第二章 五話 霧と訪問者
さて、どこに向かっているのかわからない今日このごろ。
プロット無しは死ねる。
生徒会に出ている人は岩手千秋会長と副会長の私、それに会計と書記がいる。
庶務はとある事件以降、生徒会に姿を出さなくなったのだ。
会計は仕事が終わると即座に帰るため
今、生徒会には三人残っている。
私、御剣刀子と岩手千秋、そして眠っている人である。
眠っている人、名前は出雲寝瑠彼女は常に眠っている謎の存在だ。
眠っている彼女に仕事を任せる意味が無いように思えるが、下手な人より仕事が早い。
ほとんどが気が付いたらできているのである。
彼女自身怪異なのでは?
なんてことを大神と話したことがある。
しかし、調べようもないしこれと言った害がないので放置となっているのだ。
「今日もよく寝てるな」
私は呆れたように呟いた。
「そうだね、こんなにずっと寝てたら頭が痛くなりそうだよ」
そういう問題ではないと思うのだが、しかし、なんと返したものかと首をひねり。
「しかし、この人がわが学校の成績トップとは思えませんよね」
と毎回不思議に思っていることを口にするのだった。
「そうだよ、誰も問題を解いているところを見てないのにいつの間にか問題を解いちゃってるんだもの」
授業態度は最悪だが、成績がいいため誰も文句を言えない。
いや、文句を言っても意味がない。
本人はいつも寝ているんだから。
「入学当初からずっと寝ていたって話だよ。
入学式は保健室で寝てたみたいだし、寝瑠ちゃんが起きているところ誰も見たことないみたいだけどいつの間にか移動しているもの、私たちの学校の七不思議のひとつだよね」
「七不思議って全て知ると死ぬとか言われる類の話ではなかったですか?」
「さあ? 七つの不思議を集めるような好奇心豊富な人は死ぬってことじゃない?
好奇心猫をも殺すってね」
にゃおうと両手を顔の高さまで上げて詰めを立てる仕草をする岩手会長。
「なるほど、ところで会長は帰る準備は整いましたか?」
話の区切りもついたところで会長に尋ねる。
「うん、じゃあ、帰ろうか」
と生徒会室を出ようと引き戸を開いた時である。
「わっ!」
廊下が靄で覆われていた。
「え?!」
会長も素っ頓狂な声を上げる。
私は誰ともなく尋ねた。
「これは、まさか火事なのか!?」
「でも警報が鳴ってないよ!?」
そうだ、もし火事なのであれば火災報知器が作動する。
叔父曰く一昔前にはなかったらしいのだが、まあそんなことはどうでもいい。
「となると火災による煙じゃない?」
「そうだな煙じゃない、これは霧だ」
煙よりももっとあり得ないことが起きていることに気が付いた。
霧は学校の外に発生することはままあるが、学校内に霧が発生したことなど今まで一度もない。
それにこの霧は、
「まずい、会長下がって」
生徒会室に入ってこない。
「生徒会室には常に結界が貼ってあるのは知ってますよね?」
「うん、そう聞いてるけど? どうしたの?」
「この霧は、自然にできたものではありません。 あの時と同じ結界で弾ける霧です」
「じゃあ、またあの大きい赤ちゃんが出てくるの?」
「はい、あるいは」
会長の疑問に頷きつつ、しかし、この学校の校舎内にあの巨体が入るとは思えない。
なので肯定しつつ
「違う形になっている可能性も否定はできませんが」
と付け加えた。
脳裏に浮かんだあの大きな赤子が逃げるときに動く速度と動きが合致していなかったことである。
あれは幻術の類の何かであることは間違いないと思っていた。
流石にこの校舎内であの巨体の赤子を使うと幻術であることがバレバレになってしまうだろう。
しかし、まあ生徒会室内であれば問題は起きないはずだ。
結界がある以上はよくないものが近づくことはできない。
しかし、結界には身動きが取れないという欠点も存在する。
外の霧があの時と同じと推測するのならばこのままでは帰れないではないか。
「違う形?」
岩手会長は私が付け加えたことに反応を示した。
「はい、私の考えに間違いがなければあの赤子は見せかけのまやかしです。
おそらく本体は別にいると思います。
もちろん、本体が幻術で見かけを変えていることもあります」
私は、会長に説明しつつここからどう抜け出すか考える。
そして、携帯を取り出してみるが、圏外だった。
「会長の携帯も圏外になってますか?」
「うん? ちょっと待ってね」
会長は自分の鞄のサイドポケットから携帯を取り出す。
「……あ、圏外になってるね」
さて、どうしようか。
生徒会室に閉じ込められたのでどうしようもないお手上げ状態だ。
しかし、こういう怪異は本当に苦手だ。
せめて敵が目の前にいれば何とかしてやるのに。
と思ったことが神様に伝わったのか生徒会室の奥の窓が割れた。
生徒会室は二階にあるそのため野球部の飛んできた球以外でそう簡単に外から割れることはない。
しかし窓のガラスが内側に散らばっており何よりその散らばったガラスの上に一人の大女が立っていたのだ。
窓から入ってきたという考えは間違いではないだろう。
「誰だ!」
と私が声を張り上げるとそれに呼応したように女がこちらに向かって飛んでくる。
……いや、私と大女の間には机があったのでそれを飛び越えて来たと言ったほうが適切か。
その大女は私に向かって殴りかかってきたのだ。
私は仕方なく、刀を取り出す。
「うぇ?」
と声を出したのは飛び込んできた女のほうだ。
私は、大女の攻撃を避けて刀で相手を殴り飛ばす。
「グェ!」
という女から出たと思えない声を出して大女は壁に激突する。
「いったい何なんだ」
私は思わずそう言うのだった。
それも仕方ないのではないだろうか?
唐突に校内に霧が発生したかと思えば次は窓から大女が突入してきたのだ。
「ああ! その子、たぶん転校生だよ」
難なく襲撃者の正体を看破した生徒会長、いや、気付かない私が鈍感なのか。
会長に言われて私たちと同じ制服にその体格の大きさそして女性であることを考えてみれば、大賀照虎であることは簡単にわかることだった。
「いきなり何をするんですか?」
壁にぶつかり座り込んでいる大賀に近づいていく。
彼女の口角が上がるのを確認したときには遅かった。
彼女が起き上がるのを警戒していたのだが、彼女は手の力を使い一気に起き上がりタックルを仕掛けてきた。
想像していたものと違う行動に私の動きは少し硬直してしまった。
その硬直は完全な隙としてつけ入れられ見事なまでにきれいに決まったタックルは私を生徒会室の外まで運んでいったのだった。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
次回、虎と剣士の戦闘回




