たように見えるはずである。
会長の前で不思議な事が起こってしまったな。
うん、これはあれだ。
「フラグ成立! あの人影を捕まえよう!」
目を輝かせた会長が色んな意味で眩しい。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
謎の少女登場、少女はどんな存在か?




