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第二章 四話 霧の怪異

 教室まで案内して鞄を取りにもっどったところで案内も終わり大賀さんと尾崎さんが帰ろうとしたときである。


「いやあ、案内ご苦労やったな」

「まあ、この程度なら気は進まないがお安い御用だよ」

「気が進まんのにお安い御用か。 おかしな話やな」


 ケラケラと笑う尾崎さんその笑顔は何か引っかかりを感じるものだった。


「ああ、そうやった照虎テトラお礼しやな」

「ありがとう」

「どういたしまして」


 ……大賀さん、この子ちょっと心配になるほど口数が少ないな、元気が有り余っているようには見えない。

 緊張といってもそんな長時間持つものじゃないし。


「ほんじゃ帰ろか、また明日、さよおなら大神君」

「おお、じゃあな」

「さようなら」


 尾崎さんの独特なアクセントに引っかかりを感じつつもそれを表に出さず挨拶を返した。

 お別れの挨拶ともつかぬ会話をしているといつの間にか教室内・・・に霧が発生していた。

 最初は、火災の煙かと思いあせったが、しかし、それが、田舎であるこの町ではなじみの深い霧であることに安堵した。

 だが、すぐにこれが本来あってはいけないことだとういう結論に至るのに時間はほとんど費やさなかった。


「ん? 何やこのもやは?」


 尾崎さんにも見えるようだ。


「霧だと思う」

「霧?! けったいな、なんや田舎は学校の中にも霧が出るんか?」

「そんな訳がないだろう? こんなこと初めてだ」

「そうかいな、ってあれ照虎てとら? どこ行ったん?」


 尾崎さんが言うようにいつの間にか大賀さんがいなくなっていた。


「だ、大丈夫なのか?」

「あ~、あの状態のあの子の行動は良うわからんからな~」


 少し間延びした言い方をする尾崎さん。


「とりあえず、さっさと帰りたいし探そか」

「探すってこの霧の中をか?」

「なんや? 怖いんか?」


 言うに事欠いてこいつは


「わかったよ、探しますよ!」


 別に探さなくとも問題ないような気もするが、ちょっと心配な感じの雰囲気をまとっていたとはいえ高校生だ。

 迷子じゃあるまいし。

 それでもいつの間にか乗せられて探すことになってしまった。

 幸い匂いが残っている。

 匂いを辿り教室の外に出る。 そして迷わず左に進む。

 匂いは左に向かっているからだ。


「いったいどこへ向かうつもりなんだ?」


 そう言って追いかけるそして、すぐに違和感に気が付いた。


「あれ?」


 すぐに見えるべき階段がいつまでたっても現れない。

 というより教室が多くなっている?

 いや、御剣が言っていた霧の効果だろう。


「大神君さっきからおんなじ所をウロウロして何がしたいん?」


 そう声をかけてきたのは尾崎さんだ。

 教室の出入り口から尋ねてくる。

 本当に心配そうに聞いてくるからちょっとこちらとしてもダメージがある。


「いや、ただ大賀さんを追いかけようとしたらいつの間にか戻ってしまうだけで、別に好きでウロウロしているわけじゃない」

「そんなわけないやん意味わからん」


 そう言って教室から出てきた尾崎さんは俺が向かおうとしていた方へ歩き出す。


「ほら、普通に行けるやん」「意味わからん霧があるからってそんなふざけたことしたらあか、んわ」


 尾崎さんが歩いていくと途中から声が後ろから聞こえてきたので振り返ると尾崎さんが歩いてきた。


「はあ? 意味わからん、なんで戻ってくるんな」

「そうだな、意味が分からない」


 全く、誰だこのループ型の結界を張ったのは、普通の結界を解くより十倍は面倒臭いんだぞ。


「なんなんよ」


 そう言って、後ろ向きに走り出す尾崎さんこちらを見たまま走って行ったのだが霧があるためちゃんと見れているわけではないし結界が解けるわけでもない、案の定反対側から後ろ走りで尾崎さんが現れる。


「まじか~、このまま二人で閉じ込められるんかな~」


 尾崎さんは落ち込んだような話し方をするが、声色に落胆の様子はない。


「ずいぶんと冷静だな」

「それはこっちのセリフや、こんな意味わかれへんこと遭ったことないで」

「俺はある」

「まじでか! で、その時はどないしたん?」


 結構ぐいぐい来るな。

 ……まあ、命がかかってるかもしれないし当然か。

 しかし、ここで人狼のことを話していいか。

 すでに怪異に巻き込まれている以上は別に明かしてもいいのだが、何か頭のどこかに引っかかるものがある。

 すこし話を続けるか、あるいは御剣の方で何か動きがあるかもしれないし。


「いや、あの時の霧と今回の霧と違うものだ」


 あの時の霧というのはリミの『術』のことだ。

 今回の霧と全く同じものも経験しているが、土地神殺しに深く関ることだおいそれと話すわけにはいかない。


「え~、持ち上げから落とすって外道やわあ」


 今度はちゃんと落ち込んだ言い方をする。

 つかみどころがないな尾崎さん。

 さて、この霧があの時の正体不明の霧だったら、あるいは校舎の中にあの時の犯人と思しき人物がいるかもしれないな。

 しかし、閉じ込められている以上どうしたものかな?

 普通に霧の結界を解除するか。

 咆哮を使うより万倍手間が掛かるが、一般人に人狼のことがバレるよりはましか。


「ひとまずこの霧を晴らさないとな」

「え? この霧晴らせるん?」

「ああ、こういうことを専門に解決する仕事してるしな」

「それは心強いな~、とでも言うと思ったん? もしかしてうちが、こんな意味わからんことに巻き込まれたんあんたのせいちゃうん!?」

「それは否定出来ないかな?」

「はあ、あんたに案内してもらったんは失敗やったんか」

「けどお前が、関わっていないとも限らないからな?」

「はあ!? 意味わからんし、何でうちがこんな意味わからんことの原因とか言われなアカンの!?」

「ん? なんで自分が原因って言われたと思ったんだ? 俺は、ただ単に俺以外の要因に巻き込まれたかと聞いたつもりだったんだが」

「だ、だって、ほらあれや、うちを責めるような言い方するから」


 尾崎さんが慌てて言いつくろうさまを見て状況の面倒くささに嘆息するのだった。

拙作をご覧いただきありがとうございます。

次回、御剣刀子視点でお送りいたします。

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