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第三章 四話 葬儀屋

エイプリルフールですがフールっている余裕はないので普通の投稿になります。

 話を聞く前にお客様にお茶を用意する。


「ありがとう」

「まあ客人はもてなさないとな」

「ふうん」

「で、姉に用事ってなんだ?」

「そうね、どこから話そうかしら」


 綾さんは艶っぽい仕草で髪を払い頬に手を当てる。


「まず、私が占い師と呼ばれたところまでは話したわよね?」

「ああ、占い師とは名乗ってないのに呼ばれてるという事は聞いた」

「そう、それでね、占い師と名乗ってないのに変だと思うでしょうけど、お客の一人にね妙に私に付きまとう人がいるのよ」

「ストーカーか?」


 別段不思議な話ではない。

 綾さんは美人だしスタイルもいい。

 男好みの体型だから言い寄る男性も少なくないだろう。


「そうかもしれないわね。

 でも、噂になるような人物でないのかその人のことは全く分からないの」


 出会ったばかりであろう不良たちのプライベートを暴露したこの人が分からない人物がいるとなると逆にその正体不明の人物が異常に思えてくる。

 いや、ストーカーをしている時点ですでに異常なんだが、異常な綾さんが不安そうに語るとすれば語られる人物もまた異常以上に異常だと言えるだろう。


「その人物を見たことはあるのか?」

「ないわ」

「じゃあ、なんで付きまとう人が居ると分かるんだ?」

「私の家の前にプレゼントが置いてあったり、夜に歩いていると後ろから人の気配がするけど誰もいなかったり、言えない帰ると家の電話に着信が百件以上入ってたりするからよ」

「うわあ、よく今まで我慢してたね」

「別に我慢はしてないけど?」

「どういうことだ?」

「だって昨日起きたことだもん」

「詰め込んでるなあ」


 どんだけ暇なんだよストーカー……。


「だから私が分からないことがあったらあなたの姉に聞けば一発で分かっちゃうから来たんだけど留守みたいね」

「仕事だからな」


 ふと疑問が浮かんだ。


「綾さんって占い師は仕事じゃないんですよね?」

「ええ、普段は情報屋よ」


 はい、ありがとうございます。

 占い師の姿をした情報屋とかまんまテンプレートじゃねえか。


「絶対につっこまないからな」

「あら、いきなり下ネタ?」

「違うわ!」

「そう? 残念」

「お前の頭が残念だ!」


 見た目が美人なだけによりいっそう残念感が半端ではない。


「まあ、そういうわけだから少し待たせてもらってもいいかしら?」

「ああ、かまわないよ」

「ありがとう、ああ、それといつもは何時くらいになったら帰ってくるのかしら?」

「ん? そうだな早いと昼頃には帰ってるし、帰ってこないこともある」

「つまりわからないのね」

「そうとも言う」


 頷く俺、若干呆れたような目で見られるのは気のせいだ。うん。



----------



 その後、落ち込んでいたのじゃロリにプリンを用意したり、晩御飯を三人で食べたりして夜になった頃である。


「ああん、そんな、強くしないで」

「ここからが本番だぞ?」

「そ、そんなぁ、あぁ!」

「そらそら」

「ああ、だめ逝っちゃう!」

「やり過ぎなのじゃ!」


 姉ちゃんを待っている間、三人でゲームをしていた。

 因みに強くしないでとはCPの強さのことである。


 まあ、何にしろ姉が返ってくるのが遅いためゲームで暇つぶしをしていたのだ。

 そして、家のチャイムが鳴る。


「あ、帰ってきたのじゃ」


 そう言ってトテトテとのじゃロリが玄関に向かっていった。


「そう、良かったわ、これでストーカーはなんとかなりそうね」


 綾さんもホッとしたようにのじゃロリの後をついて行った。

 俺ももちろん二人の後を追うゲームをポーズ画面にしてから。


「おかえりーな……のじゃ?」

「誰?」


 扉の前に立っていたのは見知らぬ男性だった。


「避けろ!」


 俺の声にのじゃロリは呆然とした感じだったが、綾さんは、はっとして身を壁に寄せる。

 俺は男に突撃し蹴り飛ばす。


「ガフゥ!」

「な、何なのじゃ!?」


 のじゃロリが叫ぶが、蹴飛ばされた男は地面に転がる。

 正直男が視界に入った時点で背中に氷を入れられたかのような感触があったのだ。

 何故、そんな感触を得たかというと玄関に立つ男に死臭を感じたからだ。

 男は少なくとも死に関わった可能性があるのだ。

 そんな人間が玄関に立っていたら蹴飛ばすだろう?


「どうしたの?」

「そいつは少なからず死体に縁のある人間だ碌なもんじゃない」

「それはひどい言いざまデスねぇ」


 むくりと起き上がる男を見てゾクリと寒気がした。


「いきなり人を蹴飛ばすとは、猛犬のような人デスねぇ」


 起き上がり服に着いた砂を払う黒づくねの人物はその顔に笑顔を貼り付けながら話す。

 独特のアクセントを語尾につける痩せぎすの男に向かって質問をぶつける。


「で、何のようだ?」

「私はただのしがない葬儀屋アンダーテイカーデスよぉ?」

「あのな、ただの葬儀屋が死臭を放つわけ無いだろ、それに質問に答えろ」


 死体にかなりの頻度で触れ合う人物以外はこれほど警戒しない。

 死臭が濃すぎるのだ。

 まるでいつも死体と共にあるように。


「それは、私が取り扱っている死体が特別だからデスよぉ」

「そんなことを聞いてるんじゃねえ質問に答えないんだったら不法侵入で警察を呼ぶぞ」


 むしろ現段階で呼んでもいいような気がする。


「分かりました。 私の要件はそこにいる九段綾さんに用があるのデスよぉ」

「私?」


 綾さんは緊張しているのか体を強張らせている。


「何、簡単なことデスよぉ。

 ちょっと棺に入って……ゲフゥ!」


 再び男を蹴飛ばす。


「大神家の客人に手を出そうとはいい根性してるなぁ、おい!」

「きょ、狂犬のような方デスねぇ、私も人のことを言えませんが人の話はちゃんと聞きましょうねぇ?」

「はあ?」

「私はですねぇ。 棺に入る人を探してるんデスよぉ」

「で、その人と綾さんとどういう関係があるんだ?」

「人探しにに於いては九段綾さんが有力なのは有名な話なのデスよぉ?」

「そうなのか?」


 綾さんの方を見る。

 綾さんは複雑そうな表情で肯定する。


「噂さえあればね」

「まあ、それはいい。

 しかし、よくここに綾さんが居るってわかったな」

「教えてもらったんですよぉ」

「誰に?」

「幽霊に」

「…………」

「ゴフゥ!」

「あんまりふざけたことを言うと蹴り飛ばすぞ」

「既に蹴った後じゃないデスか! 暴力的な方デスねぇ!」


 何故か蹴りたくなるんだよなこの葬儀屋。


「ちょっとあなた方も何か言って下さい!」

「ひっ!」


 のじゃロリが本格的に怖がってる。


「まあまあ、確かにこう手を上げては、いえ、足蹴にしては話にならないわ。」

「そ、そうデス穏便に行きましょう」


 綾さんの言葉に便乗する葬儀屋を見てため息をついて


「で、誰に教えてもらったんだ?」

「だから幽霊デスよぉ!」


 そう言って葬儀屋は身構える。

 まあ、さっきは蹴ったし当然か。


「本当か?」

「はい、本当デス」

「もしそうならなぜその幽霊とやらに頼んで棺に入るやつとやらを探せばいいだろうが」

「そうもいかないのですよ。

 幽霊に聞いても答えてくれるのはその幽霊が興味のあることだけですから」

「じゃあ、なんで綾さんを探せたんだ?」

「巨乳デスギャフゥ!」

「客人に色目使ってんじゃねえ!」

「ひ、酷い、デス」


 そう言って葬儀屋は気絶した。


「ちょっとやり過ぎじゃないかしら?」

「これは酷いのじゃ」

「いや、多分これでもやり過ぎでないと思うぞ。

 これほど死臭を纏った人がまともなわけないからな」

「でもこの死体はどうするのじゃ?」

「まだ死んでないわよ」

「家の中に死臭を充満させるのも嫌だし放置だ」


 臭くて住めなくなっちゃうよ。


「さすがにそれは」

「仕方ないだろう臭いんだから」

「臭い?」

「そういえばさっきから死臭がどうとか言っておったがいったい何なのじゃ?」

「いや、、そのまま死の臭いだが、臭わないか?」

「臭わないのじゃ」

「私も臭わないわね」

「まあ、人より鼻はいいからな」

「死の臭いとは、しかし、大雑把な説明過ぎて何なのかわからないのじゃ」

「まあ、俺もよくわからないからな。

 けど言えることは二つある。

 一つは、死臭の近くには常に死が存在する」

「……そのままね」

「説明できてないのじゃ。

 説明責任を果たすのじゃ」

「いや、そうとしか説明できないんだよ。

 ある時は死体、ある時は殺人といったふうに様々な死の臭いとしてのこるからな」

「そうなの?」

「ううむ、細かいことはよくわからんがさすがにこのままはかわいそうなのじゃ。

 そうじゃ、死臭を消せばいいのじゃ」

「お、何かいい『術』があるのか」

「ファフ〇ーズなのじゃ!」

「『術』じゃないのかよ!」


 ちなみに結局葬儀屋は放置することになった。

 消臭剤では消えなかったよ。死臭。

拙作をお読みくださりありがとうございます。


次回、葬儀屋と噂の主のお話


少し注釈

葬儀屋の臭さは一か月風呂に入らず着替えもしなかったら発生する匂い程度の臭さです。


本来はこの説明はしなくてもいいよう本文で表現すべきなのですが、助長すぎるのでカットしました。


4/15下記の部分が全話と被っていたので削除しました。

「綾よ」

「へ?」

「綾って呼んで」

「何故に」

「ほら、友人の弟に苗字で呼ばれると距離感を感じちゃうから」

「そ、そうですか」

「そうなの、だから綾って、呼・ん・で」

「……綾……さん」

「……まあ、今はそれでいいでしょう。

 さっきの質問の答えは最初に言った通り仕事ではないわ」


 くだ……綾さん強引だな。

 まあ、名前のことはさておき、自ら占い師と名乗っていないのなら職業としての占い師ではないよな。多分。


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