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第二章 閑話 のじゃロリリミのお布団事情

いつから布団を買うと思っていた?

なん、だと

はい、というわけでベッドを買いに行くようです。

時系列的には「生徒会室教頭飛び込み事件前」となります。

 土地神殺し未遂事件から、姉曰くアホのじゃ、俺曰くのじゃロリあるいはリミこと花楽里鳴知からくりみんちを家で預かることになって引き取った後、彼女の部屋を用意することになったのだ。

 幸い部屋は幾つか空きがあるためその中の一つに彼女を割り当てることにしたのだ。

 その時にとある重大な事実が発覚したのだった。


「寝床が無いって本当か?」

「本当なのじゃ」


 彼女は家具の類を一切持っていなかったのだ。

 組織の研究室で寝泊まりしていたためほとんど研究所のソファで寝ていたらしい。

 そのソファは組織の所有物なのでリミは持ち出すことができなかったらしい。


「はあ、それじゃあせっかくだしベッドでも買うか?」

「儂はそふぁがあれば十分なのじゃ」

「いや、我が家で寝る以上ベッドか布団で寝てもらうぞ」

「なんなのじゃそのこだわりは」

「いいか? 今のリミは大神家の客人だ。

 客人をそこらへんで寝かせるわけにはいかないんだ。

 そのためにもベッドか布団はこちらとして用意できる寝床を用意しなければならない。

 と言うわけで今日中に用意する。

 ちなみにどちらがいい?」

「お、おう、わかったのじゃ。

 そふぁで寝慣れているからそふぁかそれに近いベッドがいいのじゃ」

「分かった。 今日放課後に早速買いに行こうか」


 という風に和服幼女のと少し話をしてべっどを買いに行くことが急遽決定したわけである。



----------



 放課後、生徒会室に顔を出しそのことを告げる。


「大神君に押し付ける形になったし私も付いていくよ」


 と返してきたのはおっとり美人の岩手千秋こと生徒会長だ。


「おい、犬、逆だ」


 おっと、生徒会長こと岩手千秋だ。


「って、心を読むなよ」

「ふっ、犬の心を読むことなどたやすい」

「いや、だから読むなって、……いや、それに犬じゃないからな、せめて犬太郎けんたろうと呼べ」

「私も押し付けた側の人間だが今日は所要があってな残念だが、ついていけない」

「っく、無視スルー……だと……?!」


 この人のことを犬呼ばわりする切れ目の麗人が御剣刀子だ。

 ポニーテールが似合ういろいろと鋭い人物である。


「しかし、会長がついて来てくれるのはありがたいが、生徒会の仕事はいいのか?」

「うん、今日の仕事は寝瑠ねるちゃんが全部終わらせちゃったから」


 会長が言った寝瑠ねるちゃんと言うのは生徒会役員の一人で書記の役職である出雲寝瑠いづもねるのことである。

 名はていをなすという言葉があるがこの人ほど見事に体をなしている人はいないだろう。

 俺が見たときにはいつも寝ているのだ。

 どうやら俺だけでなく、御剣や会長も起きているところを見たことがないと言う。

 ある意味、怪異よりも謎の人物である。


「そうか」


寝瑠ねるの方を見て「ありがとうな」と一言声を掛けて、


「なら少し遠いが、家具量販店に行こうか」

「え?」


 会長が驚くのも無理はない。

 家具量販店が自転車で三時間ほど車で一時間ほど走ったところにある。

 普段なら自転車で行くところなのだが、今日はベッドを買いに行くということなので車で行くことになっている。

 会長は自転車で行くとでも思ったのだろう。

 「帰りどうするの?」的な空気が流れる。


「車で家具量販店に行くことになっているから俺の家まで来てくれ」

「そう、良かった。

 でも誰が運転するの?」

「堤下さんだ」

「わかったよ」


 会長は納得したように頷いた。

 堤下さんは姉の部下なのだが、まあ、細かいことは省くが姉に事情を説明すると貸してくれる事になった。

 貸すという言い方はどうかと思うんだけどな。

 もちろん会長も堤下さんの事は知っている。


 ピリリリリッと俺の携帯が鳴った。

 携帯を見るとメールが一件入っている。

 メールを開くと


『僕もついていく! byネル』


 という内容のメールが入っていた。



----------



「で? その娘は一体誰なんですか?」


 と聞かれたのは大神家の前でのことだ。

 セダンタイプの黒い車の前で腕を組んでいた堤下さんに尋ねられた。

 因みに俺の腕にはすやすやと寝息を立てる出雲寝瑠いづもねるが抱えられている。


「どうしても付いていきたいって言うから仕方なく連れてきたんだ」


 柔らかい物体を抱えながら自分の口角が上がるのを感じつつ堤下さんの質問に答えた。

 あの後、ほっていこうとしたのだが、メール件数が百件を超えた時点で折れた。

 びっくりなのはたった十分でその件数を送ってきたことである。

 もっとも内容はほとんど同じだったが、最後の一件だけ


『僕を! 連れて行くまで! 送るのを! やめない!』


 と送られてきたときには愕然とするしか無かった。

 いつも寝ているやつとは思えないアグレッシブなメールだった。

 さすが七不思議の一つに数えられるだけあってそのメールがどうやって送られたかは分からない。


「というわけなのでお願いします」

「はあ、別にいいのですが、座席数は、まあ一人がちみっこいので大丈夫でしょう」

「ちみっこいとはなんなのじゃ!」

「私は『誰』がちみっこいなど言ってませんが?

 どうやらちみっこいことに自信がおありのようですね」


 うおい、御剣より鋭いな堤下さん。


「あなたのおかげで私の仕事が増えたことなど一切気にしてませんので、ゆ・っ・く・り、車に乗ってくださいね?」

「う、す、すまないのじゃ」


 ててててっと車に駆け寄ってさっと乗り込んで


「早く早く」


 とあせったように手招きするちみっこもといのじゃロリ。


「では、その子は前の座席に岩手さんと犬太郎けんたろうさんは後ろの席へ」

「俺が前に乗った方がいいんじゃないか?」

「い・い・え、後ろに乗ってください」

「はい!」


 堤下さんの威圧に思わず肯定の返事をしてしまった。



----------



 車に乗っている間てっきりのじゃロリが真ん中に座るかと思いきや窓際を所望したのだ。

 何故か堤下さんも賛同してきて結局俺が真ん中に座り右側にのじゃロリ左に会長という構図になった。

 一応、人より若干ではあるが鼻がいいためダイレクトに会長の香りが鼻孔を直撃して、「あ、なんかいい匂い」とか言いそうになるのを必至で堪えていた。

 ちょいちょい腕に会長の腕が当たるし、これと言って話題もなかったので少々気まずい思いを懐きつつ。

 早く、着いて欲しいという思いとずっとこのままがいいという思いがせめぎ合っていた。

 ただ、少しだけではあるがのじゃロリが騒いでくれるおかげで緊張感はなかったのは救いか。


 家具量販店に着いた時には、既に何かを消耗したように感じた。

 しかし、むしろこれからが本番だと言わんばかりにのじゃロリが手を引っ張ってくる。


「何なのじゃ、この大きな建物は!」

「家具量販店だよ。 ここでリミが気に入ったベッドか布団を買って帰るんだ」

「儂の研究室より大きいのじゃ」

「じゃあさっさと行こうか」

「大神君、その前に寝瑠ちゃんはどうするの?」

「あ」


 出雲寝瑠は今も助手席で寝息をたてている。

 寝ている彼女を連れて行くのはどうかと思うが、このまま置いていくとここまで付いてきた意味がなくなってしまうのではないか?

 彼女にコンタクトを取るには俺が知っている方法はメールか夢の中で会うことである。

 今、寝るわけにもいかないのでひとまず彼女の携帯にメールを送る。


「『ここで待っていてくれ』っと」


 彼女の携帯がポケットで鳴った直後に俺の携帯に返信が届いた。


『おんぶ』



----------



 かつてこれほど恥ずかしい思いをしたことがあるだろうか? いや、無い。

 

 いや、まあ男としては女の子を背負うことに何ら抵抗があるわけではない。

 むしろうれしい感sy……ゴホン、女の子特有のいい香りが鼻を刺激するのだ。

 あれ? 会長の視線が痛い。


 ただし、周りの目を気にしないなんてことは無理で奇異の視線を受けていることをひしひしと感じていた。

 視線を集めることに不快感を示す堤下さんが俺に尋ねてきた。


「寝ているのに連れてくる必要はなかったのでは?」

「そうは言ってもな、会長が付いて来る事ができたのもこいつのおかげだしな」


そう言って俺は、出雲を背負い直す。


「それに寝ていると言ってもこいつは話を聞いているぞ?」

「報告で聞いていますが、さっきのメールがそうなのですか?」

「ああ、俺もよくは分からないが成績も体育や家庭科とかの実習を除けばとても優秀らしいしな」


 これぞ睡眠学習、いや違うんだが。


「なるほど」


 なんて世間話をしているとベッドコーナーにたどり着いた。

 ベッドコーナーにはいろいろとベッドが用意されていた。

 ……まあ、ベッドコーナーだから当たり前なんだが。

 ちなみにではあるがソファのコーナーも近くにありソファとベッドが兼用になっている物もあった。


「おお! これがこれがベッドか! 初めて見るのじゃ!」


 マジで!?


「お前、布団でしか寝てないのか?」

「いや、布団は見たことはあるが寝たことはないのじゃ」

「お前今までどこで寝てたんだよ」

「そふぁなのじゃ」

「なのじゃじゃねえ」

「のじゃ!」


 思わずつっこみを入れてしまう、チョップという形で


「痛いのじゃ」

「全く、こんなロリっ子をちゃんと寝かせないとは絶対あの野郎一回とっちめてやる」

「とっちめてやるとはまた古い言い方をしますね。 ちなみにあの野郎とはどんなかたでしょうか?」


 堤下さんの声で我に返る。


「いや、なんでもないのじゃ」


 思わずのじゃロリの語尾がうつってしまった。


「……まあいいでしょう」


 ふう、一応あんなのでも組織の長だから同じ組織の人間がいるのに迂闊な発言はするもんではないよな。

 とりわけ堤下さんは結構厳しめっぽい人だし。


「そ、それはともかくひとまずリミがベッドを選んでくれ。 もちろんソファはなしで」

「わかったのじゃ」

「あ、会長たちはどうする? このままリミがベッドを決めるまでここで待つ必要はないぞ?」

「う~ん、それじゃあちょっと悪いけど買いたい物があるから少しだけ離れるよ。 ごめんねリミちゃん」

「用事ならば仕方がない分かったのじゃ」

「では、私は岩手さんについていきます。 お決まりになるか移動する場合は連絡してください」

「分かった」「のじゃ」


 そうして出雲を背負って、のじゃロリとベッドを見て回ることになった。

 あと人の言葉の後ろに勝手に語尾をかぶせるなのじゃロリ。

拙作をご覧頂き恐悦至極でござる。

結局一話じゃまとめきれなかったよ……。

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